三井E&S鋼橋・し尿・水門の談合事件:公共工事をめぐる三件の独占禁止法違反と、45日間の営業停止を経た体制の立て直し
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- 概要
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2007年3月、水門工事の入札に関して公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。し尿処理施設建設工事の入札談合でも排除措置命令を受け、会社と関係者1名が大阪地方検察庁により起訴されて2007年4月23日に有罪判決(罰金刑)を受けている。
先行していた鋼橋上部工事の入札談合では2006年11月に東京高等裁判所から有罪判決(罰金刑)を受け、それに伴い2007年2月から3月にかけて、鋼構造物工事業に関し45日間の営業停止処分を受けた。
- 背景
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コンプライアンスの仕組みは摘発の前から置かれていた。2003年1月1日付で体制を構築し、グループ全社の役員・従業員に企業行動規準を配布し、コンプライアンス委員会と、事務局長または弁護士が従業員から相談や通報を直接受けるヘルプラインを設けている。
公共事業の受注活動については、各部門で自主チェックを行い、総務担当役員及び各部門代表者で構成する独占禁止法遵守監視委員会がその報告を受けて監視する二段構えであった。橋梁を中心とする公共事業は公共投資の縮減傾向が続き、市場価格も大幅に下落していた。
- 内容
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鋼橋上部工事は、国土交通省発注分と日本道路公団発注分について公正取引委員会から排除勧告を受け、これを応諾して勧告審決を受けた。刑事では2005年6月15日に東京高等検察庁が起訴している。し尿処理施設建設工事は市町村等が発注するもので、2006年6月12日に大阪地方検察庁が起訴した。水門工事は2006年3月28日の立入調査に始まり、2007年3月の命令に至っている。
課徴金と罰金の額、および一連の事件に係る損失の計上額は、有価証券報告書に記載がない。
- 含意
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鉄構建設事業の連結受注高は2007年3月期に前期比7,621百万円減の42,832百万円となり、営業利益は1,721百万円減の314百万円と84.6%減少した。翌2008年3月期の受注高はコンテナクレーンと橋梁を中心に50.4%増の64,430百万円へ戻り、営業利益も1,562百万円へ回復している。
会社が掲げた再発防止は、コンプライアンス委員会等の機能強化、社内の監査制度の充実、代表取締役による総点検の実施、人事管理体制の見直しであった。新しい機関の設置ではなく、既にある仕組みの運用を締め直す内容が並んだ。
仕組みはあった
この三件が露わにしたのは、体制の欠如ではなく、体制が現場へ届いていなかったことだとみられる。企業行動規準もヘルプラインも独占禁止法遵守監視委員会も、談合が問われた時期を通じて存在した。にもかかわらず、公共発注の三つの工事で同時並行に摘発を受けている。会社が再発防止として掲げたのが新しい機関の設置ではなく、既存の委員会の機能強化と社内監査制度の充実、そして代表取締役による総点検であったのは、この認識の裏返しであろう。規則を足すのではなく、規則が守られているかを誰が見るのかを問い直したのだといえる。
もっとも、業績の面ではこの事件は一過性で終わっている。鉄構建設セグメントの営業利益は2007年3月期に314百万円まで減少したが、翌期には1,562百万円へ戻り、2010年3月期には4,759百万円まで伸びた。45日間の営業停止も、コンテナクレーンが伸びて公共工事の比重が下がっていた事業構成のなかでは致命傷にならなかった。処分の重さと事業の痛みが釣り合わないとき、締め直した運用がどこまで持つのかは、その後の年月でしか確かめられないのかもしれない。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 鋼橋上部工事の排除勧告 | 応諾し、勧告審決を受けた | 国土交通省発注の鋼橋上部工事と、日本道路公団発注の鋼橋上部工工事が対象 |
| 鋼橋上部工事の起訴 | 2005年6月15日 | 公正取引委員会の刑事告発を受け、東京高等検察庁が起訴した |
| 鋼橋上部工事の判決 | 2006年11月 | 東京高等裁判所から有罪判決(罰金刑)を受けた |
| 営業停止処分 | 45日間 | 2007年2月から3月にかけて、鋼構造物工事業に関して受けた |
| し尿処理施設建設工事の命令 | 排除措置命令 | 市町村等が発注するし尿処理施設建設工事の入札に関するもの |
| し尿処理施設建設工事の起訴 | 2006年6月12日 | 公正取引委員会の刑事告発を受け、大阪地方検察庁が会社と関係者1名を起訴 |
| し尿処理施設建設工事の判決 | 2007年4月23日 | 有罪判決(罰金刑)を受けた |
| 水門工事の立入調査 | 2006年3月28日 | 水門工事の入札に係る独占禁止法違反容疑によるもの |
| 水門工事の命令 | 排除措置命令及び課徴金納付命令 | 2007年3月に公正取引委員会から受けた |
| 課徴金・罰金の額 | 記載なし | 命令と判決を受けた事実のみが記され、金額は開示されていない |
| 一連の事件に係る損失 | 記載なし | 特別損失への計上の有無を含め、有価証券報告書に記載がない |
| 再発防止 | コンプライアンス体制の再構築と法令遵守の徹底 | 委員会の機能強化、社内監査制度の充実、代表取締役による総点検、人事管理体制の見直し |
出所:三井造船 有価証券報告書 第103期(2006年3月期)【その他】、第104期(2007年3月期)【対処すべき課題】
三井E&S:鉄構建設セグメントの推移
| (百万円) | 売上高 | セグメント損益 | セグメント資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2002年3月期 | − | − | − | |
| 2003年3月期 | − | − | − | |
| 2004年3月期 | − | − | − | |
| 2005年3月期 | 55,294 | △76 | 55,071 | 第103期の有価証券報告書の前連結会計年度欄から採った |
| 2006年3月期 | 53,700 | 2,036 | 58,437 | 3月28日に水門工事の入札をめぐり公正取引委員会の立入調査を受けた |
| 2007年3月期 | 58,913 | 314 | 52,272 | 連結受注高は15.1%減の42,832百万円。2月から45日間の営業停止処分を受けた |
| 2008年3月期 | 53,787 | 1,562 | 46,326 | 連結受注高はコンテナクレーン、橋梁を中心に50.4%増の64,430百万円 |
| 2009年3月期 | 59,878 | 2,641 | 54,055 | |
| 2010年3月期 | 65,857 | 4,759 | 47,147 | |
| 2011年3月期 | 42,376 | 1,767 | 43,225 | |
| 2012年3月期 | 43,494 | 759 | 46,927 | 翌期に報告セグメントが船舶海洋・機械・エンジニアリングへ組み替えられた |
出所:三井造船 有価証券報告書 第103〜109期【事業の種類別セグメント情報】【セグメント情報】
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