三井造船との統合が破談(2013年・川崎重工業の決断)

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論点 造船を同業との統合で存続させるか
川崎重工業:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
経営統合構想の白紙撤回と、単独での造船事業の継続

何をなぜ決めたか:経営統合構想の白紙撤回と、単独での造船事業の継続

概要

2013年6月13日、川崎重工業は3名の代表取締役・役付取締役を解職し、三井造船との経営統合交渉を白紙に戻すと決めた。あわせて、4月22日に開示した「本日の一部報道について」を訂正している。

解職されたのは、取締役社長の長谷川聰氏、取締役副社長の髙尾光俊氏、常務取締役で企画本部長の広畑昌彦氏である。3名は代表権と業務執行の職を外れ、社長の監督の下に置かれる非業務執行の取締役となった。

背景

2013年3月期の川重の連結売上高は1兆2,888億円で、そのうち船舶海洋事業は前期から231億円減って903億円だった。全社の7%に届かない規模である。受注は潜水艦1隻とLNG運搬船など5隻で、前期より658億円多い1,057億円に戻っていた。

相手の三井造船は、同じ期の売上高5,770億円のうち3,212億円を船舶海洋部門が占め、当期純損益は82億円の赤字だった。海運市況の低迷で、秋口までは新規案件がほとんど出ない状態が続いたという。

内容

4月22日、一部の報道が両社の統合交渉入りを伝えた。三井造船は同日午前に、自社が発表したものではないとの見解を出し、さらに「そのような事実もない」と重ねて知らせた。

6月13日の臨時取締役会は、3名を除く全取締役の一致で解職を決めた。川重はその理由として、3名が取締役会の大勢に背いて業務執行を押し通そうとした点を挙げている。第190期定時株主総会に出す取締役選任議案も、13名から10名に改めた。

含意

三井造船は6月14日、川重との間では経営統合の可能性を検討していた段階にとどまり、自社として機関決定した事実はないと表明した。破談の発表は、相手方の機関決定を待たずに川重の側から出たことになる。

川重の6月26日提出の有報は、代表者を取締役社長の村山滋氏として出された。村山滋氏は2010年6月から常務取締役として航空宇宙カンパニーを率いてきた人物である。同じ有報で川重は、社外取締役を新たに置いて取締役会の経営監督機能を強めると書いている。三井造船でも、6月27日提出の有報の代表者は田中孝雄氏に替わっていた。

いつ何が起きたか 5件
考察:合意形成という土台
考察

考察:合意形成という土台

この破談では、統合の経済合理性よりも、社内のガバナンスと事業ポートフォリオ観の違いが前面に出たと思われる。経営トップが主導するディールであっても、社内組織における重要人物や、取締役会の合意形成を欠いたまま進めば、株主総会の直前で白紙に戻ることがありえる。全社のなかでマイノリティに位置する事業——川重にとっての造船——の再編では、全社最適を重んじる経営トップの論理と、収益源を守ろうとする個別部門の論理が衝突する形となり、社長解任という事態に至った。

条件面が整う前に社内の合意という土台を欠いたまま進んだことが、社長解任という形で表面化した一例とみることもでき、さらには取締役会において合理的な説明ができなかったことにも問題があった。前のめりの主導側と距離を置く相手側という非対称、社内の反対派、過去の頓挫の記憶——成立に至らなかった案件にも、業界再編や社内組織の力学を読み解く手がかりは多く存在するのだろう。

参考文献

参考文献

参考
  • 川崎重工業 有価証券報告書 第190期(2013年3月期)【対処すべき課題】
  • 川崎重工業 有価証券報告書 第189期(2012年3月期)【役員の状況】
  • 川崎重工業 株主向け通知「第190期定時株主総会招集ご通知」一部修正(2013年6月13日)
  • 川崎重工業 有価証券報告書 第190期(2013年3月期)【業績等の概要】
  • 三井造船 有価証券報告書 第110期(2013年3月期)【業績等の概要】
  • 三井造船 適時開示「当社に関する新聞報道について」(2013年4月22日)
  • 三井造船 適時開示「当社に関する新聞報道について(お知らせ)」(2013年4月22日)
  • 三井造船 適時開示「川崎重工業株式会社の経営統合に関する報道について」(2013年6月14日)
  • 川崎重工業 有価証券報告書 第190期(2013年3月期)【表紙】
  • 三井造船 有価証券報告書 第110期(2013年3月期)【表紙】
  • 川崎重工業 ニュースリリース NO.2013022(2013年6月13日)「代表取締役の異動、役員の異動、業務執行体制の改正等について」

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