シャープと業務・資本提携(2007年・パイオニアの決断)

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論点 同業大手の出資で再建の資金を得るか
パイオニア:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
同業大手の出資受け入れと、株式の持ち合いによる関係の構築

何をなぜ決めたか:同業大手の出資受け入れと、株式の持ち合いによる関係の構築

概要

2007年9月20日、パイオニアの取締役会はシャープを割当先とする普通株式30,000,000株の第三者割当増資を決議した。同じ日にシャープも取締役会で、自己株式10,000,000株を19,750百万円でパイオニアへ割り当てると決めている。両社は同月に業務・資本提携に関する合意書を結び、12月に資本提携を実行した。決断の時点で社長を務めていたのは、2006年1月に代表取締役社長へ就任した須藤民彦社長である。

提携の目的は、次世代DVD、ネットワーク関連、カーエレクトロニクス、映像の4分野で互いの経営資源を使い、新しい事業を生み出すことに置いた。双方の部品と製品を積極的に採用し、取引を拡大することも目的に掲げた。払込みを終えた時点で、シャープは発行済株式総数の14.3%を持つ主要株主となった。

背景

提携の前、パイオニアは当期純損失を3期続けて計上していた。損失は2005年3月期が8,789百万円、2006年3月期が84,986百万円、2007年3月期が6,761百万円で、3期の合計は100,536百万円に達する。2004年3月期には24,838百万円の当期純利益を上げており、損益はその翌期から赤字に転じたことになる。

この間、パイオニアはプラズマディスプレイの生産を自社で抱えていた。2004年9月にNECプラズマディスプレイの発行済株式の100%を取得し、パイオニアプラズマディスプレイへ商号を変更している。2007年6月には所沢事業所と大森事業所の一部を売却し、ホームエレクトロニクス事業を新設の川崎事業所に集約した。

内容

新株の発行価額は1株1,385円、総額は41,550百万円で、うち20,775百万円を資本金に組み入れた。払込期日は2007年12月20日で、発行済株式総数は210,063千株となった。調達した資金は運転資金等に充て、具体的にはシャープとの提携や共同開発に関わる資金の需要に振り向ける予定とした。

パイオニアの側も、シャープ株式10,000,000株を19,750百万円で取得した。受け入れた出資と支払った代金を差し引くと、提携で手元に残った現金は純額で216億円となる。2008年3月期末の大株主の状況では、シャープが所有株式30,000千株、所有比率14.28%で第1位に立った。

含意

提携の後も、赤字の中心だったディスプレイ事業の立て直しは別の手で進めた。パイオニアはプラズマディスプレイパネルの自社生産から撤退すると決め、2009年夏から松下電器産業のパネルの供給を受ける包括提携契約を2008年6月に結んだ。シャープからは液晶テレビの供給を受け、2008年8月から欧州で売り出す計画とした。2008年11月には小谷進氏が代表取締役社長に就任し、2009年3月期には当期純損失130,529百万円を計上した。

業務提携として形になったのは光ディスクである。2009年6月に光ディスク事業の合弁契約を締結し、同年11月に合弁事業を始めた。一方、資本の結びつきは薄れた。2010年3月の新株発行でシャープは主要株主に該当しなくなり、2014年9月にはシャープが変更報告書を出した。2015年3月期末には、大株主の状況からも、パイオニアの特定投資株式からもシャープの名が消えた。

いつ何が起きたか 12件
考察:資本の結びつきは7年で解消
考察

考察:資本の結びつきは7年で解消

なぜ同業のシャープから出資を受けたのか。パイオニアは2007年3月期までの3期で、合計100,536百万円の当期純損失を計上していた。赤字の会社が借入れで資金を調達すれば、利払いと返済の負担が重くなる。シャープを割当先にすれば、41,550百万円の払込みを受けながら、映像やカーエレクトロニクスの開発でも協力の相手を得られる。資金と事業の手当てを一度に済ませられる点で、同業大手の出資は筋の通った選択だったと思われる。

