メルカリ指名委員会等設置会社へ移行:創業CEOが退いたあとの後継の選び方を、先に制度へ預ける機関設計の転換

更新:

時期 2023年9月
当時の社長 山田進太郎
論点 創業者がCEOを退いたあとに後継を選べる仕組みと、海外展開に耐える執行体制
概要

2023年9月28日の第11回定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移った。取締役会は社外取締役6名を含む10名となり、その下に指名委員会・報酬委員会・監査委員会を設置した。指名委員会と報酬委員会はいずれも4名のうち3名が独立社外取締役で、委員長も独立社外取締役から選ぶ。

法令・定款・取締役会規程で定めた事項を除く業務執行の意思決定は、6名の執行役へ委ねられた。監督と執行を、人でも権限でも切り分けた形である。

背景

移行の前年まで、取締役会は社外取締役3名を含む5名、監査役会は社外監査役2名を含む3名だった。指名と報酬の手続については2020年4月30日に任意の指名報酬委員会を設置し、委員3名のうち2名を社外取締役としていたが、委員長は代表取締役CEOが務めていた。

その間に売上高は2019年6月期の516億円から2023年6月期の1,720億円へ、連結従業員数は1,826人から2,101人へ伸び、2022年6月には東京証券取引所プライム市場へ移っている。

内容

山田進太郎CEOは{q1}と、創業者が権限を握り続けることの危うさを移行の理由に挙げている。検討には専門家を交え、半年以上を費やした。

移行後の1年で、取締役会は12回、指名委員会と報酬委員会はそれぞれ8回、監査委員会は11回開かれた。指名委員会の審議事項には、取締役選任議案の決定や取締役評価の仕組みとともに、CEOサクセッションの検討が並ぶ。監査委員会は3名のうち2名が常勤で、内部監査部門との連携を受け持つ。

含意

社外取締役の篠田真貴子氏は 『やはり、本丸はCEOサクセッサー(後継者)であり、株主の負託に応えて選べる良い仕組みをどう作るかということです』 と、移行の狙いを後継者選びの仕組みに置いている。取締役会は移行から1年で社外取締役8名を含む12名へ広がり、役員に占める女性の比率は21.4%から46.6%、2025年6月期には50.0%まで上がった。一方で執行役は移行時の6名から2025年6月期の4名へ絞られている。厚くしたのは監督の側で、執行の側は人数ではなく委ねる権限の幅で応えた形になった。

筆者の見解

後継を選ぶための機関設計

この移行で組み替えたのは監督の形式ではなく、創業者が退いたあとの会社の決め方である。山田進太郎CEOは自らの「創業者プレミアム」を、良い方向にも悪い方向にも働きうるものとして名指しし、自分がCEOでなくなる日を前提に機関設計を選んだ。指名委員会の審議事項にCEOサクセッションの検討が並び、その委員長が独立社外取締役に固定されているのは、後継を選ぶ権限を創業者の手から制度の側へ移すという意味を持つ。取締役会に置く委員会を任意のまま厚くする道もあったなかで、指名委員会に法定の決定権を持たせる型を採ったところに、この判断の芯があったとみられる。

もっとも、制度が作られたことと、それが働くこととは別である。指名委員会にも報酬委員会にも創業者本人が委員として入っており、委員長こそ独立社外取締役だが、後継者を選ぶ場に現職が座り続ける構図は残ったままで、その是非は実際に交代が起きるまで確かめようがない。移行後も代表執行役CEOは山田進太郎氏のままで、執行役は6名から4名へ絞られた。監督の側を広げながら執行の側を細くしたこの数年が、委ねた権限の実質をどれだけ育てたのかは、次の人選で初めて読めるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行前の機関設計 監査役会設置会社 取締役会は社外取締役3名を含む5名、監査役会は社外監査役2名を含む3名
移行前の任意の委員会 指名報酬委員会 2020年4月30日設置。委員3名のうち2名が社外取締役で、委員長は代表取締役CEO
移行の決議 2023年9月28日 第11回定時株主総会で、指名委員会等設置会社への移行を内容とする定款の変更を決議
移行日 2023年9月28日 決議と同日付で移行した
検討の期間 半年以上 専門家を交えて議論し、合意に至った
移行後の取締役会 10名(うち社外取締役6名) 法令・定款・取締役会規程で定めた事項を除く業務執行の意思決定は執行役へ委任
指名委員会 4名(うち独立社外取締役3名) 役員の選任・解任の方針、取締役選任議案の決定、CEOサクセッションの検討を担う
報酬委員会 4名(うち独立社外取締役3名) 取締役・執行役の報酬等の決定方針と、個人別の報酬内容を決定する
監査委員会 3名(うち独立社外取締役2名) うち2名が常勤。会計監査人の評価・選定と内部監査部門との連携も受け持つ
3委員会の委員長 いずれも独立社外取締役 審議の客観性・透明性を担保するため、独立社外取締役から選定する
移行後の執行役 6名 移行時の人数。2024年6月期は5名、2025年6月期は4名となった
移行後1年の開催回数 取締役会12回 指名委員会8回、報酬委員会8回、監査委員会11回(2024年6月期)

出所:メルカリ 有価証券報告書 第8期(2020年6月期)・第11期(2023年6月期)・第12期(2024年6月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】/Impact Report 2023(FY2023.6版)

メルカリ:取締役会と監査体制の構成の推移

(名) 取締役社外取締役監査役執行役 備考
2018年6月期 833 上場した期。監査役3名は全員が社外監査役
2019年6月期 824
2020年6月期 534 2020年4月30日に任意の指名報酬委員会を設置し、取締役会を5名へ絞った
2021年6月期 533
2022年6月期 533 2022年6月に東京証券取引所プライム市場へ移行
2023年6月期 1066 2023年9月28日に指名委員会等設置会社へ移行。監査役会は監査委員会に替わった
2024年6月期 1285 役員に占める女性の比率は46.6%
2025年6月期 1284 役員に占める女性の比率は50.0%
2026年6月期 第14期は未到来
2027年6月期
2028年6月期
取締役会に占める社外取締役
社外取締役(名)社内取締役(名)社外取締役率(%)

出所:メルカリ 有価証券報告書 第6〜13期(コーポレート・ガバナンスの概要・役員の状況。各期の提出日現在の人数)

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出典・参考
  • メルカリ 決算説明会資料「FY2023.6 4Q 決算説明会資料」
  • メルカリ 統合報告書「Impact Report 2023(FY2023.6版)」
  • メルカリ 有価証券報告書「第8期(2020年6月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • メルカリ 有価証券報告書「第11期(2023年6月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • メルカリ 有価証券報告書「第12期(2024年6月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【監査の状況】」
  • メルカリ コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2023年9月28日提出」

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