Epson America傘下の不適切な経理処理(2009年・セイコーエプソンの決断)

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論点内部統制を有効でないと開示するか
セイコーエプソン:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
内部統制報告制度の初年度に重要な欠陥を開示し、海外子会社の管理を立て直した判断2009年3月期、中南米の連結子会社で、当期を含む過去数年にわたり不適切な経理処理が行われていたことが発見された。発生原因の調査・究明と決算の適切な修正に時間を要したため、第67期第3四半期に係る四半期報告書および確認書は、金融商品取引法が定める提出期限までに提出できず、2009年2月26日の提出となった。

何をなぜ決めたか:内部統制報告制度の初年度に重要な欠陥を開示し、海外子会社の管理を立て直した判断

概要

2009年3月期、中南米の連結子会社で、当期を含む過去数年にわたり不適切な経理処理が行われていたことが発見された。発生原因の調査・究明と決算の適切な修正に時間を要したため、第67期第3四半期に係る四半期報告書および確認書は、金融商品取引法が定める提出期限までに提出できず、2009年2月26日の提出となった。

社内調査の結果、不適切な経理処理の発生原因とその発見が遅れた原因の一端は財務報告に係る内部統制の不備にあると判断し、2009年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効でない旨を記載した内部統制報告書を、有価証券報告書と同時に提出している。

背景

財務報告に係る内部統制の評価と監査の制度は2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用され、2009年3月期がその初年度にあたる。エプソンはその初年度に、内部統制は有効でないと表示した。

特定された重要な欠陥は、Epson America, Inc.における傘下会社に対するモニタリングに係るものだった。米州の販売網はこの統括会社の傘下に入り、不適切な経理処理が行われていたのは中南米の連結子会社である。連結子会社は2009年3月期末で97社を数え、グループ全体の権限配分は関係会社管理規程が網羅的に定めていた。

内容

社内調査委員会による調査が行われ、その結果特定した必要な修正は2009年3月期の連結財務諸表に反映された。監査法人はこれによる財務諸表監査への影響はないとし、内部統制報告書についても、評価結果を適正に表示していると認めている。反映された修正の金額は開示されていない。

是正のため、2009年4月1日付で代表取締役社長直轄の再発防止監視委員会を設置した。同委員会が主導して定期的に進捗を確認し、グループを挙げて関係会社管理体制などの点検・改善を進めている。

含意

2010年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効と表示され、監査法人もこれを適正と認めた。欠陥の開示から是正までは1年で収まっている。

内部監査を担う監査室は16名から15名へいったん減少したのち、17名、19名、18名と増加した。連結子会社は2009年3月期の97社から2014年3月期の86社まで減少している。管理する対象を絞りながら、見る側の人手を厚くする方向へ動いたと思われる。

いつ何が起きたか6件
考察:初年度に「有効でない」と書いた意味
考察

考察:初年度に「有効でない」と書いた意味

制度の初年度に内部統制は有効でないと表示することは、求められる誠実さであると同時に、自社の管理が届いていない場所を市場に向けて名指しすることでもあった。名指されたのはEpson America, Inc.の傘下会社であり、本社から見れば子会社のさらに下にぶら下がる会社である。関係会社管理規程が権限配分を網羅的に定めていても、規程の網が統括会社の下まで自動で届くわけではない。四半期報告書が期限に間に合わなかったという事実は、本社とそこまでの距離の長さをそのまま示していたのだろう。

もっとも、この期のエプソンは1,113億円の当期純損失を計上しており、需要の急落と事業構造の見直しの只中にあった。管理の不備が顕在化したのは、業績が最も痛んだ時期と重なっている。是正そのものは1年で済み、翌期末の内部統制は有効に戻ったが、そこで問われたのは制度対応の速さではなく、100社近い子会社をどこまで本社の目が届く範囲に置けるのかという構えの問題だったのだろう。その後の5年で連結子会社を86社まで減らしたことは、答えの一つだったのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

セイコーエプソン:連結子会社の数と内部監査部門の人員

連結子会社(社・名)監査室の人員(名)
セイコーエプソン:連結子会社の数と内部監査部門の人員
(社・名)連結子会社監査室の人員備考
2005年3月期95−連結子会社は第64期の前期欄から。監査室の人員は照合できていない
2006年3月期10712
2007年3月期10510
2008年3月期10016
2009年3月期9716中南米の連結子会社の不適切な経理処理が発見された期
2010年3月期9515この期末時点の内部統制は有効と表示された
2011年3月期9215
2012年3月期8917
2013年3月期8819
2014年3月期8618
出所:セイコーエプソン 有価証券報告書 第64〜72期(連結の範囲に関する事項・コーポレート・ガバナンスの状況) / 監査室の人員は各期の有価証券報告書提出日現在の数
出所:セイコーエプソン 有価証券報告書 第64〜72期(連結の範囲に関する事項・コーポレート・ガバナンスの状況) / 監査室の人員は各期の有価証券報告書提出日現在の数

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
不適切な経理処理の発見2009年3月期中南米の連結子会社で、当期を含む過去数年にわたり行われていた
重要な欠陥の内容傘下会社に対するモニタリングEpson America, Inc.における傘下会社へのモニタリングに係るもの
四半期報告書の提出2009年2月26日第67期第3四半期分。金融商品取引法が定める提出期限までに提出できなかった
社内調査委員会調査を実施特定した必要な修正は連結財務諸表に反映された。設置日と構成は開示がない
修正の金額記載なし連結財務諸表に反映された修正の額は開示されていない
内部統制の評価結果有効でない2009年3月31日現在。制度が適用された初年度にあたる
内部統制監査の意見適正評価結果を適正に表示していると認められ、財務諸表監査への影響はない
再発防止監視委員会の設置2009年4月1日代表取締役社長直轄。定期的に進捗を確認し是正処置を推進する
再発防止策関係会社管理体制などの点検・改善グループを挙げて実施した
翌期の評価結果有効2010年3月31日現在の内部統制は有効と表示し、監査法人も適正と認めた
出所:セイコーエプソン 有価証券報告書 第67期(2009年3月期)【事業等のリスク】・内部統制監査報告書、第68期(2010年3月期)内部統制監査報告書
出所:セイコーエプソン 有価証券報告書 第67期(2009年3月期)【事業等のリスク】・内部統制監査報告書、第68期(2010年3月期)内部統制監査報告書
参考文献

参考文献

参考
  • セイコーエプソン 有価証券報告書「第67期(2009年3月期)【事業等のリスク】」
  • セイコーエプソン 有価証券報告書「第67期(2009年3月期)内部統制監査報告書」
  • セイコーエプソン 有価証券報告書「第67期(2009年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • セイコーエプソン 有価証券報告書「第68期(2010年3月期)内部統制監査報告書」

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