日本マクドナルド ビジネスリカバリープランの始動 期限切れ鶏肉問題で崩れた客足を、戦略的閉店と店舗改装で2年かけて取り戻すまで
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2014年7月の上海福喜食品の期限切れ鶏肉問題と、続く異物混入で客足が引いた。既存店売上高は2014年に11.2%、2015年に15.2%減り、売上高は2013年の2,604億41百万円から2015年には1,894億73百万円まで減少した。2期続けての赤字で、2015年12月期の純損失は349億51百万円に達した。
サラ・カサノバ社長が2015年4月16日に公表したビジネスリカバリープランは、よりお客様にフォーカスしたアクション・店舗投資の加速・地域に特化したビジネスモデル・コストと資源効率の改善の4本柱からなる。一時的な投資および費用は通期見込255億円に対し228億円を計上した。
- 背景
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店舗網は問題の前から縮んでいた。直営店舗数は2010年末の1,337店から2014年末の1,009店へ減り、代わってフランチャイズ店舗が1,965店から2,084店へ増えている。合計では3,302店から3,093店へ209店の純減で、身軽になる一方で本社が直接握る売り場は減っていた。
収益の弱まりも先行していた。営業利益は2010年12月期の281億35百万円から2013年12月期には115億24百万円へ半分以下になり、2013年の既存店売上高はすでに6.2%の減少だった。期限切れ鶏肉問題は、この下り坂の途中で起きている。
- 内容
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2015年12月期に計上した一時的な費用の内訳は、フランチャイズ関連の財務施策135億円、店舗投資の加速44億円、減損損失35億円、マーケティング費用等の投資8億円、早期希望退職制度6億円である。うち73億円は特別損失に落とした。
店舗では、長期的な成長が見込めない131店舗の戦略的閉鎖を決め、そのうち101店舗を2015年中に閉じた。同じ年に401店舗を改装し7店舗をリビルドして、2018年末までに9割超をモダン化する計画に資源を配分した。資金は短期借入れ50億円と長期借入れ220億円で手当てしている。
- 含意
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2016年12月期の既存店売上高は20.0%増、売上高は2,266億46百万円まで戻り、営業利益69億30百万円・親会社株主に帰属する当期純利益53億66百万円で2期ぶりの黒字となった。翌2017年12月期も既存店売上高は12.2%伸び、当期純利益は240億24百万円に達している。
減損損失は2014年12月期の77億61百万円、2015年12月期の35億42百万円から、2016年12月期には2億86百万円へ減少した。店舗数は2015年末の2,956店を底に2,900店前後で横ばいとなり、閉じて絞るやり方は2年で終えている。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
品質危機という決壊点と、店舗を閉じて縮小する再建
この判断の核心は、期限切れ鶏肉問題を単発の不運としてではなく、すでに弱っていた事業の決壊点として扱った点にある。営業利益は2010年12月期の281億35百万円から2013年12月期の115億24百万円へ半減し、既存店売上高はその2013年に6.2%減っていた。海の向こうの一工場の不正が客足を直撃したとき傷が深く広がったのは、供給網の一点の綻びを吸収する体力を会社がすでに失っていたからだと思われる。ビジネスリカバリープランが謝罪や品質管理の再徹底にとどまらず、131店舗の閉鎖と401店舗の改装という店舗網の作り直しへ及んだのは、そこを見ていたからだろう。
もっとも、この再建は伸ばす再建ではなく、閉じて絞る再建だった。合計店舗数は2015年末の2,956店を底として2,900店前後で止まり、2020年末でも2,924店と危機前の3,093店には戻っていない。売上高が2018年12月期に2,722億57百万円と危機前の水準を超えたのは、店を増やしたからではなく1店あたりの売上を戻したからである。品質の管理は末端の点検にとどまらず、危機を吸収できるだけの店舗と収益の厚みを平時に保てるかという問題として残る。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
再建の条件
再建の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 発端 | 2014年7月の上海福喜食品の問題 | 中国製チキンの販売を停止し全てタイ製へ切り替え。既存店売上高は2014年に11.2%減 |
| 再建計画の公表 | 2015年4月16日 | ビジネスリカバリープラン。客へのフォーカス・店舗投資・地域モデル・コスト効率の4本柱 |
| 一時的な投資および費用 | 228億円 | 通期見込は255億円。経常利益影響額155億円と特別損失73億円の合計 |
| うちフランチャイズ関連の財務施策 | 135億円 | 全額が経常利益への影響。通期見込は126億円で唯一の上振れ項目 |
| うち店舗投資の加速 | 44億円 | 経常利益影響額13億円と特別損失31億円。通期見込58億円に対し14億円下回る |
| 減損損失 | 3,542百万円 | 2014年12月期は7,761百万円。店舗資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額 |
| 店舗閉鎖損失 | 2,609百万円 | 店舗閉鎖損失927百万円と店舗閉鎖損失引当金繰入額1,681百万円の合計 |
| 早期希望退職制度 | 550百万円 | 早期退職制度関連費用として特別損失に計上。支払額は530百万円 |
| サプライチェーン契約精算損失 | 1,961百万円 | 2015年12月期第4四半期に精算で合意し特別損失へ計上 |
