TAKISAWAの子会社化(2023年・ニデックの決断)

更新:
論点 同意なき買収で旋盤を加えるか
ニデック:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
初のTOBによる完全子会社化と、買収を成長手段に据えた転換

何をなぜ決めたか:初のTOBによる完全子会社化と、買収を成長手段に据えた転換

概要

2023年11月20日、ニデックは金融商品取引法に定める公開買付けにより、金属工作機械メーカーTAKISAWA(旧滝澤鉄工所)の普通株式86.14%を14,306百万円で取得した。公開買付けの開始は2023年9月で、対話の結果TAKISAWAが同意したうえでの開始だった。2024年2月2日の株式併合によりTAKISAWAは完全子会社となった。

背景

ニデックは2021年8月に三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)を買収して工作機械事業に参入し、2022年2月にマシニングセンタのOKK(現ニデックオーケーケー)、2023年2月に横中ぐり盤のPAMAを買収してきた。旋盤の専門メーカーであるTAKISAWAまでの一連の買収で、製品ラインアップの拡充と海外市場の強化を実現した。

内容

買収の狙いは、両社の製品が相互補完関係にあることによる顧客ベースの統一と相互活用、販路拡大やクロスセリングといった売上シナジーと、共通部品調達の相乗り、購買ロット大型化による原価低減、海外調達や海外生産の推進といったコストシナジーである。取得原価は14,306百万円で、取得関連費用は有報に記載がない。

含意

永守重信氏は、日本企業の多くが避けてきた同意なき買収も選択肢から外さない。その理由として挙げるのは、日本の企業と市場へ良い刺激を及ぼしたいという考えである。TAKISAWAはニデックにとって初のTOBによる買収であり、2021年度に立ち上がった工作機械事業は2023年度に売上高約1,000億円へ育った。ただしこの企業結合は、財政状態および経営成績に重要な影響を与えていない。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

  • 永守重信:会長
  • 小部博志:社長執行役員
  • 山田文:社外取締役(監査等委員)
  • 酒井貴子:社外取締役
  • 佐藤慎一:社外取締役
  • 小松弥生:社外取締役
  • 豊島ひろ江:社外取締役(監査等委員)
  • 村上和也:取締役(監査等委員・常勤)
  • 落合裕之:取締役(監査等委員・常勤)
  • 渡邊純子:社外取締役(監査等委員)
考察:同意を前提にしない方針と、同意を得てからの実行
考察

考察:同意を前提にしない方針と、同意を得てからの実行

同意なき買収もいとわないと掲げながら、実際の公開買付けは対話を経て同意を得たうえで始まっている。この案件で起きたのは敵対か協調かの二択ではなく、同意を前提にしない姿勢を外に示したうえで同意を得るという、順序の入れ替えだったとみえる。

もっとも、開示から読み取れる範囲はここで止まる。TAKISAWA単独ののれんも取得関連費用も有報に記載がなく、この企業結合は経営成績に重要な影響を与えていない。取得原価143億円は連結売上高2兆円を超える会社にとって小さく、数字の側からこの買収の当否を測る材料は乏しい。だが、ニデックにとっての意味は金額ではなかったのだろう。旋盤を加えた効果がどれだけかは開示の外にあるが、手続きの前例としての価値は、決算の数字には現れない種類のものだと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

数字で見る

図と表

ニデック:機械事業セグメントの推移

外部顧客に対する売上高(百万円)セグメント損益(百万円)
ニデック:機械事業セグメントの推移
(百万円) 外部顧客に対する売上高セグメント損益 備考
2023年3月期 161,1858,969 第51期有報の前期比較列。区分変更後に組み替えた数値
2024年3月期 204,38828,353 2023年11月にTAKISAWAを取得。損益は第51期有報では29,296
2025年3月期 213,38617,828 工作機械関連各社の生産体制集約等に伴う一時的な費用で減益
出所:ニデック 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)・第52期(2025年3月期)【セグメント情報】
出所:ニデック 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)・第52期(2025年3月期)【セグメント情報】

ニデック:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
ニデック:のれんと無形資産の推移
(百万円) のれん無形資産資産合計 備考
2019年3月期 250,940143,5521,884,008
2020年3月期 310,487191,6532,122,493
2021年3月期 319,926195,6012,256,024
2022年3月期 339,904214,4982,678,483
2023年3月期 362,388223,4272,862,749
2024年3月期 394,540250,3073,159,709 暫定確定でのれんが1,603減った後の額。第51期有報では396,143
2025年3月期 407,067280,2283,315,293
出所:ニデック 有価証券報告書 第47〜52期(連結財政状態計算書)
出所:ニデック 有価証券報告書 第47〜52期(連結財政状態計算書)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 ㈱TAKISAWA 数値制御旋盤、マシニングセンタ及び普通旋盤等の工作機械の製造・販売等
取得の法的形式 公開買付けによる普通株式の取得 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に定める公開買付け
企業結合日 2023年11月20日 公開買付けの開始は2023年9月(ニデック 統合報告書2023)
取得した議決権比率 86.14% 企業結合日に公開買付けで取得した普通株式の比率
取得原価 14,306百万円 普通株式86.14%の取得価額。取得関連費用の個別開示はない
完全子会社化 2024年2月2日 株式併合による。追加取得額の開示はない
経営成績への影響 重要な影響なし 第51期有報の記載。通期換算した影響額の開示はない
取得原価の配分 第52期に確定 公正価値評価は第52期第2四半期に完了。修正額は他社分と合算で開示
出所:ニデック 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【企業結合】・第52期(2025年3月期)【企業結合及び支配の喪失】
出所:ニデック 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【企業結合】・第52期(2025年3月期)【企業結合及び支配の喪失】
当時の取締役 10名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

  • 永守重信:会長
  • 小部博志:社長執行役員
  • 山田文:社外取締役(監査等委員)
  • 酒井貴子:社外取締役
  • 佐藤慎一:社外取締役
  • 小松弥生:社外取締役
  • 豊島ひろ江:社外取締役(監査等委員)
  • 村上和也:取締役(監査等委員・常勤)
  • 落合裕之:取締役(監査等委員・常勤)
  • 渡邊純子:社外取締役(監査等委員)
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

免責事項およびポリシー