この判断が示すのは、海外で負った損失を資本の側から始末した点である。増資で穴を埋めれば引受量は保てるが、損失を生んだ引き受けの構えはそのまま残る。払込資本金75万円の半額を切り捨てる処理は、失った約50万円を帳簿の上で確定させ、会社の規模をいったん損失の実態へ合わせる作業にあたる。あわせて採った年度別計算は、期をまたいで曖昧になっていた損益を毎年締める仕組みであり、次の損失を早く見つけるための装置だった。資本を縮め、勘定を締め、引き受けを選ぶ——三つが一組で動いている。
もっとも、この縮小が守りだけに終わらなかったところに特徴がある。英国と欧州大陸の営業をウィリス商会へ委ね、その商会を通じてロンドンの保険者と再保険特約を結んだことで、同社は内地の他社にない元受消化力を手にした。自ら現地で引き受ける力を放棄した先で、他人の担保力を借りて引き受ける力を得たことになる。26歳の社員を送り出した会社が、5年後に資本を半分へ切り下げ、なお海運界の成長を支える立場に転じた経緯は、縮小と拡大が同じ判断の表裏でありうることを示しているのだろう。