| 戦略的閉店 | 131店舗 | 長期的な成長が見込めない店舗が対象。うち101店舗を2015年中に閉鎖 |
| 店舗数 | 2,956店 | 2014年末は3,093店。新規出店16店に対し閉店153店で137店の純減 |
| 店舗の改装 | 401店舗 | リビルド7店舗を併せて実施。2018年末までに90%以上をモダン化する計画 |
| 組織の見直し | 地区本部制(3地区) | 2015年6月に東日本・中日本・西日本の地区本部制を導入 |
| 資金調達 | 270億円 | 短期借入れによる収入50億円と長期借入れによる収入220億円 |
| 回復の時期 | 2016年12月期 | 既存店売上高は20.0%増、営業利益69億30百万円で2期ぶりの黒字 |
出所:日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第44期(2014年12月期)・第45期(2015年12月期)・第46期(2016年12月期)
業績と減損損失の推移
日本マクドナルド:業績と減損損失の推移
| (百万円) | 売上高 | 営業損益 | 減損損失 | 当期純損益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2010年12月期 | 323,799 | 28,135 | 2,333 | 7,864 | 既存店売上高は4.5%増で7年連続の増収 |
| 2011年12月期 | 302,339 | 28,182 | 37 | 13,298 | 既存店売上高は1.0%増。東日本大震災の影響で第3四半期まで減少傾向 |
| 2012年12月期 | 294,710 | 24,780 | 113 | 12,870 | 既存店売上高は3.3%減。既存店客数は2.2%増 |
| 2013年12月期 | 260,441 | 11,524 | 1,216 | 5,138 | 既存店売上高は6.2%減。営業利益は3年で6割減った |
| 2014年12月期 | 222,319 | △6,714 | 7,761 | △21,843 | 既存店売上高は11.2%減。上海福喜問題関連損失2,294百万円を別途計上 |
| 2015年12月期 | 189,473 | △23,440 | 3,542 | △34,951 | 既存店売上高は15.2%減。ビジネスリカバリープランの費用228億円を計上 |
| 2016年12月期 | 226,646 | 6,930 | 286 | 5,366 | 既存店売上高は20.0%増。店舗閉鎖損失引当金戻入額582百万円を特別利益へ |
| 2017年12月期 | 253,640 | 18,912 | 121 | 24,024 | 既存店売上高は12.2%増。当期純利益は上場来最高を更新 |
| 2018年12月期 | 272,257 | 25,045 | 253 | 21,939 | |
| 2019年12月期 | 281,763 | 28,018 | 149 | 16,885 | |
| 2020年12月期 | 288,332 | 31,290 | 438 | 20,186 | 既存店売上高は2015年第4四半期から21四半期続けてプラス |
出所:日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第40〜50期(連結損益計算書・業績等の概要)
店舗数の推移
日本マクドナルド:店舗数の推移
| (店) | 直営店舗数 | フランチャイズ店舗数 | 合計店舗数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2010年12月期 | 1,337 | 1,965 | 3,302 | 直営から転換した店舗が期中に176店 |
| 2011年12月期 | 1,269 | 2,029 | 3,298 | |
| 2012年12月期 | 1,105 | 2,175 | 3,280 | 直営店舗の区分移行が183店で最大 |
| 2013年12月期 | 1,013 | 2,151 | 3,164 | 閉店182店に対し新規出店は66店 |
| 2014年12月期 | 1,009 | 2,084 | 3,093 | 戦略的閉店を76店舗実施し店舗ポートフォリオを整理 |
| 2015年12月期 | 954 | 2,002 | 2,956 | 新規出店16店、閉店153店。131店舗の戦略的閉鎖のうち101店をこの年に実施 |
| 2016年12月期 | 939 | 1,972 | 2,911 | 閉店51店。既存店舗555店の改装にリソースを寄せた |
| 2017年12月期 | 926 | 1,972 | 2,898 | 閉店24店。減少幅は前年の半分以下に |
| 2018年12月期 | 909 | 1,990 | 2,899 | 新規出店21店が閉店20店を上回り、5年ぶりに純増 |
| 2019年12月期 | 886 | 2,024 | 2,910 | |
| 2020年12月期 | 858 | 2,066 | 2,924 |
出所:日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第40〜50期(業績等の概要・店舗数の状況)
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参考文献
- 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第44期(2014年12月期)【業績等の概要】【連結損益計算書】」
- 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第45期(2015年12月期)【業績等の概要】【連結損益計算書】【設備の状況】」
- 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第46期(2016年12月期)【業績等の概要】」
- 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第50期(2020年12月期)【大株主の状況】」