この再建で目を引くのは、赤字部門を一律に切る手法ではなく、稼ぐ事業と失う事業を仕分けたうえで、赤字でも自社の核とみた家庭用オーディオを残し、収支の均衡していた携帯電話をあえて手放した選別の順序にある。会社の内側から見れば、どの事業が稼ぎ、どの事業が失っているかは早くから見えていた。外部から来た経営者であればこそ、その愛着を保ちながらも数字で選別できただろう。
もっとも、業務用無線と車載への転換は、単独のケンウッドを再び高い成長軌道に戻すには至らなかった。成熟したAV業界で規模を確保する道は、2008年の日本ビクターとの経営統合を経て、より大きな再編のなかに置かれていく。危機に瀕した企業が、何を捨て何を残すかをどんな順序で決めるか——2002年のケンウッドの選別は、成長分野に見えた事業を切り、斜陽に見えた本業の一部を残すという、直感とは逆の判断が再建の出発点になり得ることを示している。その判断を下せる人材を、どこから連れてくるかという問いも、あわせて残した。