任天堂岩田聡氏の急逝と君島達己氏の登板:社長不在の2か月を代表取締役2名で凌ぎ、海外販売畑へ託した承継
- 概要
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2015年7月、任天堂が代表取締役社長の岩田聡氏を在職のまま失った。代表取締役の異動に係る臨時報告書を7月13日に提出し、社長の座は2か月にわたって空いた。その間に会社を代表したのは、2002年5月から代表取締役を務めてきた竹田玄洋氏と宮本茂氏の2名である。9月、常務取締役 経営統括本部長の君島達己氏が取締役社長・代表取締役に就いた。
- 背景
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岩田聡氏が社長に就いた2002年からの13年は、山と谷の両方を含む。ニンテンドーDSとWiiで2009年3月期に売上高1兆8,386億円を記録したのち、後継機の不振で2012年3月期に営業損失373億円、2014年3月期に営業損失464億円を出した。
2015年3月期はようやく営業利益247億円まで戻した期で、3月にはディー・エヌ・エーと業務・資本提携を結び、自社の知的財産をスマートデバイスへ出す道を開いたばかりだった。
中継ぎを立てられる会社
社長を突然失った会社が2か月の空位に耐えられたのは、代表取締役が3名いたからである。竹田玄洋氏と宮本茂氏は2002年5月から13年にわたり代表権を持ち続けており、岩田聡氏が社長に就いたその日から会社を代表する権限は3人に分けて置かれていた。開発の2人に代表権を持たせる布陣は、創業家が去ったあとの任天堂が選んだ設計だったとみることができる。危機のために用意されたものではないにせよ、結果としてそれが緩衝材になった。社長不在でも会社の意思表示は途切れず、後継の選定に2か月を使えたのである。
もっとも、選ばれた君島達己氏の在任は3年弱で終わっている。海外販売と管理を歩んだ経歴は、開発が主導してきた会社にあってむしろ異質で、就任と同時に開発の2人がフェローへ回った布陣も、実務の重心がどこにあるかを示していた。2018年に社長を継いだ古川俊太郎氏は当時の経営企画室長で、君島体制の3年はその人が取締役から常務執行役員へ上がっていく期間と重なる。急逝という偶発に対して、任天堂は中継ぎを立てて時間を買い、その間に本命を育てた。そう読むのが最も無理がないように思われる。
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表取締役の異動 | 2015年7月13日 | 代表取締役の異動に係る臨時報告書を関東財務局長へ提出。岩田聡社長の逝去による |
| 空位の間の代表取締役 | 竹田玄洋氏・宮本茂氏の2名 | ともに2002年5月から代表取締役。社長の職は2か月にわたり置かれなかった |
| 新社長の就任 | 2015年9月 | 君島達己氏が取締役社長・代表取締役に就任。9月14日に臨時報告書を提出 |
| 新社長の前職 | 常務取締役 経営統括本部長 | 2013年6月就任、総務本部長を兼務。2014年6月から人事本部を担当 |
| 新社長の経歴 | 三和銀行を経て2002年入社 | 2002年1月にNintendo of America取締役、2006年5月に同社取締役会長(CEO) |
| 同時の役職変更 | 竹田玄洋氏・宮本茂氏がフェローへ | 2015年9月に技術フェロー、クリエイティブフェローへ。代表取締役は続けた |
| 交代時の取締役の数 | 5名 | 代表取締役社長1名、代表取締役フェロー2名、取締役兼常務執行役員2名 |
| 機関設計の変更 | 2016年6月 | 監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行 |
| 2度目の交代 | 2018年6月 | 古川俊太郎氏が代表取締役社長に就任。君島達己氏の在任は3年弱 |
| 後任の経歴 | 1994年4月入社 | 2015年7月に経営企画室長、2016年6月に取締役・常務執行役員へ |
| 指名の仕組み | 2020年に指名等諮問委員会を設置 | 取締役会の任意の諮問機関。答申までを役割とし、決定権は持たない |
出所:任天堂 有価証券報告書 第76期(2016年3月期)・第78期(2018年3月期)【役員の状況】【沿革】【提出会社の状況】 / 任天堂 コーポレート・ガバナンスに関する報告書
任天堂:業績の推移
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 1,014,345 | 171,076 | 77,621 | Wiiとニンテンドー DSの後。ここから3期連続で営業損失に沈む |
| 2012年3月期 | 647,652 | △37,320 | △43,204 | |
| 2013年3月期 | 635,422 | △36,410 | 7,099 | |
| 2014年3月期 | 571,726 | △46,425 | △23,222 | |
| 2015年3月期 | 549,780 | 24,770 | 41,843 | 営業損益が3期ぶりに黒字へ戻った期 |
| 2016年3月期 | 504,459 | 32,881 | 16,505 | 岩田聡社長の逝去と君島達己氏の就任があった期 |
| 2017年3月期 | 489,095 | 29,362 | 102,574 | 3月にNintendo Switchを発売。純利益は投資有価証券売却益645億円を含む |
| 2018年3月期 | 1,055,682 | 177,557 | 139,590 | 6月に古川俊太郎氏が社長へ。売上高は前期比115.8%増 |
| 2019年3月期 | 1,200,560 | 249,701 | 194,009 | |
| 2020年3月期 | 1,308,519 | 352,370 | 258,641 | |
| 2021年3月期 | 1,758,910 | 640,634 | 480,376 |
出所:任天堂 有価証券報告書 第71期〜第81期(連結損益計算書)
任天堂:従業員数の推移
| (人) | 連結従業員数 | 提出会社の従業員数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 4,712 | 1,744 | |
| 2012年3月期 | 4,928 | 1,833 | |
| 2013年3月期 | 5,080 | 1,945 | |
| 2014年3月期 | 5,213 | 1,977 | |
| 2015年3月期 | 5,120 | 2,009 | |
| 2016年3月期 | 5,064 | 2,066 | 3期連続の営業損失を経ても連結で5,064人。人員を減らしていない |
| 2017年3月期 | 5,166 | 2,133 | |
| 2018年3月期 | 5,501 | 2,191 | |
| 2019年3月期 | 5,944 | 2,286 | |
| 2020年3月期 | 6,200 | 2,395 | |
| 2021年3月期 | 6,574 | 2,498 |
出所:任天堂 有価証券報告書 第71期〜第81期【従業員の状況】
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- 任天堂 有価証券報告書「第76期(2016年3月期)【役員の状況】【提出会社の状況】」
- 任天堂 有価証券報告書「第78期(2018年3月期)【役員の状況】」
- 任天堂 有価証券報告書「第85期(2025年3月期)【沿革】」
- 任天堂 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」