東京ガスの直近の業績・経営課題と展望

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東京ガスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高26,368億円YoY▲1%
2025/3売上総利益4,062億円YoY▲13.9%
2025/3販売費及び一般管理費2,731億円YoY+7.3%
2025/3営業利益1,331億円YoY▲38.7%
2025/3経常利益1,136億円YoY▲49%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益742億円YoY▲55.2%
2025/3自己資本比率44.8%YoY+1.3pt
2025/3有利子負債合計5,889億円前年比▲50,507億円
2025/3現金同等物期末残高2,443億円YoY▲32.9%
経営トップ笹山晋一代表執行役社長
2025/3従業員数15,572前年比+68人
2025/3平均給与765万円前年比+29万円
歴史的背景1885年、官営瓦斯局払い下げで渋沢栄一らが東京瓦斯会社を設立、1969年のアラスカ産日本初LNG輸入と1988年完遂の天然ガス転換で原料を石炭から天然ガスへ切り替えた。1944年の19社合併で首都圏全域へ供給エリアを拡大、140年で原料を石炭・石油系・LNGと二度切り替えてきた
経営課題FY24売上高2兆6368億円・経常利益1136億円・純利益742億円。LNG価格下落でFY22経常利益4088億円から2期で約4分の1強まで縮み、原料費調整制度の下でLNG価格と利益が反比例する収益構造が剝き出しになった。ロッククリフ買収後の海外セグメントROAは2%弱で、会社自身が認める2桁台水準に届かない
経営方針笹山晋一社長は「これからは『量』に依存しないビジネスモデルを展開していく必要がある」(日経エネルギーNext 2023/07/24)と表明。中計「Compass Transformation 23-25」でROA4%・ROE8%、次期中計では2030年頃ROE10%を目指す
主な投資2023年12月、米テキサス州・ルイジアナ州のシェールガス開発・生産会社ロッククリフ・エナジーを約27億ドル(約4050億円)で取得、東京ガス史上最大の投資となった。北米でのガス生産量は4倍、鉱区面積は2倍に拡大、2025年4月にはシェブロンとシェールガス共同開発契約も締結した

首都圏ガス独占供給者から北米上流統合へ、量に依存しない事業構造への作り直し

1885年に渋沢栄一らが官営瓦斯局の払い下げを受け石炭ガスで創業した東京瓦斯は、1944年の19社合併で首都圏全域へ供給圏を広げ、1969年のアラスカ産日本初LNG輸入と1988年完遂の天然ガス転換で原料を石炭から天然ガスへ切り替えた。1998年扇島・2016年日立とLNG基地を積み増し関東1都6県の独占的供給体制を整えたが、2016年4月の電力小売・2017年4月のガス小売自由化で、家庭用電力市場には自社で参入する一方、家庭向けガス販売量は他社の参入により流出する競争にさらされた。LNG価格上昇期は売上が膨らむ反面、原料費調整制度のタイムラグで利益率は逆に圧縮される収益構造が、自由化後の競争で顕在化した。

2023年6月、笹山晋一氏が代表執行役社長に就任し、「これからは『量』に依存しないビジネスモデルを展開していく必要がある」と国内ガス販売量の構造的減少を前提に置いた。同年2月策定の中期経営計画「Compass Transformation 23-25」ではROA4%・ROE8%を掲げ、次期中計では2030年頃ROE10%を目指すとしている。FY24は売上高2兆6368億円・経常利益1136億円・純利益742億円で、ウクライナ危機下のFY22経常利益4088億円から2期で約4分の1強まで利益が縮んだ。

2022年4月にガス導管事業を自社ネットワークへ分社化しホールディングス型へ移行、規制事業と競争事業を線引きして海外投資の自由度を高めた。2023年12月には米テキサス州・ルイジアナ州のシェールガス開発・生産会社ロッククリフ・エナジーを約27億ドル(約4050億円)で取得し、北米でのガス生産量を4倍、鉱区面積を2倍に拡大した。同社史上最大の投資である。2025年4月にはシェブロンとシェールガス共同開発契約を結び、自社で掘った天然ガスを自社のLNG基地経由で売る垂直統合の範囲を広げた。一方で海外セグメントの営業利益は189億円・資産1兆1954億円とROAは2%弱にとどまり、会社自身が認める2桁台水準には届かない。

東京ガスの140年は、原料を石炭から石油系、さらにLNGへ二度切り替えてきた歴史であり、笹山体制のロッククリフ買収はその第三章にあたる。ガス供給会社から自社で天然ガスを掘って売る業態への転換である。原料転換期の重い投資の回収には数年単位を要し、海外ROA2%弱という現状と市況に左右される収益構造を2桁台へ引き上げる時間軸が、次期中計のROE10%目標の成否を決める。140年続いた首都圏ガス独占供給者が、川上権益と国内ソリューションを組み合わせた業態へ転換できるかどうかが、笹山体制の中心テーマである。