もっとも、この提携は株式の持ち合いを伴った。パイオニアは受け入れた41,550百万円のうち19,750百万円をシャープ株の取得に充て、手元に残った現金は純額で216億円にとどまる。持ち合いは関係を固める一方で、相手の株価が下がれば自社の資産の価値も下がる。しかも提携の4分野に、赤字の中心だったプラズマディスプレイの立て直しは入っていなかった。プラズマからの撤退は、松下電器産業との別の契約で進めることになった。

結果からみると、資本提携としては失敗だった。パイオニアが持つシャープ株の貸借対照表計上額は、取得時の19,750百万円から2013年3月期末には2,720百万円まで下がった。2009年3月期には当期純損失130,529百万円を計上し、2010年3月の新株発行でシャープは主要株主に該当しなくなった。2014年9月にはシャープが変更報告書を出し、資本の結びつきは7年で解消している。業務の面で長く続いたのは、2009年11月に始めた光ディスクの合弁事業であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

パイオニア:パイオニアが持つシャープ株式の計上額

シャープ株式の貸借対照表計上額(百万円)

取得額19,750百万円の株式が5年で2,720百万円になった

パイオニア:パイオニアが持つシャープ株式の計上額
(百万円) シャープ株式の貸借対照表計上額 備考
2008年3月期 16,940 10,000,000株を19,750百万円で取得した期
2009年3月期 7,760
2010年3月期 11,690
2011年3月期 8,250
2012年3月期 6,040
2013年3月期 2,720 株式数は10,000,000株のまま。2015年3月期末には記載なし
出所:パイオニア 有価証券報告書 第62〜63期【有価証券明細表】 / パイオニア 有価証券報告書 第64〜67期【コーポレート・ガバナンスの状況】
出所:パイオニア 有価証券報告書 第62〜63期【有価証券明細表】 / パイオニア 有価証券報告書 第64〜67期【コーポレート・ガバナンスの状況】

パイオニア:営業収入と当期純損益の推移

営業収入(百万円)当期純損益率(%)
パイオニア:営業収入と当期純損益の推移
(百万円) 営業収入当期純損益 備考
2003年3月期 664,82816,078 米国会計基準
2004年3月期 684,74924,838 米国会計基準
2005年3月期 711,042△8,789 米国会計基準
2006年3月期 754,964△84,986 米国会計基準
2007年3月期 797,102△6,761 米国会計基準。3期連続の当期純損失
2008年3月期 774,477△17,992 米国会計基準。シャープの第三者割当の払込みは12月
2009年3月期 558,837△130,529 この期から日本基準
2010年3月期 438,998△58,276 この期から営業収入を売上高と表示
2011年3月期 457,54510,350
2012年3月期 436,7533,670
2013年3月期 451,841△19,552
出所:パイオニア 有価証券報告書 第60期・第62期・第67期【主要な経営指標等の推移】
出所:パイオニア 有価証券報告書 第60期・第62期・第67期【主要な経営指標等の推移】

パイオニア:シャープの持株比率の推移

シャープの持株比率は14.28%から9.19%へ下がった

パイオニア:シャープの持株比率の推移
(%) シャープの持株比率 備考
2008年3月期 14.28 2007年12月の第三者割当で30,000千株を引き受け、第1位
2009年3月期 14.28
2010年3月期 9.19 2010年3月の新株発行で主要株主に該当しなくなった
2011年3月期 9.19
2012年3月期 9.19
2013年3月期 9.19
出所:パイオニア 有価証券報告書 第62〜67期【大株主の状況】
出所:パイオニア 有価証券報告書 第62〜67期【大株主の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • パイオニア 有価証券報告書 第62〜67期【大株主の状況】
  • パイオニア 有価証券報告書 第62〜63期【有価証券明細表】
  • パイオニア 有価証券報告書 第64〜67期【コーポレート・ガバナンスの状況】
  • パイオニア 有価証券報告書 第60期・第62期・第67期【主要な経営指標等の推移】
  • パイオニア 有価証券報告書「第62期(2008年3月期)」
  • パイオニア 有価証券報告書「第63期(2009年3月期)」
  • パイオニア 有価証券報告書「第64期(2010年3月期)」
  • パイオニア 有価証券報告書「第67期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • パイオニア 有価証券報告書「第69期(2015年3月期)【大株主の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況】」

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