テルモの直近の動向と展望
テルモの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
ポートフォリオ見直し242億円の前倒し処理
2024年6月、佐藤慎次郎の後任として鮫島光が代表取締役社長CEOに就任した。鮫島体制の最初の大きな経営判断は、GS26最終年度の悪影響を排除するためのポートフォリオ見直しの前倒し集中実施にある。FY24の一時費用は当初の80億円予想から242億円へ拡大した。内訳には心臓血管事業の再編費用、製薬企業との新規受託製造プロジェクトの双方合意停止に伴う建設仮勘定減損、血液・細胞テクノロジー生産設備の減損などが含まれ、複数案件を一括して処理する判断だった。経営交代の直後に不採算案件を一括して損失計上する選択は、新体制が次期中計の出発点から背負う負担を軽くする定石でもある。
同社の萩本氏は「80億円からの拡大は、GS26最終年度に悪影響を残さないよう早期対応した結果。資産見直しも含め多くの案件が俎上に載った」(決算説明会 FY25)と説明した。アナリストからは、好調な数字の段階で費用を投じて構造を変えるのも経営判断の一形態だとする理解も示され、来期以降の一時費用剥落による増益効果が市場の関心となった。FY24の売上が過去最高を更新するなかで費用の前倒し処理を行うのは、本業の余力があるうちに構造調整を済ませる意図の表れでもある。GS26で打ち出した3カンパニー体制の枠組みを維持しつつ、不採算事業を切り離してリソースを成長領域に再配分する作業が、この一時費用に集約されている。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY25
- 決算説明会 FY25-2Q
CDMO海外展開とM&Aの再起動
2025年5月、テルモはWuXi Biologicsからドイツ・レバークーゼン充填工場(旧Bayer拠点)を買収し、欧州のCDMOフットプリントを獲得した。CDMO事業は従来日本国内の生産拠点中心だったが、需要地に近接したキャパシティ確保の必要性から海外展開に踏み切った。欧州の製薬顧客にとっては域内充填能力の有無が発注先選定の条件となりやすく、現地拠点を持たないままでは案件獲得に限界があった。日本から主要人財を送り込み、技術シナジーを追求する方針を示した。鮫島社長は「CDMOを本格的に海外展開させていきたい。欧州は非常に大きく重要なマーケットでフットプリント獲得が狙い」(決算説明会 FY25)と買収意義を説明した。
鮫島体制ではM&Aを成長戦略の中核に据え、心臓血管分野とCDMOを買収候補領域として示している。2018年のクイレム・メディカル前後を最後に大型ディールが途絶えており、2018年以降の停滞への市場の懸念に対し、レバークーゼン買収はその回答という位置づけとなる。M&Aの評価軸は医療進化・QOL向上、自社の差別化、収益成長貢献の3つで、タックイン・ボルトオン双方を想定する。大型ディールだけでなく、小粒でも既存事業に早く溶け込む案件も同等に狙う構えで、買収規模の選択肢を広く取る点が鮫島体制の特徴となっている。今後はアジア・米州での追加買収も視野に入れ、複数の製薬メーカーと交渉中とされる。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY25
- 決算説明会 FY25-2Q
関税リスクとBeyond GS26の成長領域
米国関税の営業利益インパクトは約8%(170億円規模)と試算される。日本→米国輸出は当初10%から7月以降24%、米→中は10%ベースで90日後145%復帰前提の計算によるもので、医療機器業界全体で価格転嫁の実現性が焦点となるなか、テルモは長期契約があり即時転嫁は難しいが可能な限り市場転嫁する方針を示した。日本からの輸出比率が相対的に高い製品群を抱えていることが、日米関税の影響を受けやすい構造を生んでいる。同業オリンパスの3%試算と比べて高く、アナリストからは在庫状況や価格転嫁可能性への依存の大きさが指摘された。産業構造上、長期契約比率の高さが転嫁の足かせとなる。
Beyond GS26の成長領域としては、静脈デバイスへの本格参入、抗アルツハイマー薬レケンビ関連、Rikaのプラットフォーマー化の3点が挙げられている。同社の長田氏は「静脈は1品2品で勝負する戦略ではなく、幅広いパイプラインでDVTと肺塞栓両市場を攻める」(決算説明会 FY25-2Q)と述べ、Penumbra・Inari等が先行する群雄割拠の領域に、動脈で培ったアクセス技術と幅広いパイプラインで後発参入する方針を示した。3つの領域はいずれも自前開発・買収・既存顧客基盤の拡張という手段の異なる柱で構成されており、次期計画期間の成長シナリオが単一のプロダクトに依存しない構えに入っている。鮫島社長はBeyondの規模感ではレケンビとRikaのカスタマーベース拡大が最も注目と述べ、買収と既存技術の組み合わせで次期計画期間の成長を構想している。
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- 決算説明会 FY25
- 決算説明会 FY25-2Q