丸紅指名委員会等設置会社へ移行:監査役会設置会社からの転換と、社外10名の取締役会・法定3委員会の新設

更新:

時期 2026年1月
当時の社長 大本晶之
論点 機関設計と監督機能
概要

2026年1月23日、取締役会は株主総会での承認を条件として、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行することを決議した。同年6月19日の第102回定時株主総会で定款一部変更が承認され、同日付で移行している。監査役会と監査役は廃止され、指名・監査・報酬の法定3委員会が新たに置かれた。

移行の目的は、ステークホルダーの視点から見てガバナンスの客観性と透明性をより高めることに置かれた。移行後の取締役は15名で、うち10名が社外取締役、執行役は3名である。

背景

丸紅はコーポレート・ガバナンスを企業価値向上を支える基盤と位置づけ、体制を段階的に強化してきた。2022年度には取締役会構成メンバーの過半を社外取締役が占める体制とし、2025年度には執行への新たな権限移譲を進めている。指名委員会とガバナンス・報酬委員会も、社外役員が委員の過半を占め社外取締役が委員長を務める形で任意に運用されてきた。

2025年度の取締役会ではガバナンス強化の議論をオープンに行い、会長・社長・社外役員によるフリーディスカッションで取締役会の在り方が論じられた。

内容

指名委員会は取締役候補者の決定に加え、次期社長選任案と後継者計画を審議する。監査委員会は取締役及び執行役の職務執行を監査し、報酬委員会は取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定する。3委員会はいずれも独立社外取締役が委員の過半を占め、委員長も独立社外取締役から選定された。

監査役室に代わって監査委員会室が置かれ、その専任人員に対して執行役は指揮命令権を持たない。取締役会の議長は、執行と監督をより明確に分離する趣旨で、執行役を兼ねない取締役会長が務める。

含意

任意の委員会は取締役会へ答申する諮問機関にとどまるが、法定の指名委員会は取締役候補者そのものを決定し、報酬委員会は取締役と執行役の個人別報酬を決定する。社長を含む経営陣のパフォーマンスに対する規律の向上が、この形を選んだ理由として挙げられている。

株主総会では取締役15名選任の議案が95.27〜98.61%の賛成で可決された。丸紅初の外国籍取締役としてウリケ・シェーデ氏が選任され、取締役会は男性10名・女性5名の構成となっている。

筆者の見解

答申から決定へ、移した重心

この移行で変わったのは監督の強さそのものではなく、決定権の所在である。取締役会の過半を社外が占める体制は2022年度から続き、指名とガバナンス・報酬の委員会も社外が過半を占め社外取締役が委員長を務める形で運用されてきた。実質はすでに備わっていたと言ってよい。異なるのは、任意の委員会が取締役会へ答申する諮問機関にとどまるのに対し、法定の指名委員会は取締役候補者そのものを決め、報酬委員会は取締役と執行役の個人別報酬を決めることだ。答申が決定に変わったことで、社長を含む経営陣の進退と処遇は社外取締役の手で確定する仕組みに入ったとみられる。

もっとも、器を変えれば監督が働くわけではない。執行役は3名にとどまり、業務執行の実務は従来どおり執行役員制が担う。2025年度に進めた執行への権限移譲の延長で、取締役会は個別案件の決裁から距離を置き、モニタリング・ボードへ寄っていく構えだが、何をどこまで監督するかは移行後の運用に委ねられている。GC2027が掲げる時価総額10兆円という外部の物差しと、社外10名を擁する取締役会がどう噛み合うのか。丸紅が「丸紅らしく世界最善のガバナンス」と呼ぶものの中身は、これから積み上がる議事のなかで測られていくのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
取締役会決議 2026年1月23日 株主総会での承認を条件に、指名委員会等設置会社へ移行することを決議した
移行の目的 ガバナンスの客観性と透明性の向上 ステークホルダーの視点から見て、より高めることを目的に置いた
移行の時期 2026年6月19日 第102回定時株主総会で定款一部変更が承認され、同日付で移行
廃止した機関 監査役会・監査役 監査役4名(うち社外3名)。監査役室に代えて監査委員会室を設置した
取締役会の構成 15名(社内5名・社外10名) 移行前は11名(うち社外7名)。男性10名・女性5名・外国籍1名
取締役会の議長 執行役を兼ねない取締役会長 執行と監督をより明確に分離する趣旨による
指名委員会 社外3名・社内1名 委員長は石塚茂樹氏。取締役候補者の決定、次期社長選任案と後継者計画を審議
監査委員会 社外3名・社内1名 委員長は小田原加奈氏。専任人員を置く監査委員会室が職務を補助する
報酬委員会 社外3名・社内2名 委員長は安藤久佳氏。取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定する
執行役 3名 執行役に加えて執行役員制を採用し、適切な範囲内での権限委譲を行う
外国籍の取締役 ウリケ・シェーデ氏 丸紅初の外国籍取締役。日本企業の企業戦略に関する専門性を評価した
取締役選任の議決 賛成率95.27〜98.61% 第2号議案「取締役15名選任の件」。15名全員が可決された

出所:丸紅「指名委員会等設置会社への移行に関するお知らせ」(2026年1月23日)・コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月19日更新)・有価証券報告書 第102期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】

丸紅:取締役会の構成の推移

(名) 取締役うち社外取締役監査役 備考
2021年3月期 1365
2022年3月期 1065
2023年3月期 1065 この年度に取締役会構成メンバーの過半を社外取締役が占める体制とした
2024年3月期 1065
2025年3月期 1065
2026年3月期 1174 2026年1月23日に指名委員会等設置会社への移行を決議
2027年3月期 1510 2026年6月19日の移行後。監査役会・監査役は廃止し監査委員会を設置
2028年3月期
2029年3月期
2030年3月期
2031年3月期
取締役の人数と社外・社内の内訳
うち社外取締役(名)社内取締役(名)

出所:丸紅 有価証券報告書 第97〜102期(【コーポレート・ガバナンスの状況等】。各報告書提出日現在の人数) / 丸紅 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月19日更新)

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出典・参考

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