バングラデシュに製造子会社ANBD社を設立(2024年・アートネイチャーの決断)

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論点生産をフィリピン一国に依存し続けるか
アートネイチャー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
フィリピン2工場への生産の集中を改める、第3の国での自社工場の建設

何をなぜ決めたか:フィリピン2工場への生産の集中を改める、第3の国での自社工場の建設

概要

2024年1月、アートネイチャーはバングラデシュのナラヤガンジ県アライハザール地区に、製造子会社ARTNATURE BANGLADESH LTD.(ANBD社)を設立した。目的に掲げたのは、生産拠点の一国集中を分散することと、今後の事業拡大に備えて生産ラインを確保することの2つである。当時の代表者は代表取締役会長兼社長の五十嵐祥剛氏だった。

新工場の建設費は総額1,517百万円で、所要資金は全額を自己資金で充当した。工場は2026年3月期に稼働を始め、稼働した年の経営方針でバングラデシュ工場を「次世代の主力拠点」と位置づけた。

背景

オーダーメイドのかつらは、店舗で頭の形を計測したうえで、フィリピンの製造子会社2社に製造を委託してきた。最初の自社工場は、2002年9月に製造委託先のユーロテック社(現 ANフィリピン社)の株式60%を取得して子会社化したもので、2008年2月には全額出資のANMP社を設立して2拠点体制とした。

2023年12月末の従業員はANフィリピン社325人、ANMP社1,127人である。女性向け既製品ウィッグは中国・ベトナム・インドネシア・バングラデシュ・ミャンマーの委託先でも生産していたが、主力のオーダーメイド品は、ANBD社を設けるまでの22年間フィリピン一国の自社工場で生産し続けていた。

内容

投資は3期にわたって段階的に実行した。連結子会社の設備投資は、ANMP社が中心だった2023年3月期までは年62百万円以下にとどまっていたが、ANBD社が中心になった2024年3月期に375百万円、2025年3月期に781百万円、2026年3月期に570百万円となった。ANBD社の資本金も266,000千タカから1,074,520千タカ、1,701,788千タカへと毎期増資している。

新工場の建設は2024年1月に着手し、2025年12月の完成を予定した。目的は生産拠点の分散と毛髪製品の生産能力の拡大である。ANBD社の事業は、2025年3月期までの「製造を準備中」から、2026年3月期には「製造している」に変わった。

含意

新工場の稼働は、フィリピンの拠点の見直しにつながった。2026年10月15日の取締役会で、ANフィリピン社の全株式を譲渡することを決議した。理由は「バングラデシュ工場の稼働に伴う生産体制の抜本的な見直しの一環」で、異動は2026年12月1日の予定である。

譲渡が済めば、2002年に自社工場の保有を目的に取得した最初の拠点が連結から外れ、製造子会社はANMP社とANBD社の2社になる。分散を掲げた新工場が、フィリピンの工場の削減につながった。ANMP社の従業員は2024年12月末に967人まで減少し、2025年12月末は1,012人だった。

いつ何が起きたか12件
当時の取締役8名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:分散の先にあった集約
考察

考察:分散の先にあった集約

なぜ新しい国に工場を建設したのか。生産能力を拡大するだけなら、2008年に設けたANMP社の設備を増強すれば足りたはずである。それでもバングラデシュを選んだのは、主力のオーダーメイドのかつらを22年間フィリピン一国で生産してきたことを、事業の弱点とみたからだと考えられる。一国で災害や政情の変化が起きれば、店舗への製品の供給が途絶える。しかもバングラデシュには、既製品ウィッグの委託先がすでにあった。生産を委託した実績のある国なら、自社工場の立ち上げも進めやすいと判断したとみられる。

もっとも、分散という説明が当てはまるのは工場が稼働するまでである。稼働した年の経営方針は、バングラデシュ工場を次世代の主力拠点に育て、生産拠点を最適化するというものだった。主力拠点を新しい国へ移管するなら、フィリピンの2工場は守る対象から見直す対象に変わる。2026年10月に決めたANフィリピン社の全株譲渡は、その最初の一手とみられる。拠点を増やしてリスクを分散する投資は、同時に拠点を絞り込む準備でもあった。

