品質データ改ざん発覚(2017年・三菱マテリアルの決断)

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論点 子会社の品質不正にどう責任を取るか
三菱マテリアル:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
連結子会社5社で相次いだ不適合品の出荷と、グループガバナンスの立て直し

何をなぜ決めたか:連結子会社5社で相次いだ不適合品の出荷と、グループガバナンスの立て直し

概要

2017年11月に連結子会社の三菱電線工業と三菱伸銅について、2018年2月に同じく連結子会社の三菱アルミニウム・立花金属工業・ダイヤメットについて、検査記録データの書き換え等の不適切な行為により顧客の規格値または社内仕様値を逸脱した製品を出荷していた事実を公表した。

公表は二度に分かれ、対象は最終的に連結子会社5社に広がった。2017年10月に神戸製鋼所が製品検査データの改ざんを公表した直後の出来事である。

背景

三菱金属と三菱鉱業セメントの合併以来、三菱マテリアルは精錬・セメント・加工を軸に事業を広げ、2008年に三菱伸銅、2009年にダイヤメット、2010年に三菱電線工業を相次いで完全子会社化した。会社自身が不適合品の出荷に至った原因として挙げたのは、受注段階で製品開発・受注過程へ働き掛ける仕組みの不十分さ、「受注」と「納期」を偏重したこと、工程能力を超えた仕様での受注と量産、他部門から品質保証部門へのプレッシャー、検査人員・検査設備の不足、そして監査手続きの形骸化である。

内容

事実調査と原因究明のため、社外取締役と社外専門家が過半数を占める特別調査委員会を2017年12月1日に設置し、2018年3月28日に最終報告書が取締役会へ提出された。全製造拠点を対象とする臨時の品質監査では直島製錬所の銅スラグ骨材に品質管理上の問題が見つかり、2018年6月8日付で日本品質保証機構がJIS認証を取り消した。2018年3月期には営業損益の段階で約14億円の減益影響と、3,202百万円の特別損失を計上している。

含意

竹内章氏は2018年6月に社長を退任して取締役会長となり、小野直樹氏が取締役社長に就任した。同月に社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会を設置し、2019年6月21日の第94回定時株主総会の承認を経て指名委員会等設置会社へ移行した。傍流に膨らんだグループを管理しきれなかった構造が、機関設計そのものの組み替えにまで及んだことになる。

いつ何が起きたか 11件
考察:傍流に沈んだ改ざんが問うたもの
考察

考察:傍流に沈んだ改ざんが問うたもの

この不祥事の芯にあるのは、規模を追って足し算で広げたグループの、末端に沈んだ品質の緩みであった。会社自身が原因として挙げたのは「受注」と「納期」の偏重、工程能力を超えた仕様での受注、他部門から品質保証部門へのプレッシャー、そして監査手続きの形骸化である。いずれも個人の逸脱ではなく仕組みの問題であり、子会社管理の不十分さと縦割り組織の弊害がその背後に置かれた。連結売上高1兆5,995億円に対し、この件で計上した特別損失は3,202百万円にとどまる。金額の小ささこそ、失ったものが会計に載らない種類のものであったことを示しているだろう。

もっとも、危機がその後の絞り込みを促した点には皮肉な構図もうかがえる。品質不正がなければ、機関設計を指名委員会等設置会社へ組み替えるところまでは動かなかったかもしれない。連結従業員数は2020年3月期の28,601人から2023年3月期の18,576人へ減り、総合素材という自己定義そのものが問い直された。不祥事が改革の引き金になるという逆説は、傍流をどこまで自らの一部として引き受けるかという、多角化した企業に共通の問いを残しているといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

三菱マテリアル:連結業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
三菱マテリアル:連結業績の推移
(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2013年3月期 1,287,25174,41436,948
2014年3月期 1,414,79676,90252,551
2015年3月期 1,517,26581,09356,147
2016年3月期 1,417,89572,44261,316
2017年3月期 1,304,06863,92528,352
2018年3月期 1,599,53379,62134,595 品質不適合品関連損失3,202を特別損失に計上。営業損益段階でも約14億円の減益
2019年3月期 1,662,99050,6791,298 製品補償引当金繰入額2,529を計上。減損損失と環境対策引当金繰入額も重なった
2020年3月期 1,516,10049,610△72,850
2021年3月期 1,485,12144,52724,407
2022年3月期 1,811,75976,08045,015
2023年3月期 1,625,93325,30620,330
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第92期(2017年3月期)・第95期(2020年3月期)・第98期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第92期(2017年3月期)・第95期(2020年3月期)・第98期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】

