スペイン子会社の不適切会計と決算訂正(2012年・沖電気工業の決断)

更新:
論点過年度決算をどこまで訂正するか
沖電気工業:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
5期分の訂正による純資産262億円の減額と子会社の営業休止2012年8月、スペインの連結子会社で不適切な会計処理が発覚した。同月8日に財政状態及び経営成績に著しい影響を与える事象として臨時報告書を提出し、9月14日には第84期から第88期までの有価証券報告書5期分、第87期と第88期の四半期報告書6本、第85期から第88期までの内部統制報告書4期分の訂正報告書を一括して関東財務局長へ提出している。

何をなぜ決めたか:5期分の訂正による純資産262億円の減額と子会社の営業休止

概要

2012年8月、スペインの連結子会社で不適切な会計処理が発覚した。同月8日に財政状態及び経営成績に著しい影響を与える事象として臨時報告書を提出し、9月14日には第84期から第88期までの有価証券報告書5期分、第87期と第88期の四半期報告書6本、第85期から第88期までの内部統制報告書4期分の訂正報告書を一括して関東財務局長へ提出している。

訂正により2012年3月期の純資産額は67,524百万円から41,251百万円へ26,273百万円減少し、自己資本比率は18.0%から11.2%へ下がった。

背景

2010年10月に発表した中期経営計画のもとで、注力分野へのリソース集中と戦略的アライアンスによる成長プログラムを展開し、経営目標の達成と早期復配の実現を目指して順調に推移していた。そこへ海外連結子会社の不適切な会計処理が発覚し、OKIグループの財務基盤を大きく毀損した。訂正の影響は5期に及び、2010年3月期は3,619百万円の当期純利益が3,836百万円の当期純損失へ転じている。

内容

スペインの連結子会社は2013年3月期に営業活動を休止した。資産の処分と人員の整理に係る費用として子会社整理損4,011百万円を特別損失に計上し、販売費及び一般管理費に含まれる貸倒引当金繰入額及び貸倒損失は1,114百万円から5,838百万円へ増加している。2013年3月期の連結売上高は4,558億円、営業利益135億円、当期純利益136億円まで戻ったが、安定配当実施のための基盤構築が完了していないとして期末配当は見送られた。

含意

代表取締役社長執行役員の川崎秀一氏は交代せず、翌2014年3月期も同じ役職に就任している。再発防止はグループを挙げたコンプライアンスの強化として掲げられ、内部統制システム構築の基本方針はその後、グループ各社にも内部通報規程と通報・相談窓口を置き、親会社への報告を求める方式へ改められた。普通株式の配当は2014年3月期の1株当たり3円まで再開されなかった。

いつ何が起きたか8件
考察:五年分積み上がるまで、連結の外にあったもの
考察

考察:五年分積み上がるまで、連結の外にあったもの

この件で問われたのは不正そのものよりも、連結の輪郭がどこまで見えていたかである。訂正の対象は第84期から第88期までの5期に及び、2012年3月期の純資産額は26,273百万円削られた。5年分積み上がるまで気づけなかったということは、海外の販売拠点が親会社の統制の外側に置かれていたに等しい。発覚時に掲げていた中期経営計画は、注力分野へリソースを集中し戦略的アライアンスで成長を獲得する設計で、稼ぐ側の絵は描かれていたが、増やした拠点を統括する側の絵は薄かったのではないか。

もっとも、露見したあとの処理は速い。8月に発覚し、9月14日には有価証券報告書5期分と四半期報告書6本、内部統制報告書4期分を同じ日付で出し切っている。傷んだ数字を一度に表へ出し、翌期には当該子会社の営業活動を休止して整理損まで通した。損失を分割して先送りしない処理は、自己資本比率が一桁台へ迫った会社が選べる最短の道だったと思われる。ただし責任の所在は本体の役員人事には現れず、普通株式の復配はさらに1年待つことになった。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

