この判断で効いたのは、売るか売らないかではなく、何を一つの束として売りに出すかだった。会社全体では500億円から600億円で頓挫した交渉が、HR事業だけを切り出した途端に約1,000億円へ跳ねた。買い手にとって値が付くのは、顧客基盤と収益が確定している部分であって、赤字の開発案件や係争中の訴訟ではない。束のままでは、値が付く部分の価格が値の付かない部分に引きずられる。会社分割は、その引きずりを断つ手続きとして働いた。
売り手に残るものも同じ理屈で決まる。ワークスアプリケーションズが手元に置いたのは、収益がまだ立っていない会計・サプライチェーン事業と、係争中の訴訟であった。売上高は2022年6月期に19億円台まで縮んでいる。それでも同社は4期で黒字を回復した。債務と固定費が消え、訴訟が終わって顧客へ説明できるようになり、二つの製品が納品実績を積んだこと、どれか一つだけでは説明が付かない。人事は人事、会計は会計と顧客が別々に導入する製品構成であったからこそ束を解くことができ、分解できない構成であれば同じ手は打てなかった。