東京ガス笹山晋一氏が社長就任:社外が過半を占める指名委員会の審議を経た、5年ぶりの代表執行役社長の交代

更新:

時期 2023年4月
当時の社長 内田高史
論点 社長の選定と、執行と監督の分離
概要

2023年4月1日、笹山晋一氏が代表執行役社長CEOに就任した。前任の内田高史氏は2018年4月に社長となり、2021年6月の指名委員会等設置会社への移行後は代表執行役社長、2022年4月からはCEOを兼ねて5年にわたり経営を率いている。交代後も取締役にとどまり、同年6月29日開催の取締役会で取締役会長に選定された。

交代の理由は、有価証券報告書にもコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記されていない。

背景

2021年6月29日開催の第221回定時株主総会での承認により、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行していた。創業以来の大変革を行うにあたり、「経営からの改革」が不可欠との認識の下での選択である。

移行前は、社外取締役2名・社外監査役1名と会長・社長で構成する諮問委員会が、取締役会の諮問に基づき役員候補者の選定を答申していた。移行後は会社法上の指名委員会が、取締役の選任・解任に関する株主総会の議案内容と、執行役の選任・解任等に関する取締役会の議案内容の決定を担う。社外取締役は4名から6名へ増え、9名の取締役会の3分の2を占めるようになった。

内容

社長候補者を審議したのは指名委員会である。委員は取締役の中から取締役会の決議によって選定され、過半数が社外取締役、委員長も社外取締役が務める。2022年度は斎藤一志氏を委員長として9回開催され、新任社外取締役を含む取締役候補者の選任とあわせて、代表執行役社長候補者の選任が議題となった。

笹山晋一氏は1986年4月の入社で、2016年4月に執行役員総合企画部長、2018年4月に常務執行役員デジタルイノベーション本部長、2020年4月に専務執行役員エネルギー需給本部長、同年6月に取締役、2022年4月に代表執行役副社長CSOを経ての就任である。

含意

指名委員会等設置会社では、執行役を兼ねる取締役は代表執行役社長1名のみとされ、執行と監督が分けられている。業務執行の決定権限は大幅に執行役社長へ委任され、取締役会は執行役からの報告に基づくモニタリングに注力する。執行役社長へ権限が集まる体制であるからこそ、その人選は社外が過半を占める委員会に委ねられている。

指名委員会は交代の翌年度以降も代表執行役社長候補者の選定を継続して審議しており、2023年度から2025年度まではいずれも6回開かれている。

筆者の見解

誰が社長を選ぶのかという設計

この交代で目を引くのは、誰が社長になったかよりも、誰が社長を選ぶ側に座っていたかである。指名委員会等設置会社へ移った東京ガスでは、執行役の選任・解任に関する取締役会の議案内容を決めるのは、過半数を社外取締役が占め、社外取締役が委員長を務める指名委員会だ。社長の人選は社内の序列や前任者の意向が働きやすい領域だが、その入口が制度として社外側へ開かれている。2022年度の開催回数が9回と、翌年度以降の6回を上回っているのは、社長候補者の選任が議題に上がった年であったことと無縁ではないだろう。

もっとも、社外が選ぶ仕組みがあることと、その選択の理由が外から見えることは別である。内田高史氏がなぜ5年で退き、笹山晋一氏がなぜ選ばれたのかは、会社の公表資料からは読み取れない。残っているのは、指名委員が多様な視点から建設的な議論を重ねた、という一文だけである。仕組みを構築した次に問われるのは、その仕組みが何を選んだのかを語る言葉のほうだとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
社長の交代 2023年4月1日 内田高史氏が代表執行役社長CEOを退き、笹山晋一氏が就任した
交代の理由 公表資料に記載なし 有価証券報告書とコーポレート・ガバナンスに関する報告書のいずれにもない
前任の在任 2018年4月〜2023年3月 内田高史氏。2021年6月から代表執行役社長、2022年4月からCEOを兼ねた
前任の処遇 2023年6月29日に取締役会長 交代後も取締役にとどまり、指名委員と報酬委員を務めている
新任の経歴 1986年4月入社・2023年4月に就任 笹山晋一氏。2016年執行役員、2020年6月取締役、2022年4月代表執行役副社長CSO
社長候補者の選定 指名委員会 執行役の選任・解任等に関する取締役会の議案内容を決定する法定の委員会
指名委員会の構成 過半数が社外取締役 委員長も社外取締役が務める。2022年度は斎藤一志氏が委員長であった
2022年度の審議 指名委員会を9回開催 新任社外取締役を含む取締役候補者の選任と、代表執行役社長候補者の選任
取締役会の構成 社外取締役6名を含む9名 執行役を兼ねる取締役は代表執行役社長1名のみとし、執行と監督を分離する
機関設計 2021年6月に指名委員会等設置会社へ移行 第221回定時株主総会の承認による。「経営からの改革」が不可欠との認識の下

出所:東京ガス 有価証券報告書 第223期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第224期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】

東京ガス:取締役会の構成と指名委員会の開催

(人) 取締役社外取締役指名委員会の開催回数 備考
2019年3月期 94 監査役会設置会社。役員候補者の選定は諮問委員会が取締役会へ答申していた
2020年3月期 94
2021年3月期 94
2022年3月期 96 2021年6月に指名委員会等設置会社へ移行。開催回数は有報に記載がない
2023年3月期 969 代表執行役社長候補者の選任を審議した年度。委員長は斎藤一志氏
2024年3月期 966 2023年4月1日に笹山晋一氏が代表執行役社長CEOへ就任した期
2025年3月期 966
2026年3月期 966
2027年3月期 第227期は未到来
2028年3月期
2029年3月期
取締役会の構成
社内取締役(人)社外取締役(人)

出所:東京ガス 有価証券報告書 第219〜226期(コーポレート・ガバナンスの概要)

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出典・参考
  • 東京ガス 有価証券報告書「第221期(2021年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 東京ガス 有価証券報告書「第222期(2022年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 東京ガス 有価証券報告書「第223期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 東京ガス 有価証券報告書「第223期(2023年3月期)【役員の状況】」
  • 東京ガス 有価証券報告書「第224期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」

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