キヤノン 全員男性の取締役会と賛成率低下 取締役候補を全員男性とした人事と、そのあとに続いた取締役会の組み替え
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2023年3月30日の第122期定時株主総会で選任された取締役は5名で、全員が男性だった。内訳は代表取締役会長兼社長CEOの御手洗冨士夫氏、代表取締役副社長CFOの田中稔三氏、代表取締役副社長CTOの本間利夫氏と、社外取締役の齊田國太郎氏・川村雄介氏。取締役の任期は1年で、毎年の総会が信任を問う仕組みになっていた。取締役・監査役・執行役員を合わせた52名のうち女性は2名で、比率は3.8%。その2名はいずれも執行役員であり、取締役会に女性はいなかった。
- 背景
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取締役会の基本方針は、CEO・COO・CFO・CTOといった全社的事業戦略または執行を統括する代表取締役を中心に、経営の健全性を担保するため2名以上かつ3分の1以上の独立社外取締役を加える。5名中2名という当時の構成は、この自ら定めた下限をわずかに満たす水準だった。取締役会の議長はCEOが務め、候補者の指名も代表取締役CEOが推薦し、その公正・妥当性を任意の指名・報酬委員会が確認する手続きである。その委員会の議長もまた、御手洗冨士夫氏自身が務めていた。
- 内容
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2023年8月末日、御手洗冨士夫氏は指名・報酬委員会の委員を退任し、9月1日付で代表取締役副社長CFOの田中稔三氏が就任した。推薦する側と推薦を確認する側に同じ人物が座る構図が、ここで解かれた。
2024年3月28日には取締役会が5名から10名へ広がり、代表取締役3名を含む社内出身者6名と独立社外取締役4名の構成になった。社外取締役として加わった伊藤明子氏は、建設省で同省初の女性局長を務め、消費者庁長官を経た人物で、顧客・消費者視点からの助言と多様な人材の活用促進への助言が期待された。この組み替えは、事業分野の拡大や経営環境の変化に対応し次世代経営体制も考慮した取締役会の構成のあり方として、取締役会で審議・決議されている。
- 含意
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指名・報酬委員会も同じ日に組み替わった。齊田國太郎氏が委員を退き、社外取締役の池上政幸氏・鈴木正規氏・伊藤明子氏が加わって、代表取締役CFO1名・独立社外取締役4名・独立社外監査役1名の計6名となった。それでも株主の視線は緩んでいない。2025年3月28日の総会で御手洗冨士夫氏の取締役選任への賛成率は90.93%と候補者10名のうち最も低く、2026年3月27日の総会では88.91%へさらに下げた。ほかの候補者が94〜98%台に並ぶなかで、1人だけ90%前後に沈む構図が続いている。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
業績ではなく、取締役会の顔ぶれが問うたもの
この一件が照らすのは、経営の信任が業績とは別の座標でも測られるようになった事実だと思われる。2023年3月の総会に諮られた取締役は5名。社外は2名で、会社が自ら定めた「2名以上かつ3分の1以上」という下限をぎりぎり満たすだけの構成だった。候補を推薦するのは代表取締役CEOで、その推薦の公正さを確かめる指名・報酬委員会の議長も、当のCEOその人が務めていた。推薦する側と確認する側が同じ人物だという構図は、手続きとしては完結していても、外から見れば信任の根拠にはなりにくい。
もっとも、会社の動きは速かった。同年8月末にCEOは委員会の委員を退き、翌年3月には取締役会が5名から10名へ、社外取締役が2名から4名へ広がり、女性の社外取締役も加わった。指名・報酬委員会は社外5名とCFO1名の6名になっている。それでも御手洗冨士夫氏への賛成率は、2025年に90.93%、2026年に88.91%と候補者のなかで最も低いまま下がり続けている。ほかの候補者が94〜98%台に並ぶなかでの90%前後は、体制の是正が評価されなかったというより、四半世紀に及ぶ在任そのものが問われ続けていると思われる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
指名の条件とその後の組み替え
指名の条件とその後の組み替え
