この交代は、世代を若返らせた人事というより、会社の稼ぎがどこにあるかを役職の形でなぞった決定だと思われる。2025年12月期のたばこ事業の売上収益3,305,407百万円は連結の95.3%にあたり、医薬事業を売却したあとのJTは事実上たばこ一本の会社である。そのたばこの利益の大半は海外で生まれ、筒井岳彦氏は社長に就任する直前の6年をJT International S.A. で過ごした。前任の寺畠正道氏も同じ経路を通っている。社長の椅子は本社の企画部門からまっすぐ渡るのではなく、ジュネーブを一度くぐった者へ渡る人事が二代続いた。
もっとも、この会社の社長人事は取締役会だけで完結しない。JT法第7条により、取締役の選任決議は財務大臣の認可を受けなければ効力を生じない。総会での賛成率が99%に達したことは市場の信任を示すが、その前段に置かれた認可の過程は外からは見えず、会社は交代の理由そのものを説明していない。読者に残されるのは、社長が候補者案を書き、社外取締役が過半を占める委員会が審議し、取締役会が決めるという手続きの記述だけである。新体制の評価は、経営計画2026が掲げたRRPへの約8,000億円が何を生むかで決まるのだろう。