取締役会改革
日本の取締役会は長く、業務執行の序列をそのまま延長した場であった。取締役は社内昇進の到達点であり、専務・常務といった肩書きは執行の指揮系統の順位を示していた。監督する立場と監督される立場が同じ経歴を共有している以上、会議は執行の報告と調整に費やされた。しかも株式は取引先どうしで持ち合っていたため、外部の株主が役員構成へ関与する場面もなかった。
経営陣の同質性への批判が向けられたのは、この内向きの役員構成に対してである。1991年のイトマン事件では、乱脈融資を止められなかった取締役の責任が問われた。しかし改革を迫ったのは、内側からの設計の見直しではなく外部からの追及であった。1997年、第一勧業銀行は総会屋への融資の隠蔽が発覚して総務部そのものを廃止し、経営陣が総退陣した。
商法改正で、監督と執行を分ける委員会等設置会社を選択できるようになると、機関設計を組み替える企業が現れた。日本精工は2期連続の最終赤字を受けて監督と執行を分離し、HOYAはROEを軸に米国流の統治へ移行した。どちらも出発点は、業績の説明を外部へ向けて組み直す必要であった。
ただし、機関設計を変えても監督が機能するとはかぎらない。2011年、オリンパスは損失飛ばしを追及した社長を解任し、取締役会が経営者を監督できない実態を露呈させた。関西電力も、2019年の金品受領問題の発覚後に指名委員会等設置会社へ移行した。不祥事が表面化してから機関を組み替える順序は、1997年から変わっていない。
2015年のコーポレートガバナンス・コード以降は、株主が総会で直接行動するようになった。東芝では取締役会議長の再任が否決され、キヤノンの御手洗冨士夫氏は取締役候補を全員男性としたことを問われて賛成率50.59%まで低下した。その結果、取締役の一人ひとりに賛成率という数字が付き、翌年の候補者名簿はその数字を踏まえて作成される。かつて社内の序列で決まっていた席次は、現在では社外の評価で入れ替わる。
財務諸表のどこを見るか
コーポレート・ガバナンスの状況等から読む。監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のいずれを名乗るか、移行した年度はいつかを押さえる。次に取締役の員数、社外取締役の比率、取締役会と各委員会の開催回数・出席率を並べ、会議が実際に動いているかを測る。役員報酬では決定方針、業績連動報酬の割合、算定に用いる指標を確かめる。形だけの移行かどうかは、内部統制報告書の評価結果と、臨時報告書に載る取締役ごとの選任賛成率で裏を取る。