東京ガスの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円18,847−17.8%15,871−15.8%17,773+12.0%19,623+10.4%19,252−1.9%17,651−8.3%21,549+22.1%32,896+52.7%26,624−19.1%26,368−1.0%
エネルギー・ソリューション億円30,15823,88023,085
ネットワーク億円953975971
海外億円3013193383883684248031,4221,1221,806
都市ビジネス億円364648507
売上原価億円12,39010,51912,04014,07313,44212,12617,66425,96521,90822,306
売上総利益億円6,4565,3525,7345,5505,8115,5253,8856,9324,7164,062
販管費億円4,5364,7684,5714,6134,7964,7482,6092,7172,5452,731
営業利益YoY億円1,920+11.8%584−69.6%1,163+99.3%937−19.4%1,014+8.2%777−23.4%1,275+64.2%4,215+230.5%2,171−48.5%1,331−38.7%
エネルギー・ソリューション億円3,6261,9981,207
ネットワーク億円60-40-31
海外億円208521318634255730263189
都市ビジネス億円144222234
経常利益YoY億円1,888+12.3%557−70.5%1,115+100.3%894−19.9%1,026+14.8%705−31.3%1,365+93.6%4,088+199.6%2,228−45.5%1,136−49.0%
当期純利益YoY億円1,119+16.8%531−52.5%750+41.1%846+12.8%433−48.8%495+14.3%957+93.3%2,809+193.5%1,655−41.1%742−55.2%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%48.949.448.747.745.242.139.343.543.444.8
有利子負債比率%16.915.115.716.517.217.018.017.116.415.3
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円3,5472,3872,5971,4133,0632,5561,4524,8703,1633,631
投資CF億円-2,364-2,049-2,472-2,035-2,708-2,959-2,247-2,035-3,620-2,635
財務CF億円-754-709-167276232520905-224-583-2,560
従業員
連結従業員数16,99816,82317,13816,70816,59116,85816,69715,96315,50415,572
単体従業員数7,9738,2197,8627,3437,2156,8825,9583,0603,1903,276
平均年収(単体)万円649641636657660667696718735765

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY26東京ガスオーストラリア社解散決議に伴う為替換算調整勘定取崩益と不動産等固定資産売却益を計上、一部国内再エネ事業で減損発生。EPS成長連動で1株配当100円目標、自己株式取得を自己資本コントロール手段として明示。

決算説明会

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/ktsn/260130presen.pdf
FY25不動産売却益225億円・「パークハイアット東京」リニューアル休館による減益等を整理。政策保有株売却を加速(FY24実績10銘柄56億円)、基本還元400億円+追加自己株式取得800億円・期末10円増配で年間80円配当。FY25上期中に1,200億円上限の自己株式取得を決定。

決算説明会

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/ktsn/250428presen.pdf
FY24期末配当5円増額・年間70円/株配当に増配。自己株式取得400億円(1,700万株上限)を実施。総還元性向の目安を5割→4割へ調整、安定配当維持と緩やかな増配方針を継続。

決算説明会

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/ktsn/240425presen.pdf
FY23「2020-2022年度 中期経営計画」の振り返り。減損損失40億円・投資有価証券評価損24億円・長期貸付金評価損21億円を特別損失として計上。「Compass2030」次期中計策定への接続を提示。

決算説明会

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/ktsn/230426presen.pdf
FY22笹山社長就任初年度。総還元性向(配当+自己株式取得)目標を各年度5割程度に明示。減損37億円・投資有価証券評価損24億円を計上。安定配当維持と中長期利益連動の増配方針を提示。

決算説明会

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/ktsn/220427presen.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26「Compass2030」達成に向けた次期中期経営計画策定の準備期。マテリアリティの進化と未来志向の中長期成長ストーリーを統合的に提示。エネルギーを超えた価値創造へ事業領域拡張を表明。

統合報告書

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/anual/25japanese.pdf
FY25「Compass2030」と「Compass Transformation 23-25」進捗を提示。不動産(ESG型開発等)への投資拡大・カーボンニュートラルトランジション推進・経営ビジョン体系の整理を実施。

統合報告書

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/anual/24japanese.pdf
FY24「Compass Transformation 23-25」(新中期経営計画)を発表し「Compass2030」と接続。バリューチェーン全体の変革と非エネルギー領域への成長戦略を体系化。

統合報告書

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/anual/23japanese.pdf
FY23笹山社長就任初年度の発行。経営ビジョン「Compass2030」とCompass Action(中期経営計画)を中軸に置き、CO2ネット・ゼロへの挑戦を統合報告書の特集とする。

統合報告書

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/anual/22japanese.pdf
FY22経営ビジョン「Compass2030」を発表(前社長期)。LNGバリューチェーン変革・電力事業拡大・地域開発(不動産)を3本柱とする中長期戦略を整理、TCFD開示も拡充。

統合報告書

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/anual/21japanese.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
東京ガス公式サイト 沿革
決算説明会 FY23-2Q
決算説明会 FY23
決算説明会 FY24
日経エネルギーNext 2023/07/24
ロイター 2025/12/15
日経エネルギーNext
ロイター