三菱マテリアル:連結従業員数の推移

三菱マテリアル:連結従業員数の推移
(人) 連結従業員数臨時従業員数 備考
2013年3月期 22,1814,755
2014年3月期 23,1125,114
2015年3月期 23,4134,898
2016年3月期 24,6364,917
2017年3月期 24,8594,952
2018年3月期 26,9595,110 臨時従業員数は年間の平均人員で、連結従業員数には含まれない外書である
2019年3月期 28,4265,653
2020年3月期 28,6015,659
2021年3月期 27,1624,403
2022年3月期 23,7113,805
2023年3月期 18,5762,765 アルミ事業とセメント事業の再編により、連結の従業員数が大きく減った
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第88〜98期【従業員の状況】
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第88〜98期【従業員の状況】

経緯と対応

経緯と対応
科目 概要 備考
公表(第一次) 2017年11月 連結子会社の三菱電線工業と三菱伸銅の2社について公表した
公表(第二次) 2018年2月 三菱アルミニウム・立花金属工業・ダイヤメットを加え、対象は連結子会社5社になった
不正の内容 検査記録データの書き換えや検査の一部不実施 顧客の規格値または社内仕様値を逸脱した製品等(不適合品)を出荷していた
特別調査委員会の設置 2017年12月1日 社外取締役と社外専門家が過半数を占める構成。事実調査と原因究明を担った
最終報告書 2018年3月28日 取締役会へ提出。会社が策定した強化策を適切とする見解もあわせて示された
臨時の品質監査 2018年5月8日終了 全製造拠点が対象。直島製錬所の銅スラグ骨材で品質管理上の問題点が判明した
JIS認証の取消し 2018年6月8日 日本品質保証機構が臨時維持審査を経て直島製錬所の銅スラグ骨材の認証を取消し
子会社での認証の取消し 一部の事業所 各認証機関よりJIS認証の取消しやISO認証の取消し等の通知を受けた
業績への影響(2018年3月期) 営業損益段階で約14億円の減益 連結売上高は1兆5,995億33百万円、連結営業利益は728億19百万円
特別損失(2018年3月期) 3,202百万円 品質不適合品関連損失。調査等で一時的に要した費用にあたる
特別損失(2019年3月期) 2,529百万円 製品補償引当金繰入額。期末残高は流動1,435百万円と固定1,040百万円
補償費用の見積り 合理的な見積りが困難 見積りが困難なものは連結財務諸表に反映していないと2019年3月期まで記載
社長交代 2018年6月 竹内章氏が取締役会長へ、小野直樹氏が取締役社長に就任した。いずれも代表取締役
推進体制の新設 2018年4月1日 グループガバナンス強化推進本部・ガバナンス審議会・ガバナンス統括本部を新設
モニタリング委員会の設置 2018年5月10日 社外取締役と社外専門家で構成。業務執行から独立して強化策の進捗を監督する
指名・報酬委員会の設置 2018年6月22日 社外取締役が過半数。取締役・執行役員の選解任と報酬の透明性を担保する
再発防止策 品質管理体制の再構築6施策 受注時のフロントローディング、品質管理部門の強化、品質教育、検査設備自動化、品質監査、外部コンサルタント
品質監査の対象 国内外の約70拠点 2018年度に品質に関する監査を実施する対象として掲げた
機関設計の変更 2019年6月21日 第94回定時株主総会の承認を経て指名委員会等設置会社へ移行した
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第93期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発債務】【連結損益計算書関係】、第94期(2019年3月期)【連結損益計算書関係】、統合報告書2018
出所:三菱マテリアル 有価証券報告書 第93期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発債務】【連結損益計算書関係】、第94期(2019年3月期)【連結損益計算書関係】、統合報告書2018
参考文献

参考文献

参考
  • 三菱マテリアル 有価証券報告書「第93期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】」
  • 三菱マテリアル 有価証券報告書「第93期(2018年3月期)【連結損益計算書関係】【偶発債務】」
  • 三菱マテリアル 有価証券報告書「第94期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【連結損益計算書関係】」
  • 三菱マテリアル 統合報告書「統合報告書2018」
  • 三菱マテリアル 有価証券報告書「第88〜98期【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】【沿革】」

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