富士フイルムの直近の動向と展望
富士フイルムの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
EM事業拡大とバイオCDMO増設が示す次の主力エンジン
2026年2月5日、富士フイルムHDは2026年3月期第3四半期決算説明会を開催し、連結売上高8574億円・営業利益900億円・親会社株主帰属純利益731億円を後藤禎一社長が市場に示した。エレクトロニクスマテリアルズ事業部の伸びが顕著で、半導体製造プロセス向けのフォトレジストや機能性材料の需要が世界的なAIデータセンター投資の拡大と連動し、次の主力事業エンジンとしての輪郭が決算の数字にも現れた。創業期の写真フィルムで培った化学合成・精密製造の技術蓄積が、半導体向け高機能材料としての商業生産能力に直結する構造が見えている。高精度の薄膜形成や微粒子制御の経験が、ナノメートル単位の制御を要求されるレジスト材料開発で競争力の源泉となった形にある。
バイオCDMO事業では、米国・英国・デンマークの主要サイトでの培養能力拡張投資が次の段階へ進む。2019年のバイオジェンデンマーク製造子会社買収以降、富士ダイオシンス・バイオテクノロジーズとしての一体運営体制が整い、大型商業生産案件の受注実績も積み上がった。後藤社長は「目指すはバイオ医薬品の受託大手」(日本経済新聞 2025/2/11)と繰り返し強調し、積極投資の継続と収益性の改善を同時に追う方針を示している。投資姿勢については負けるばくちは打たないとも語り、収益化の見通しが立つ案件に資本を集中させる方針を打ち出している。2026年3月期通期でも同事業は増収増益基調を維持する計画を示している。
- 決算説明会 FY25-3Q
- 富士フイルムHDプレスリリース
- 中期経営計画資料
- 日本経済新聞 2025/2/11
ヘルスケア総合化とドキュメントDX加速による複合型企業の深化
ヘルスケア事業全体では、日立画像診断機器統合後のMRI・CT・超音波・内視鏡という機器群、バイオCDMO、医薬品という三つの柱の統合運営が進み、予防・診断・治療を一体で提供する総合ヘルスケア企業の姿が年を追って明確になっている。富山化学由来の抗インフルエンザ薬アビガンの経験を踏まえつつ、希少疾患やがん領域での自社創薬品開発も続け、ヘルスケア事業のインオーガニック成長とオーガニック成長が並行して進む。中国経済の減速や為替の変動といった外部環境の不確実性があるなかでも、多様な収益源の存在が富士フイルムHDの業績安定性を支えている。
富士フイルムビジネスイノベーションが担うドキュメントソリューション事業では、浜直樹社長のもとで複合機事業のハードウェア収益から脱皮し、DX・クラウド・マネージドプリントサービスといったソフトウェア起点の収益拡大へ舵を切る姿勢が示されている。富士ゼロックス完全子会社化以降に取り込まれたドキュメント事業は、AIとクラウドの結合を軸とした新しい業務ソリューションプラットフォームとして再設計され、企業のデジタル変革を支援する複合型事業としての可能性を広げている。写真フィルムから出発した企業が、EM事業・CDMO・ヘルスケア機器・ドキュメントDXという四つの戦線で成長を狙う姿は、事業転換の成功例として国内外で語られる。
- 決算説明会 FY25-3Q
- 富士フイルムHDプレスリリース
- 中期経営計画資料
- 日本経済新聞 2025/2/11