ニデック 岸田光哉氏が社長就任 社外から迎えた経営者への交代と、集団指導体制への移行

更新:

時期 2024年2月
当時の社長 永守重信
論点 事業承継と経営体制
何をなぜ決めたか
概要

2024年2月14日に社長交代を公表し、4月1日付で副社長執行役員の岸田光哉氏を代表取締役社長執行役員(最高経営責任者)に据えた。新社長は指名委員会の審議を経て取締役会が決議している。

創業者の永守重信氏は代表権を残す取締役グローバルグループ代表へ移り、6月からは取締役会議長を兼ねた。社長だった小部博志氏は代表権のない取締役会長へ就任した。監査等委員でない取締役と執行役員の任期はいずれも1年である。

背景

継続的な成功が創業者である永守重信氏の能力と手腕に依存してきたことは、事業・経営成績・財政状態に悪影響を及ぼしうるガバナンスリスクとして掲げられていた。「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という成長を牽引する原動力を継ぐ新たなリーダーを輩出できない可能性が、その中身である。2020年度に人材開発委員会を設置してグループの重要ポストの後継者計画を進め、後継者候補準備率と継承準備度を指標に置いていた。

内容

岸田光哉氏は1983年にソニーへ入社し、ソニーモバイルコミュニケーションズ社長、ソニー常務を経て2022年1月にニデックへ入社した。常務執行役員から専務執行役員、副社長執行役員と2年で三段を上がっての就任である。対応策として掲げたのは、集団経営(集団指導)体制による持続可能な経営の推進、新社長のもとでの強固な経営基盤の構築と創業者依存体制の変革、そしてチーフオフィサー制の強化による経営陣の組織的連携だった。2030年度に売上高10兆円という目標は据え置かれた。

含意

2018年6月に吉本浩之氏、2020年4月に関潤氏、2022年4月に小部博志氏と社長が代わり、岸田光哉氏は6年で4人目にあたる。前の3人と違うのは、創業者が会長職から代表取締役グローバルグループ代表へ肩書を変え、取締役会議長として残った点である。2024年6月の株主総会での賛成率は岸田光哉氏98.71%、永守重信氏96.40%だった。

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筆者の見解
筆者の見解

カリスマの再現ではなく、仕組みで承継するという選択

この判断の核心は、半世紀にわたり創業者個人へ集中してきた意思決定を、いかに次の世代へ引き渡すかという設計にある。2018年から6年で社長が4人代わった事実は、一人の後継者に創業者の経営を再現させようとする試みが続けて行き詰まったことを示している。永守重信氏が最後に選んだのは、集団経営体制の推進とチーフオフィサー制の強化、すなわち傑出した個人ではなく複数の幹部が支え合う仕組みだった。創業者依存をリスクとして自ら掲げ、その解消を対応策として並べた点に、カリスマ経営者による承継としては珍しい自己相対化の姿勢がうかがえる。

もっとも、代表権を持つ創業者が取締役会議長として並走する体制は、後継社長の裁量をどこまで許すかという問いを抱えたままだった。その問いは、2025年に表面化した会計不正と、創業者が代表取締役および名誉会長を辞して一切の役職から離れるという、想定されていなかった経路をたどることになる。個人への集中を仕組みへ開こうとしたこの決断の評価は、岸田光哉体制がガバナンスの立て直しと成長の両立をどこまで果たせるかにかかっているだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
社長交代の経緯と対応

社長交代の経緯と対応

科目 概要 備考
交代の公表 2024年2月14日 「社長交代および代表取締役の異動等に関するお知らせ」。効力発生は同年4月1日付
選任の手続 指名委員会の審議を経て取締役会が決議 指名委員会は委員の過半数を独立社外取締役で構成し、取締役会の諮問に答申する
新社長の役職 代表取締役社長執行役員(最高経営責任者) 岸田光哉氏。2022年1月入社、常務・専務・副社長執行役員を経て2年で就任した
創業者の役職 代表取締役グローバルグループ代表 永守重信氏。代表権を残し、2024年6月からは取締役会議長を兼ねた
前任社長の役職 取締役会長 小部博志氏。2022年4月から社長執行役員(最高執行責任者)を務め、代表権を外れた
取締役の任期 1年 経営責任を明確にするため、監査等委員でない取締役と執行役員をいずれも任期1年とする
就任後最初の総会の賛成率 98.71% 2024年6月18日の第51期定時株主総会。永守重信氏は96.40%で可決
これまでの社長 吉本浩之氏・関潤氏・小部博志氏 2018年6月・2020年4月・2022年4月に就任。岸田光哉氏は6年で4人目にあたる

出所:ニデック 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【事業等のリスク】【役員の状況】、第51期定時株主総会招集通知、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2024年6月21日)

連結業績の推移

ニデック:連結業績の推移

(百万円) 売上高営業利益親会社の所有者に帰属する当期利益 備考
2019年3月期 1,475,436129,222109,960
2020年3月期 1,534,800108,55858,459
2021年3月期 1,618,064159,970121,945
2022年3月期 1,918,174170,374135,759
2023年3月期 2,230,02789,92336,982 第50期有報の訂正報告書(2024年5月24日提出)を反映した後の数値
2024年3月期 2,347,159161,856124,455 社長交代を公表した期。交代の効力発生は期末後の2024年4月1日
2025年3月期 2,607,813238,116164,365 第52期有報は監査意見不表明。会計不正の調査により訂正の対象となりうる
売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:ニデック 有価証券報告書 第46〜52期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)

連結従業員数の推移

ニデック:連結従業員数の推移

(人) 連結従業員数平均臨時雇用者数
2019年3月期 108,90628,885
2020年3月期 117,20627,963
2021年3月期 112,55123,635
2022年3月期 114,37127,977
2023年3月期 106,59221,410
2024年3月期 101,11217,815
2025年3月期 104,28519,464
連結従業員数
連結従業員数(人)平均臨時雇用者数(人)

出所:ニデック 有価証券報告書 第46〜52期(従業員の状況・主要な経営指標等の推移)

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同じ問いに直面した会社

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参考文献
出典・参考
  • ニデック 有価証券報告書「第51期(2024年3月期)【事業等のリスク】ガバナンスリスク」
  • ニデック 有価証券報告書「第51期(2024年3月期)【役員の状況】」
  • ニデック コーポレート・ガバナンスに関する報告書「指名委員会・報酬委員会の構成と取締役の任期」

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