監査等委員会設置会社へ移行(2023年・三井E&Sの決断)

更新:
論点再生後の経営体制をどう縮めるか
三井E&S:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
事業持株会社体制への転換と同じ年に進めた、コンパクトな経営体制への組み替え2023年6月28日、第120回定時株主総会における定款一部変更の決議を経て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。目的として掲げたのは、組織集約・再編に沿ったコンパクトな経営体制への移行を図ること、事業戦略及びリスクのある案件に関しより深い議論を行う環境を整えることの二つである。

何をなぜ決めたか:事業持株会社体制への転換と同じ年に進めた、コンパクトな経営体制への組み替え

概要

2023年6月28日、第120回定時株主総会における定款一部変更の決議を経て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。目的として掲げたのは、組織集約・再編に沿ったコンパクトな経営体制への移行を図ること、事業戦略及びリスクのある案件に関しより深い議論を行う環境を整えることの二つである。

移行時の取締役会は、監査等委員である取締役を除く取締役4名と監査等委員である取締役3名の計7名で構成された。うち社外取締役は3名で、そのうち2名が監査等委員である。

背景

移行は、ひとつづきの組織再編の締めに置かれていた。海外大型EPCプロジェクトの損失で毀損した財務基盤を回復するために2019年に策定した三井E&Sグループ事業再生計画を完遂し、2023年4月1日には事業と経営との距離を縮め、一体となることで戦略の立案・実行スピードを上げることを目的に、純粋持株会社体制を解消した。

100%出資の子会社である三井E&Sマシナリーと三井E&Sビジネスサービスを吸収合併し、商号を三井E&Sへ改めている。造船事業の切り離しも2022年10月に終わり、グループの姿は舶用推進と港湾物流を軸とするものへ変わっていた。

内容

監査役会は社外監査役2名を含む監査役4名で構成されていたが、移行により監査の担い手は取締役会の一員となった。定款上の員数は、監査等委員である取締役を除く取締役が10名以内、監査等委員である取締役が5名以内である。監査等委員を除く取締役の任期は1年とし、信任を株主が確認する機会を増やしている。

報酬限度額は同じ総会で、監査等委員である取締役を除く取締役が年額320百万円、監査等委員である取締役が年額50百万円と決議された。監査等委員会の職務を補助する組織としては、業務執行部門から独立した監査等委員会室に常勤の使用人を置いている。

含意

取締役会の規模は2019年3月期の10名から2020年3月期・2021年3月期には6名まで絞られ、移行後の2024年3月期には8名となった。社外取締役は2名から4名へ増加し、取締役に占める比率は2割から5割に達している。2024年6月26日の第121回定時株主総会では監査等委員である取締役1名が選任され、監査等委員会は4名(うち社外3名)となった。

法律により取締役会の職務とされている重要な業務執行の決定以外の業務執行は、原則として当該業務の担当取締役へ委任している。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役7名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:集約の最後のひと押し
考察

考察:集約の最後のひと押し

監査等委員会設置会社への移行は制度の選択として語られがちだが、この会社の場合は組織を整理していく一連の作業の最後のひと押しであったと推察される。純粋持株会社を解消して事業会社と一つになり、造船から撤退してグループの輪郭を絞り込んだ延長に、監査役会という独立した機関を取締役会の内側へ取り込む判断が置かれた。掲げた目的の一つ目が組織集約・再編に沿ったコンパクトな経営体制への移行であったことは、この順序を素直に示している。

もっとも、機関を一つにまとめることと監督が厚くなることは同じではない。移行の時点で監査等委員である取締役は3名にとどまり、翌年の総会でようやく4名になった。社外取締役の比率は2019年3月期の2割から5割まで上がったが、取締役会そのものが10名から7名へ縮んだ結果でもある。事業再生を終えた会社が次に問われるのは、危機のもとで通った速さと、平時の統治をどう両立させるかであろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

三井E&S:取締役会と監査機関の構成

取締役(名)うち社外取締役率(%)
三井E&S:取締役会と監査機関の構成
(名)取締役うち社外取締役監査役備考
2019年3月期1024監査役4名のうち2名が社外監査役。以下の各期も同じ
2020年3月期624
2021年3月期624
2022年3月期734
2023年3月期73−提出日が移行当日の2023年6月28日。取締役7名のうち3名が監査等委員である取締役
2024年3月期84−移行後の最初の通期。監査等委員である取締役は4名(うち社外3名)
2025年3月期84−監査等委員である取締役4名のうち3名が社外取締役
2026年3月期73−2026年5月27日時点。監査等委員である取締役は4名(うち社外3名)
出所:三井E&Sホールディングス・三井E&S 有価証券報告書 第116〜122期【コーポレート・ガバナンスの状況等】 / 三井E&S コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年5月27日)
出所:三井E&Sホールディングス・三井E&S 有価証券報告書 第116〜122期【コーポレート・ガバナンスの状況等】 / 三井E&S コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年5月27日)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
移行の決議2023年6月28日第120回定時株主総会における定款一部変更の決議による
移行前の機関設計監査役会設置会社監査役会は社外監査役2名を含む監査役4名で構成し、監査役室を置いていた
移行の目的(一)コンパクトな経営体制への移行2023年4月1日の組織集約・再編に沿ったものとして掲げた
移行の目的(二)より深い議論を行う環境の整備事業戦略及びリスクのある案件に関して議論する環境を整えるとした
前提となる組織再編2023年4月1日に事業持株会社体制へ三井E&Sマシナリー及び三井E&Sビジネスサービスを吸収合併し、商号を三井E&Sへ変更
移行時の取締役会取締役7名(うち社外3名)監査等委員である取締役を除く4名(うち社外1名)と、監査等委員である取締役3名
移行時の監査等委員会監査等委員である取締役3名うち常勤の監査等委員である取締役1名、社外取締役2名
定款上の員数取締役10名以内、監査等委員5名以内監査等委員である取締役を除く取締役が10名以内、監査等委員である取締役が5名以内
取締役の任期監査等委員を除く取締役は1年取締役に対する信任を株主が確認する機会を増すことを理由としている
報酬限度額年額320百万円/年額50百万円監査等委員を除く取締役と監査等委員である取締役の別。使用人分給与は含まない
業務執行の委任範囲重要な業務執行の決定以外は担当取締役へ法律により取締役会の職務とされているものを除き、原則として委任する
監査等委員会の補助組織監査等委員会室業務執行部門から独立させ、常勤の使用人を置く。人事は監査等委員会と事前に協議
体制を採用する理由監査機能の実効性の向上と社外取締役による監視経験豊富な社外取締役が経営者の視点で取締役の職務執行を監視する体制とした
移行後の増員2024年6月26日に監査等委員1名を選任第121回定時株主総会。監査等委員会は社外取締役3名を含む4名となった
出所:三井E&S 有価証券報告書 第120期(2023年3月期)・第121期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2023年12月13日)
出所:三井E&S 有価証券報告書 第120期(2023年3月期)・第121期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2023年12月13日)
当時の取締役7名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 三井E&S 有価証券報告書「第120期(2023年3月期)【優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題】」
  • 三井E&S 有価証券報告書「第120期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 三井E&S 有価証券報告書「第121期(2024年3月期)【監査の状況】」
  • 三井E&S コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2023年12月13日)」
  • 三井E&S コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年5月27日)」

次に読む決断

同業他社の状況(重工)

免責事項およびポリシー