富士ゼロックスの会計問題と決算訂正(2017年・富士フイルムの決断)

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論点海外販売子会社の統制をどう立て直すか
富士フイルム:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
豪州・ニュージーランドの販売子会社の不適切会計と4期の決算訂正富士ゼロックスの海外販売子会社であるFuji Xerox New Zealand LimitedとFuji Xerox Australia Pty. Ltd.で、不適切な会計処理及び取引が判明した。第三者委員会が全容の解明にあたり、特定した必要な修正はすべて連結財務諸表へ反映された。

何をなぜ決めたか:豪州・ニュージーランドの販売子会社の不適切会計と4期の決算訂正

概要

富士ゼロックスの海外販売子会社であるFuji Xerox New Zealand LimitedとFuji Xerox Australia Pty. Ltd.で、不適切な会計処理及び取引が判明した。第三者委員会が全容の解明にあたり、特定した必要な修正はすべて連結財務諸表へ反映された。

2017年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は、開示すべき重要な不備があるため有効でないと評価されている。第117期から第120期までの連結決算が訂正され、第121期の有価証券報告書の提出は2017年7月31日となった。

背景

富士ゼロックスは1962年2月に英国ランクゼロックス社との合弁で設立され、2001年3月に発行済株式総数の25%を追加取得して議決権の75.0%を握る連結子会社となっていた。2017年3月期の連結売上高2,322,163百万円のうちドキュメントソリューション部門が1,080,876百万円を占め、連結従業員78,501名のうち47,164名がこの部門に属する。

持株会社は子会社の重要な業務執行について取締役会の承認または経営会議の審議を要する事項を定め、主要な子会社の取締役会の決議事項と報告事項について定期的に報告を受ける建て付けを取っていた。それでも第三者委員会は、内部統制システムの整備及び運用の不備を指摘している。

内容

訂正は第117期から第120期に及び、当期純利益はいずれの期も減額された。2016年3月期は123,313百万円から116,402百万円へ6,911百万円減少し、前任監査人は訂正後の連結財務諸表に対して2017年7月31日付で無限定適正意見を表明している。

再発防止として、富士ゼロックスの本社・経営管理機能の一部を持株会社へ統合し、経営幹部を含めたグループ内人材交流を拡大した。報告体制を含めて富士ゼロックスとその子会社にかかる内部統制を見直して再構築し、業務プロセスの透明化を図っている。2017年6月には「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定した。

含意

2017年度には、社長を委員長とするガバナンス強化委員会の下で、全世界のグループ会社を対象に強化策が実施された。経理分野では持株会社・富士フイルム・富士ゼロックスの経理部門を統合し、売上計上プロセスと債権管理プロセスを改め、リース取引基準を厳格化し、全グループ会社のCEOとCFOに会計コンプライアンス教育を施している。

その過程で明らかになった過年度分を含む会計処理の修正は、2016年度までの累積的影響額を2017年度に一括して処理した。2017年度の当期純利益への影響額は10,073百万円で、うちアジア販売子会社の営業債権に対する貸倒引当金の修正が3,567百万円、小型プリンター事業の実質的な預託販売と判断される取引の修正が2,858百万円である。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役9名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

考察:子会社との距離
考察

考察:子会社との距離

この件で問われたのは、海外の販売子会社2社の帳簿そのものよりも、議決権の75.0%を握りながら遠ざけていた子会社との距離のほうだっただろう。持株会社は子会社の重要な業務執行に承認や審議を要する仕組みを敷き、主要な子会社の取締役会の決議事項についても定期的に報告を受けていた。それでも内部統制システムの整備及び運用の不備を指摘され、2017年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効でないと評価されるに至った。仕組みがあることと、それが届いていることは別だという当たり前が、4期分の決算訂正として顕在化したのだろう。

もっとも、打った手は形式の補修にとどまっていない。富士ゼロックスの本社・経営管理機能の一部を持株会社へ引き上げ、3社の経理部門をひとつにまとめたのは、監督を強めるというより、独立して動いていた会社を持株会社の内側へ引き寄せる動きだったとみられる。その延長線上に2019年11月の完全子会社化があったと読むこともできる。ただし、厳格化した基準で各社を洗い直した結果、2017年度にはさらに10,073百万円の修正が現れた。どこまで掘れば底に着くのかは、掘ってみるまで分からなかったのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