沖電気工業:過年度決算の訂正と、純資産額・当期純損益の推移

純資産額(百万円)
沖電気工業:過年度決算の訂正と、純資産額・当期純損益の推移
(百万円)純資産額(訂正前)純資産額当期純損益(訂正前)当期純損益備考
2008年3月期101,376−567−第84期。訂正の対象だが、訂正後の数値は公表資料で確認できない
2009年3月期58,68348,408△45,011△46,188第85期。純資産額は10,275減
2010年3月期64,81047,6073,619△3,836第86期。訂正で当期純損益が黒字から赤字へ転じた
2011年3月期59,90338,859△27,001△31,809第87期。純資産額は21,044減
2012年3月期67,52441,2518,0001,555第88期。純資産額は26,273減。自己資本比率は18.0%から11.2%へ
2013年3月期−56,625−13,599第89期。子会社整理損4,011を特別損失に計上。普通株式は無配
2014年3月期−91,918−27,359普通株式の配当を1株当たり3円で再開
2015年3月期−121,414−33,091
2016年3月期−107,384−6,609
2017年3月期−97,215−4,691
2018年3月期−102,144−5,891
出所:沖電気工業 有価証券報告書 第88期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】(訂正前の第84〜第88期) / 沖電気工業 有価証券報告書 第89期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】(訂正後の第85〜第89期) / 沖電気工業 有価証券報告書 第94期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】(第90〜第94期)
出所:沖電気工業 有価証券報告書 第88期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】(訂正前の第84〜第88期) / 沖電気工業 有価証券報告書 第89期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】(訂正後の第85〜第89期) / 沖電気工業 有価証券報告書 第94期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】(第90〜第94期)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
不適切な会計処理の発覚2012年8月海外連結子会社で発覚し、OKIグループの財務基盤を大きく毀損した
臨時報告書の提出2012年8月8日財政状態及び経営成績に著しい影響を与える事象として関東財務局長へ提出
対象となった子会社スペインの連結子会社2013年3月期に営業活動を休止し、資産の処分と人員の整理を行った
有価証券報告書の訂正第84期〜第88期の5期分2008年3月期から2012年3月期まで。2012年9月14日に関東財務局長へ提出
四半期報告書の訂正6本第87期と第88期の各第1〜第3四半期。いずれも2012年9月14日提出
内部統制報告書の訂正第85期〜第88期の4期分2012年9月14日提出。財務報告に係る内部統制の評価結果を訂正した
臨時報告書の訂正2012年9月14日2012年8月8日提出分に係る訂正報告書
純資産額への影響67,524百万円→41,251百万円2012年3月期。26,273百万円減少し、自己資本比率は18.0%から11.2%へ
当期純損益への影響3,619百万円の利益→3,836百万円の損失2010年3月期。訂正で黒字が赤字へ転じた
子会社整理損4,011百万円2013年3月期の特別損失。欧州子会社の営業休止に伴う資産の処分と人員の整理
貸倒引当金繰入額及び貸倒損失1,114百万円→5,838百万円販売費及び一般管理費に含まれる額。2012年3月期から2013年3月期への変化
期末配当見送り2013年3月期。安定配当実施のための基盤構築が完了していないため
社長の交代なし川崎秀一氏が代表取締役社長執行役員を続けた
再発防止の方針グループを挙げたコンプライアンスの強化2013年3月期の対処すべき課題に掲げた
内部統制システム基本方針の改定2015年3月期グループ各社にも内部通報規程と窓口を置き、親会社への報告を求める方式へ改めた
出所:沖電気工業 有価証券報告書 第89期(2013年3月期)【対処すべき課題】【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書関係】【配当政策】【その他】・第88期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】・第91期(2015年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】
出所:沖電気工業 有価証券報告書 第89期(2013年3月期)【対処すべき課題】【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書関係】【配当政策】【その他】・第88期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】・第91期(2015年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】
参考文献

参考文献

参考
  • 沖電気工業 臨時報告書「企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第19号(財政状態及び経営成績に著しい影響を与える事象)に基づく臨時報告書」
  • 沖電気工業 訂正報告書「第84期から第88期までの有価証券報告書に係る訂正報告書、同四半期報告書6本・内部統制報告書4期分の訂正報告書」
  • 沖電気工業 有価証券報告書「第89期(2013年3月期)【対処すべき課題】【連結損益計算書関係】【配当政策】【その他】」
  • 沖電気工業 有価証券報告書「第88期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 沖電気工業 有価証券報告書「第91期(2015年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 沖電気工業 有価証券報告書「第94期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

次に読む決断

同業他社の状況(電機・事務機)

免責事項およびポリシー