TBU導入と企業風土改革(1995年・テルモの決断)

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論点 事業戦略より先に企業風土を変えるか
テルモ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
テルモ・ビジネス・ユニットの導入を軸とした企業風土の立て直し

何をなぜ決めたか:テルモ・ビジネス・ユニットの導入を軸とした企業風土の立て直し

概要

社員一人ひとりが主役となる"アソシエイト経営"を掲げ、事業戦略よりも企業風土の改革を優先させた経営判断である。

背景

研究開発・生産・営業が別会社のように分かれた縦割り組織で部門間の壁が厚く、長くカリスマ経営者の下にあったことで指示待ちの体質が染みついていた。技術進歩の速いカテーテル分野で製品化の遅れが目立ち、1992年3月期には連結で赤字を計上していた。

内容

事業部制ではなく、機能別組織を残したまま製品群ごとに横断チームを組むTBUを採り、メンバーが二人の上司を持つ煩雑な仕組みをあえて選んだ。和地氏は答えをトップダウンで与えず、全国を回って社員と対話し、各自に考えさせることで自律的に動く社員を育てようとした。

含意

カテーテル事業が短期間でシェアを伸ばし、連結売上高・純利益とも和地氏就任の前後で大きく拡大した。基盤ビジネスと先端分野を両輪とする収益構造が整い、1999年の3M人工心肺買収など海外M&Aへ乗り出す土台となった。

いつ何が起きたか 6件
考察:組織図より人の動き方に賭ける
考察

考察:組織図より人の動き方に賭ける

テルモのこの十年は、事業の中身を入れ替える前に、まず社員の動き方を変えた点に特徴があるだろう。TBUという煩雑な仕組みは、効率だけを見れば欠点の多い設計だが、二人の上司のあいだで自ら判断する経験を社員に強いる装置でもあった。答えを与えず考えさせるという和地氏のやり方は、短期には混乱を招いても、指示待ちの体質を内側から溶かす作用を持っていたとみられる。組織図の巧拙よりも、そこで人がどう動くかに賭けた改革であったといえる。

一方で、風土改革の成果を業績の数字だけで測るのは難しい。売上高や純利益の伸びには、カテーテルなど市場そのものの成長や、後の海外買収の寄与も混じっている。TBUがどこまで直接の要因であったかを切り分けることはできない。ただ、基盤ビジネスで稼ぎながら先端へ投じるという和地氏の収益設計は、その後のテルモが買収を重ねて治療領域を広げていく時期の土台になったと推察される。風土改革が事業構造の転換にどう接続したのかは、なお通史のなかで見届ける価値がある論点である。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
参考文献

参考文献

参考
  • テルモ 有価証券報告書(1992年3月期・連結)
  • テルモ 有価証券報告書(1995年3月期・連結)

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