富士フイルム:当社株主帰属当期純利益の訂正前と訂正後

富士フイルム:当社株主帰属当期純利益の訂正前と訂正後
(百万円)訂正前訂正後備考
2012年3月期43,758−訂正後の値は第121期の主要な経営指標等の推移に載っていない
2013年3月期54,26650,847訂正により3,419減少した
2014年3月期80,99671,558訂正により9,438減少した
2015年3月期118,553110,940訂正により7,613減少した
2016年3月期123,313116,402訂正により6,911減。前任監査人が訂正後の連結財務諸表に無限定適正意見を表明
2017年3月期−131,506第三者委員会が特定した修正を反映した期。有価証券報告書の提出は7月31日
2018年3月期−140,694貸倒引当金の厳格化等により10,073百万円の修正を一括処理した期
2019年3月期−138,106
2020年3月期−124,98711月に富士ゼロックス株25%を取得し完全子会社とした期
2021年3月期−181,205
2022年3月期−211,180
出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 第120期・第121期・第126期(主要な経営指標等の推移・連結・米国会計基準)
出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 第120期・第121期・第126期(主要な経営指標等の推移・連結・米国会計基準)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
会計問題の対象会社Fuji Xerox New Zealand LimitedFuji Xerox Australia Pty. Ltd.も対象。いずれも富士ゼロックス㈱の海外販売子会社
問題の内容不適切な会計処理及び取引富士ゼロックス㈱の海外子会社で判明し、第三者委員会の設置に至った
調査体制第三者委員会全容の解明に取り組み、特定した必要な修正はすべて連結財務諸表に反映した
内部統制の評価有効でない2017年3月31日現在。開示すべき重要な不備があるとして評価した
不備のあった範囲全社的な内部統制と2社の業務プロセス決算・財務報告プロセスに関する内部統制と、ニュージーランド・豪州2社の業務プロセス
訂正の対象となった期第117〜120期2013年3月期から2016年3月期まで。当社株主帰属当期純利益はいずれの期も減額された
2016年3月期の当期純利益116,402百万円訂正前は123,313百万円。訂正により6,911百万円減少した
訂正後の連結財務諸表の監査意見無限定適正意見2017年7月31日付で前任監査人が前連結会計年度の訂正後の連結財務諸表に表明した
有価証券報告書の提出日2017年7月31日第121期(2017年3月期)。監査法人は第121期から新日本有限責任からあずさへ交代
再発防止策(組織)本社・経営管理機能の一部を統合富士ゼロックス㈱の機能の一部を持株会社へ統合し、グループ内人材交流を拡大した
再発防止策(内部統制)報告体制を含む見直し・再構築富士ゼロックス㈱及びその子会社にかかる内部統制を見直し、業務プロセスを透明化
ガバナンス強化委員会社長が委員長全世界のグループ会社を対象にガバナンス強化策を実施した
経理体制の統合3社の経理部門を統合持株会社・富士フイルム㈱・富士ゼロックス㈱。リース取引基準も厳格化した
追加の会計処理の修正10,073百万円2016年度までの累積的影響額を2017年度に一括処理。当期純利益への影響額
修正の主な内訳貸倒引当金の修正3,567百万円ほかに小型プリンター事業の実質的な預託販売と判断される取引の修正が2,858百万円
コーポレートガバナンス・ガイドライン2017年6月に制定これに基づく活動でコンプライアンス・リスクマネジメントの強化を図るとした
過年度決算の訂正に係る監査報酬あずさ200百万円・新日本2,024百万円2018年3月期。KPMGのメンバーファームへも過年度決算に係る377百万円を支払った
出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 第120期(2016年3月期)・第121期(2017年3月期)・第122期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 第120期(2016年3月期)・第121期(2017年3月期)・第122期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
当時の取締役9名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第121期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第121期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第121期(2017年3月期)内部統制報告書に対する監査報告書」
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第120期(2016年3月期)・第121期(2017年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第122期(2018年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書「第122期(2018年3月期)【監査公認会計士等に対する報酬の内容】」
  • 富士フイルムホールディングス 決算説明会資料「2017年度決算説明会」

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