増田通二氏が変えたのは売り物ではなく、値段の付け方であった。小売業は商品もサービスも建物もすべて直したところで、客に染みついた印象が残れば効かない。その診断が正しいなら、直すべきは店ではなく稼ぎ方そのものになる。自社を賃料で食ってる不動産屋と規定し、駅から遠ければ安いという当たり前から値づけを組み直している。
もっとも、貸す側に回ったことで新たな負担も負った。預かり保証金112億7600万円は固定負債の70%強を占め、長短借入金も65億4000万円まで増えて金融収支は支払い超過へ転じた。出店を続けるほど預かり金と利息が同時に膨らむ構造であり、賃料収入の伸びがそれを上回るかは転換の時点で見通せなかった。増田氏自身も1988年の利益供与の発覚を経て翌年に去った。値づけの原理は残り、それを立てた人は残らなかっただろう。