SOMPOホールディングス櫻田謙悟氏の社長就任と損保2社合併:2期連続の赤字を受けて発足時のCEO体制を解き、事業会社2社を並存させる建付けを捨てて合併と一体化運営へ踏み込んだ選択

更新:

時期 2012年4月
意思決定者(推定) 櫻田謙悟・二宮雅也 社長・会長
論点 統合初期の連続赤字と、事業会社を並存させた体制の見直し
概要

2012年4月、NKSJホールディングスが発足時の代表取締役会長CEO兵頭誠氏と代表取締役社長CEO佐藤正敏氏に代えて、損保ジャパン社長の櫻田謙悟氏を代表取締役社長、日本興亜損保社長の二宮雅也氏を代表取締役会長に据えた経営判断。発足から2期続けて当期純損失を出したのを受け、持株会社の頂点を事業会社の現職社長2人が占める体制へ切り替えた。前任の2人は同年、持株会社の取締役から退いている。

背景

発足初年度の2011年3月期は東日本大震災による支払備金の積み増しと株式相場の下落が重なり、経常損失64億円・当期純損失129億円で始まった。翌2012年3月期は自動車保険の損害率が高い水準で推移し、国内自然災害とタイの洪水が加わって経常損失518億円・当期純損失922億円まで沈む。2011年9月には最終年度を2015年度へ置き直した経営計画を出していたが、2011年度の修正連結利益は12億円にとどまり、うち国内損害保険事業は713億円の赤字だった。

内容

2012年3月、損保ジャパンを存続会社として日本興亜損保と2014年度上半期をめどに合併し、損害保険ジャパン日本興亜株式会社を設立することで基本合意した。翌4月の役員交代で、持株会社の会長と社長は合併する2社の現職社長が兼ねる形になる。

2011年12月に始めた本社機能の同居を広げ、2013年4月には合併日を待たず役職員の相互兼務と拠点の同居による一体化運営(「実質合併」体制)へ移った。2012年11月には経営計画を見直し、2015年度の修正連結利益目標を1,600億円から1,800〜2,100億円へ引き上げた。

含意

2013年3月期は経常利益1,047億円・当期純利益436億円で黒字に転じ、修正連結利益は12億円から1,116億円へ戻った。国内損害保険事業の修正利益は713億円の赤字から89億円の赤字まで縮まり、黒字化は2013年度の65億円を経て2014年度の699億円までかかっている。合併は2014年9月1日に実行され、持株会社も損保ジャパン日本興亜ホールディングスへ商号を改めた。

筆者の見解

入れ替わったのは人ではなく統合の重心

この交代で動いたのは顔ぶれというより、統合の重心の置き場所である。発足時に持株会社の頂点へ座ったのは旧2社の社長を務めた世代で、会長と社長がともにCEOを兼ねるという形そのものが、事業会社を2つ残す建付けと対になっていた。2012年4月にそこへ移ったのは、損保ジャパン日本興亜損保の現職社長2人である。合併を決めた以上、持株会社の意思決定と事業会社の執行を同じ2人の手に握らせたほうが速い、という組み替えだったとみることができる。合併日の1年半前に「実質合併」へ踏み込めたのは、この形が先にできていたからであろう。

もっとも、2013年3月期の黒字転換を体制の刷新だけに帰すのは無理がある。2期目の赤字は自動車保険の損害率とタイの洪水という、新体制の手の届かないところで積み上がった損失に大きく依っており、翌期の回復にはその反動が含まれる。現に国内損害保険事業の修正利益は、713億円の赤字から89億円の赤字へ戻ったところで足踏みし、699億円の黒字に届くのは2014年度である。この交代が効いたとすれば、1年で数字を戻した点ではなく、合併を待たずに動く決定を当事者2社の社長が自ら下せる形にした点にあるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

