三菱自動車指名委員会等設置会社への移行:監査役会を廃し、社外取締役12名と三委員会に執行の監督を委ねる体制への組み替え

時期 2019年6月
当時の社長 益子修
論点 監督と執行の分離
概要

2019年6月21日、第50回定時株主総会の定款変更の決議により、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行した。取締役15名のうち12名を社外取締役とし、指名・報酬・監査の三委員会をいずれも社外取締役が過半数を占める構成で置いた。

業務執行の決定権限は執行役CEOへ委譲され、執行役12名と執行役員15名が業務を担う。監督と執行の分離を明確にし、経営の健全性・透明性の確保へ向けて監督強化と危機管理の徹底を図りつつ、環境変化に素早く対応する迅速な業務執行を実現することを移行の理由に挙げた。

背景

統治の形を組み替える構想そのものは2016年1月にさかのぼる。経営の監督と業務執行を分離し、取締役会の監督機能を強化するとともに意思決定の迅速化を図るため、監査等委員会設置会社への移行方針を決めて準備を進めていた。

しかし同年4月に燃費試験の不正が発覚し、5月には日産自動車との資本業務提携の協議に入る。開発部門のトップの派遣を含む人的・技術的支援を受けるには、提携先との協議を踏まえてガバナンス体制を再検討のうえ決定する必要があると判断し、移行は中止された。統治の設計は出資者との協議が済むまで3年あまり宙に浮いた。

内容

再始動の引き金は、前代表取締役会長のカルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反および会社法違反の容疑で逮捕されたことだった。これを受けた内部調査で、日産自動車との折半出資会社Nissan-Mitsubishi B.V.からManaging Director報酬名目で不正に金銭の支払いを受けていたことが判明した。同社以外に不正の疑いのある行為は発見されなかった。

まず2018年12月17日に取締役会の諮問機関として任意の指名・報酬委員会を設置し、委員の過半数を社外取締役、委員長も社外取締役とした。この任意の機関を翌年の総会で法定の三委員会へ格上げしたことになる。

含意

実際に動いたのは報酬と指名の決定権である。移行前は2016年12月14日の臨時株主総会が決めた金銭報酬年額20億円・株式等関連報酬年額10億円の枠内で、配分と金額の決定権限が取締役会長に与えられていた。移行後は個人別の報酬等を報酬委員会が決定し、執行役CEOの選定・解職案と後継者計画は指名委員会が審議する。

取締役会の顔ぶれも入れ替わった。社外取締役は移行前の6名から12名へ倍増し、以後も11名で推移する。2021年6月24日時点では取締役会長を社外取締役の平工奉文氏が務め、議長も社外取締役が担う形になっている。

経緯と対応

科目 概要 備考
移行前の機関設計 監査役会設置会社 第49期の提出日現在で取締役11名(うち社外6名)、監査役5名(うち社外4名)
監査等委員会設置会社への移行方針 2016年1月 監督と業務執行の分離、取締役会の監督機能の強化、意思決定の迅速化が目的
移行方針の中止 燃費試験の不正を受け中止 日産自動車との協議を踏まえ、ガバナンス体制を再検討のうえ決定する必要があると判断
前代表取締役会長の逮捕 2018年度 カルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反及び会社法違反の容疑で逮捕された
内部調査の結果 不正な金銭の支払いが判明 日産自動車と折半出資のNissan-Mitsubishi B.V.からManaging Director報酬名目で受領
調査の及んだ範囲 ほかに不正の疑いは発見されず 当社及びNissan-Mitsubishi B.V.以外の当社が関係する会社を調べた結果
任意の指名・報酬委員会の設置 2018年12月17日 取締役会の諮問機関。委員の過半数が社外取締役で、社外取締役が委員長を務めた
指名委員会等設置会社への移行 2019年6月21日 第50回定時株主総会の定款変更の決議による
移行の理由 監督と執行の分離の明確化 経営の健全性・透明性確保へ向けた監督強化と危機管理の徹底、迅速な業務執行
取締役会の構成 取締役15名(うち社外12名) 議長は取締役会長の益子修氏。社外取締役のうち6名を独立役員として届け出た
指名委員会 社外取締役4名と取締役会長1名 委員長は幸田真音氏。執行役CEOの選定・解職案と後継者計画等を審議する
報酬委員会 社外取締役4名と取締役1名 委員長は宮永俊一氏。取締役及び執行役の個人別の報酬等を審議・決定する
監査委員会 社外取締役4名と取締役1名 委員長は竹岡八重子氏。取締役会の判断に基づく社内調査の実施等も担う
執行役 12名 執行役CEOを含む。ほかに執行役員15名。いずれも2019年6月21日現在
業務執行決定権限の委譲先 執行役CEO 職務権限分配規程(DOA規則)に基づき各執行役又は執行役員へ再委譲する
移行前の報酬の枠 金銭報酬は年額20億円 うち社外取締役は2億円以内。株式等関連報酬は年額10億円。2016年12月の臨時株主総会決議
移行後の報酬の決定 報酬委員会が決定 個人別の報酬等を決定し、2020年度以降の役員報酬制度の見直しも審議した

出所:三菱自動車工業 有価証券報告書 第47期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】・第50期(2019年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第51期(2020年3月期)【監査の状況】【役員の報酬等】

三菱自動車:取締役会と執行体制の構成の推移

(名) 取締役社外取締役執行役監査役 備考
2015年3月期 1445 監査役5名のうち社外監査役は3名
2016年3月期 1045 1月に監査等委員会設置会社への移行方針を決定。監査役の社外は4名
2017年3月期 1165 燃費試験の不正発覚により移行方針を中止した翌期。監査役の社外は4名
2018年3月期 1165 監査役5名のうち社外監査役は4名
2019年3月期 151212 提出日は移行後。社外取締役は6名から12名へ倍増し、執行役員は15名
2020年3月期 151213 2019年6月21日に指名委員会等設置会社へ移行した期。執行役員は11名
2021年3月期 131112 提出日現在で取締役会長は社外取締役の平工奉文氏。執行役員は10名
2022年3月期 131112
2023年3月期 131111
2024年3月期 131110
2025年3月期 131110 2025年6月の定時株主総会に取締役12名選任の議案を提案した
取締役会の構成と社外取締役比率
社外取締役(名)社内取締役(名)社外取締役率(%)

出所:三菱自動車工業 有価証券報告書 第46〜56期(コーポレート・ガバナンスの状況等)。各期の提出日現在の構成

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出典・参考
  • 三菱自動車工業 有価証券報告書「第47期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • 三菱自動車工業 有価証券報告書「第50期(2019年3月期)【対処すべき課題】」
  • 三菱自動車工業 有価証券報告書「第50期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 三菱自動車工業 有価証券報告書「第50期(2019年3月期)【役員の報酬等】」
  • 三菱自動車工業 有価証券報告書「第51期(2020年3月期)【監査の状況】【役員の報酬等】」
  • 三菱自動車工業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2021年12月16日提出」

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