成果はまだ業績に表れていない。売上原価率は設立前の2023年3月期に32.5%だったが、2025年3月期は33.8%、新工場が稼働した2026年3月期も33.2%と、設立前の水準を上回っている。ANフィリピン社を譲渡した後の2028年3月期以降に、売上原価率が設立前の水準を下回るかどうかが、この決断の成否を分けることになる。分散の効果は、次に災害や政情の変化が起きたときに初めて確かめられる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る3表

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図と表

アートネイチャー:設備投資額の推移(連結子会社の分)

連結子会社の設備投資(百万円)提出会社の設備投資(百万円)

子会社の設備投資は62百万円から781百万円まで増加した

アートネイチャー:設備投資額の推移(連結子会社の分)
(百万円)連結子会社の設備投資設備投資額合計備考
2019年3月期181,390子会社分はANMP社が中心
2020年3月期911,191
2021年3月期51885
2022年3月期571,359
2023年3月期621,410
2024年3月期3752,0892024年1月にANBD社を設立。子会社分はANBD社が中心
2025年3月期7812,831新工場の建設費は総額1,517のうち981を支払済み
2026年3月期5702,384新工場が稼働を開始
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【設備投資等の概要】
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【設備投資等の概要】

アートネイチャー:フィリピン2工場の従業員数

ANMP社(人)ANフィリピン社(人)

ANMP社の従業員は2024年12月末に967人まで減少した

アートネイチャー:フィリピン2工場の従業員数
(人)ANフィリピン社ANMP社備考
2019年3月期280840各社の決算日(12月31日)現在。臨時雇用者は含まない
2020年3月期2791,177
2021年3月期3161,215
2022年3月期3091,135
2023年3月期3291,174
2024年3月期3251,1272023年12月末の人数。ANBD社の設立は翌月
2025年3月期329967
2026年3月期3291,012ANフィリピン社は2026年12月に譲渡の予定
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【主要な設備の状況】(在外子会社)
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【主要な設備の状況】(在外子会社)

アートネイチャー:売上高と売上原価率の推移

売上高(百万円)売上原価率(%)

新工場が稼働した期の売上原価率は33.2%で、設立前より高い

アートネイチャー:売上高と売上原価率の推移
(百万円)売上高売上原価備考
2019年3月期37,98511,756
2020年3月期39,48412,320
2021年3月期35,86811,956
2022年3月期40,43712,698
2023年3月期43,20914,053売上原価率32.5%
2024年3月期42,85014,134売上原価率33.0%
2025年3月期43,34014,646売上原価率33.8%
2026年3月期44,60014,803新工場が稼働。売上原価率33.2%
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【連結損益計算書】
出所:アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【連結損益計算書】
当時の取締役8名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57期(2024年3月期)【沿革】【関係会社の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57期(2024年3月期)【表紙】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第58期(2025年3月期)【設備の新設、除却等の計画】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)【事業の内容】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第58期(2025年3月期)【事業の内容】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)【沿革】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57期(2024年3月期)【主要な設備の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第55期(2022年3月期)【事業の内容】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期(2019年3月期〜2026年3月期)【設備投資等の概要】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57〜59期(2024年3月期〜2026年3月期)【関係会社の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)【企業の概況】【主要な設備の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第58期(2025年3月期)・第59期(2026年3月期)【主要な設備の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57期(2024年3月期)【沿革】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第57期(2024年3月期)【設備投資等の概要】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第58期(2025年3月期)【主要な設備の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第58期(2025年3月期)【設備投資等の概要】【関係会社の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)【事業の内容】【関係会社の状況】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【設備投資等の概要】
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【主要な設備の状況】(在外子会社)
  • アートネイチャー 有価証券報告書 第52〜59期【連結損益計算書】
  • アートネイチャー 臨時報告書「臨時報告書(特定子会社の異動)」
  • アートネイチャー 有価証券報告書「第57期(2024年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【事業等のリスク】」
  • アートネイチャー 有価証券報告書「第58期(2025年3月期)【設備の新設、除却等の計画】【設備投資等の概要】」
  • アートネイチャー 有価証券報告書「第59期(2026年3月期)【事業の内容】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【主要な設備の状況】」

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