体制の切り替えと合併の枠組み

科目 概要 備考
発足時の体制 会長CEO 兵頭誠/社長CEO 佐藤正敏 2010年4月の設立時。会長と社長がともにCEOを兼ねた
交代後の体制 代表取締役会長 二宮雅也/代表取締役社長 櫻田謙悟 2012年4月付。CEOの肩書は置かず、会長執行役員・社長執行役員とした
新社長の兼務 損保ジャパン 代表取締役社長 1978年に安田火災海上保険へ入社。2010年7月から損保ジャパン社長
新会長の兼務 日本興亜損保 代表取締役社長 1974年に日本火災海上保険へ入社。2011年6月から日本興亜損保社長
前任2人の処遇 持株会社の取締役を退任 2012年6月時点の役員に、兵頭誠氏と佐藤正敏氏は名を連ねていない
交代直前の2期 当期純損失 129億円 → 922億円 第1期と第2期。第2期は経常損失518億円を計上した
事業会社の合併 2014年度上半期をめどに合併 2012年3月公表。損保ジャパンを存続会社として日本興亜損保を吸収する
新会社の商号 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 損害保険会社単体としては国内で最も収入保険料が大きい会社となる
合併の期日 2014年9月1日 2013年3月期の時点で確定。関係当局の認可等が前提
一体化の前倒し 2013年4月1日から「実質合併」体制 合併日を待たず役職員の相互兼務・共同本社体制・拠点の同居へ移行
経営計画の見直し 2012年11月に改定 合併の基本合意と事業環境の変化を踏まえた見直し
2015年度の利益目標 修正連結利益 1,800〜2,100億円 2011年9月時点は1,600億円。修正連結ROE7%以上は据え置き
交代時点の修正連結利益 12億円(2011年度) 国内損保△713億円、国内生保1,000億円、海外△197億円、金融等△76億円

出所:NKSJホールディングス 有価証券報告書 第2期(2012年3月期)【対処すべき課題】【役員の状況】 / 第3期(2013年3月期)【対処すべき課題】【事業の内容】

SOMPOホールディングス:修正連結利益の推移

(億円) 国内損害保険事業国内生命保険事業海外保険事業金融サービス事業等修正連結利益 備考
2008年3月期 NKSJホールディングスは2010年4月設立。第1期は2011年3月期
2009年3月期
2010年3月期
2011年3月期 第1期。修正連結利益の開示は第2期から
2012年3月期 △7131,000△197△7612 内訳は事業区分ごとの修正利益。端数処理のため合計と一致しない
2013年3月期 △891,07811871,116 交代後の最初の通期。そんぽ24とセゾン自動車火災を国内損保へ区分変更
2014年3月期 6585778151,015
2015年3月期 699474186231,383 修正連結ROEは5.2%
2016年3月期 2015年度の実績は有価証券報告書に内訳の記載がない
2017年3月期 1,832 2016年度から事業部門の区分が変わり、内訳は同じ並びで比べられない
2018年3月期 1,627 修正連結ROEは6.4%。北米の大型ハリケーンで前年から減益
修正連結利益
修正連結利益(億円)

出所:NKSJホールディングス 有価証券報告書 第2期〜第4期(2012年3月期〜2014年3月期)【対処すべき課題】 / 損保ジャパン日本興亜ホールディングス 有価証券報告書 第5期(2015年3月期)【対処すべき課題】 / SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第7期・第8期(2017年3月期・2018年3月期)【株主還元方針】

SOMPOホールディングス:連結の損益の推移

(百万円) 経常収益経常損益当期純損益 備考
2008年3月期 NKSJホールディングスは2010年4月設立。第1期は2011年3月期
2009年3月期
2010年3月期
2011年3月期 2,621,689△6,437△12,918 第1期。設立初年度のため前期との対比はない
2012年3月期 2,790,555△51,815△92,262 自動車保険の損害率の高止まり、国内自然災害、タイの洪水が重なった
2013年3月期 2,843,226104,78343,618 交代後の最初の通期。3期目で黒字に転じた
2014年3月期 3,008,339112,39144,169
2015年3月期 3,282,343208,30954,276
2016年3月期 3,256,186216,853159,581
2017年3月期 3,419,530241,713166,402
2018年3月期 3,770,052141,890139,817
経常収益と当期純損益率
経常収益(百万円)当期純損益率(%)

出所:NKSJホールディングス 有価証券報告書 第3期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第8期(2018年3月期)【主要な経営指標等の推移】

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出典・参考

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