富士通東京電力向け受注調整の処分:東京電力事案の発覚後に自ら社内調査を起こし、中部電力事案を課徴金減免申請で自主申告した
更新:
- 概要
-
2016年7月、東京電力向けの電力保安通信用機器の受注調整について独占禁止法違反が認定され、排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。これに先立つ同年5月には、公正取引委員会から排除措置命令案及び課徴金納付命令案の通知を受けている。
違反に関与した社員は懲戒に処し、取締役会の決議に基づき、会長および社長を含む関係役員7名に月額報酬の10〜30%を3か月減額する処分を行った。
- 背景
-
公正取引委員会の立入検査は、東京電力向けと中部電力向けの電力保安用通信機器の取引をまとめて対象としていた。中部電力を担当する営業担当者は東京電力事案の発覚前にすでに他社との受注調整を取りやめていたが、会社としてその事実をつかんでいたわけではない。
コンプライアンスはFUJITSU Wayの「行動規範」に則って従来から徹底を図ってきた領域で、社内ルールの整備、役員・社員向けの教育、内部通報制度の運用もグローバルに実施していた。それでも公共分野の営業現場で受注調整が続いていたことが、立入検査で明るみに出た。
- 内容
-
東京電力事案の発覚後、取締役会の決議のもとで直ちに社内調査を実施し、中部電力向けのハイブリッド光通信装置及び伝送路用装置の取引にも同様の受注調整があることを自ら発見した。これを受けて取締役会の承認を得て課徴金減免申請を行い、課徴金の全額免除と排除措置命令の免除を得ている。認定そのものは2017年2月までずれ込んだ。
調査を担ったのは、東京電力事案の発覚直後に設置したコンプライアンス特別調査委員会で、取締役会に直属するリスク・コンプライアンス委員会の臨時的措置として、取締役会の監督のもとに置かれた。
- 含意
-
再発防止は教育と監査の両輪で組まれた。2017年3月期には国内グループ会社向けのe-Learningへ自社の独占禁止法違反の再現ドラマを導入し、公共ビジネスの担当部門を中心とする営業部門へ延べ3,700人超の集合教育を実施している。
公正取引委員会の「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について」に基づく「国内コンプライアンス・プログラム」も整え、独占禁止法の遵守状況を確かめる監査計画の検討にも入った。東京電力事案の発覚後には、社長から全役員・従業員へ談合・カルテルの根絶が宣言されている。
自ら掘り返すという選択
東京電力事案で処分を受けた会社が次に選んだのは、調査の進展を待つことではなく、自分の側から掘り返すことだった。取締役会の決議で社内調査を起こし、中部電力向けの取引に同じ受注調整を見つけ、取締役会の承認を得て課徴金減免申請へ進む。結果として課徴金は全額免除され、排除措置命令も免れている。不正を発覚した一件で止めるか、同種の取引をすべて洗い直すかは、処分を受けた会社が最初に迫られる分岐であり、ここでは後者を選んだとみられる。
もっとも、この選択が信頼の回復にどこまで効いたかは測りにくい。東京電力事案の課徴金がいくらだったのかは会社の公表資料に出ておらず、負った処分の重さそのものが外からは確かめようがない。再発防止として並ぶのは、再現ドラマを使ったe-Learningと延べ3,700人超の集合教育、そして監査計画の検討である。教育の量は数えられるが、公共分野の営業現場で受注調整が繰り返されない保証にはならない。談合の根絶を宣言した社長の言葉が現場の末端まで届いたかどうかは、次の立入検査がないことでしか示されないのかもしれない。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 立入検査の対象 | 東京電力・中部電力向けの取引 | 電力保安用通信機器の取引に関する独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑い |
| 命令案の通知 | 2016年5月 | 公正取引委員会から排除措置命令案及び課徴金納付命令案の通知を受けた |
| 東京電力事案の処分 | 2016年7月 | 独占禁止法違反が認定され、排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた |
| 東京電力事案の対象取引 | 電力保安通信用機器の受注調整 | 課徴金の納付額は有価証券報告書にも統合レポートにも記載がない |
| 社内調査 | 取締役会の決議のもとで実施 | 東京電力事案の発覚後に直ちに着手し、中部電力向け取引の受注調整を発見した |
| 調査を担った組織 | コンプライアンス特別調査委員会 | 発覚直後に設置。リスク・コンプライアンス委員会の臨時的措置と位置づけた |
| 課徴金減免申請 | 取締役会の承認を得て実施 | 中部電力向け取引の受注調整を自主申告した |
| 中部電力事案の対象取引 | ハイブリッド光通信装置及び伝送路用装置 | |
| 中部電力事案の認定 | 2017年2月 | 担当者は東京電力事案の発覚前に受注調整を取りやめていた |
| 中部電力事案の処分 | 課徴金の全額免除 | 排除措置命令の発令も免除された |
| 社員の処分 | 違反に関与した社員を懲戒 | |
| 役員の処分 | 関係役員7名の報酬を減額 | 会長および社長を含む。月額報酬の10〜30%を3か月減額。取締役会の決議による |
| 再発防止(規程) | 国内コンプライアンス・プログラム | 公正取引委員会の独占禁止法コンプライアンスに関する指針に基づき整備した |
| 再発防止(教育) | 営業部門へ延べ3,700人超の集合教育 | 2017年3月期。e-Learningには自社の独占禁止法違反の再現ドラマを導入した |
| 再発防止(監査) | 遵守状況を確認する監査計画を検討 | 社外専門家の意見も採り入れる方針を示した |
同じ問いに直面した会社
- 富士通 有価証券報告書「第116期(2016年3月期)【対処すべき課題等】」
- 富士通 有価証券報告書「第117期(2017年3月期)【対処すべき課題等】」
- 富士通 有価証券報告書「第117期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- 富士通 統合レポート「Fujitsu Group Integrated Report 2017」