富士通の直近の動向と展望

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富士通の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

祖業メインフレームの販売終了と1FINITY設立

2026年1月の決算説明会で、富士通はメインフレームの販売を2030年度末で終了すると正式発表した。磯部武司CFOは「我々がメインフレームの販売を2030年度末で終了すると決めたのも、社会のインフラはオンクラウドであるべきだと考えているから」(決算説明会 FY25-3Q)と説明した。1954年のFACOM100の開発から72年続いた大型機ビジネスという祖業の終焉である。同じ決算説明会では1FINITY株式会社の新設も発表し、ネットワークプロダクト関連の業務を集約することで、国内需要の縮小を前提にした事業体の最適化を進める方針も示した。祖業のハードウェア事業に最後の区切りをつける発表で、捨て続ける20年の締めくくりに位置する決定だった。

終了決断の背景には、メモリ価格の上昇とオンクラウド化の潮流がある。データセンター事業者やAIサーバ向けにメモリ供給が優先的に流れ、サーバー・PC等のハードウェア事業の採算を押し下げている。磯部はサーバの買い控えが起きても富士通のサービス事業にとってはビジネスチャンスの拡大につながると述べ、ハードウェア事業の縮小を逆手に取ってサービス事業側への顧客誘導を図る戦略を示した。祖業の一翼を手放しながら、残った事業の粗利率をさらに押し上げる構図である。捨てる判断と残す判断の両輪が、ここでも同時に作用している。72年続いた大型機の終了は、富士通にとって単なる撤退ではなく、サービス事業の成長を速めるための供給側の地ならしとなる。

参考文献
  • 決算説明会 FY25-3Q
  • 決算説明会 FY24-3Q

生成AI適用率6割達成とサービス事業の次の伸びしろ

2026年1月時点で、富士通の生成AI活用プロジェクト比率は、FY25の1Q末で1割、2Q末で3割、3Q末で6割と、年度末目標を前倒しで達成した。9ヶ月累計のコスト効率化効果は合計300億円を超え、生成AIはサービス事業を支える中核パーツの一つに育った。FY24には約300件のプロジェクトで全工程のAI自動化を検証し、最善ケースでは従来3人月の開発が3〜4時間で完了するなど、生産性100倍近くの結果も得た(決算説明会 FY25-3Q)。生成AIの取り込みで、サービス事業の姿は変わり始めている。磯部武司CFOは「少なくともサービスソリューションについては十分に達成確度があると思っている」(決算説明会 FY24-3Q)と、中計目標達成への自信も示した。

ナショナルセキュリティ(防衛)領域はFY25に前年並みの水準で推移し、次の波はFY26後半から到来する見込みとしている。Trusted Societyの領域では、ソフトウェアデファインドビークル、都市インフラのデジタルツイン、AI物流最適化といったオファリングが業種を問わず引き合いを集め、これらを軸に次期中期経営計画を描く構えである。「普通の会社」への変革がほぼ完了した時田体制が、次期中計でどのような成長目標を市場へ提示するのか。そこが、富士通が20年以上続けた構造改革の終着点を決める分岐点となる。捨てる時代の次に来るのは、育てる時代である。1935年の通信機メーカーとしての出発から90年、富士通の自己定義は再び大きな結節点に差し掛かっている。

参考文献
  • 決算説明会 FY25-3Q
  • 決算説明会 FY24-3Q

参考文献・出所

決算説明会 FY25-3Q
Business Insider Japan 2025/01/07
有価証券報告書
読売新聞 1959/10/04
実業の世界 1965/09
経済時代 1963/05
読売新聞 1971/10/22
日経ビジネス 1976/08/30
読売新聞 1980/05/28
日経ビジネス 1993/01/25
日経ビジネス 2001/10/08
決算説明会 FY24
決算説明会 FY24-3Q