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象の株主総会 | 2023年3月30日 第122期定時株主総会 | 取締役の任期は選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時まで |
| 選任された取締役 | 5名全員が男性 | 社内出身3名と社外取締役2名。取締役会に女性はいなかった |
| 社外取締役の下限 | 2名以上かつ3分の1以上 | 取締役会の基本方針が定める員数。5名中2名はその下限をわずかに満たす水準 |
| 役員の女性比率 | 3.8%(52名中2名) | 取締役5名・監査役5名・提出日現在在任中の執行役員42名の合計。女性は執行役員の2名 |
| 指名・報酬委員会(当時) | 4名。議長は御手洗冨士夫氏 | 代表取締役会長兼社長CEOが議長を務め、社外取締役2名と社外監査役1名が加わる |
| 指名の手続 | 代表取締役CEOが候補を推薦 | 推薦の公正・妥当性を指名・報酬委員会が確認し、取締役会に議案として提出する |
| CEOの委員退任 | 2023年8月末日 | 9月1日付で代表取締役副社長CFOの田中稔三氏が指名・報酬委員会の委員に就任した |
| 取締役会の拡大 | 2024年3月28日に5名から10名へ | 代表取締役3名を含む社内出身者6名と独立社外取締役4名。議長はCEOが務める |
| 女性取締役の選任 | 2024年3月に伊藤明子氏が社外取締役へ | 建設省で同省初の女性局長、消費者庁長官を務めた。多様な人材の活用促進への助言を期待 |
| 指名・報酬委員会の再編 | 2024年3月28日に6名へ | 齊田國太郎氏が退任し池上政幸氏・鈴木正規氏・伊藤明子氏が就任。社外5名とCFO1名 |
| 会社が示した理由 | 次世代経営体制も考慮した構成のあり方 | 事業分野の拡大や経営環境の変化に対応するものとして、取締役会で審議・決議された |
| 2023年・2024年総会の賛成率 | 手元の公表資料では確認できていない | 議案別・候補者別の賛成率は臨時報告書に載る。手元にあるのは2025年3月総会以降 |
出所:キヤノン株式会社 有価証券報告書 第122期(2022年12月期)・第123期(2023年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】
株主総会における取締役選任議案の候補者別賛成率
キヤノン:株主総会における取締役選任議案の候補者別賛成率
| (%) | 2025年3月28日 第124期総会 | 2026年3月27日 第125期総会 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 御手洗冨士夫氏 | 90.93 | 88.91 | いずれの総会でも取締役候補のうち最も低い。2026年は前年から2.02ポイント下げた |
| 田中稔三氏 | 96.69 | 94.68 | |
| 本間利夫氏 | 97.1 | 94.98 | |
| 小川一登氏 | 97.28 | 91.57 | 2026年3月27日の総会の直後に代表取締役社長COOへ就任した |
| 武石洋明氏 | 97.3 | 96.99 | |
| 浅田稔氏 | 97.27 | 96.98 | |
| 川村雄介氏 | 98.39 | 98.42 | |
| 池上政幸氏 | 98.36 | 98.34 | |
| 鈴木正規氏 | 98.38 | 98.39 | |
| 伊藤明子氏 | 98.62 | 98.46 | 2024年3月に加わった社外取締役。候補者のうち最も高い賛成率が続く |
| 有馬充美氏 | − | 96.39 | 2026年3月27日の総会で新たに選任された社外取締役 |
出所:キヤノン株式会社 臨時報告書(第124期・第125期定時株主総会における議決権行使の結果)
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参考文献
- キヤノン 有価証券報告書「第122期(2022年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】」
- キヤノン 有価証券報告書「第123期(2023年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】」
- キヤノン コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2024年3月15日)」
- キヤノン 臨時報告書「第124期定時株主総会における議決権行使の結果(2025年3月28日開催)」
- キヤノン 臨時報告書「第125期定時株主総会における議決権行使の結果(2026年3月27日開催)」