SOMPOホールディングスワタミの介護とメッセージ買収:約800億円を投じ、介護という別業種を自前で抱えることを選んだ本格参入

更新:

時期 2015年10月
意思決定者(推定) 櫻田謙悟 グループCEO・社長
論点 国内損保市場の頭打ちと保険以外の収益源の確保
概要

2015年10月2日、損保ジャパン日本興亜ホールディングスは取締役会でワタミ株式会社の完全子会社であるワタミの介護の発行済株式のすべてを取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した。株式の取得価額は211億円。

さらに同年12月18日、JASDAQ上場の株式会社メッセージを公開買付けで連結子会社化することを決議し、2016年3月7日までに議決権の94.6%を握った。保険を基盤としながら、介護という別業種を自前の事業として抱える選択であった。

背景

主要な介護サービスの利用者層である75歳以上の人口は、2014年の1,590万人から2025年には2,000万人を超える見通しで、首都圏を中心とした大都市圏で高齢者人口の急速な増加と介護サービスの需要拡大が見込まれていた。

介護事業分野には、2012年の株式会社シダーのグループ会社化と2015年3月のメッセージとの資本・業務提携を通じてノウハウの蓄積を進めており、出資と提携で外から関わる段階から、運営そのものを担う段階へ移ろうとしていた。

内容

ワタミの介護は首都圏を中心に111か所(2015年3月末時点)の介護付有料老人ホームを運営していた。取得原価208億円に対して225億円ののれんを15年均等償却する条件で、2015年12月1日に完全子会社化してSOMPOケアネクストとした。

メッセージは施設型サービスから在宅系サービスまでを総合的に展開する有力事業者で、2度の公開買付けにより取得原価592億円、のれん330億円を10年均等償却で計上した。規模の大きい2社を半年で続けて取り込んだ。

含意

2017年3月期から介護・ヘルスケア事業が報告セグメントに加わり、連結従業員数は2015年3月期の36,086人から2016年3月期の45,326人へ9,240人増えた。臨時従業員は3,985人から18,333人へ膨らんでいる。

2017年3月期の売上高1,164億円に対しセグメント損失は68億円で、のれん償却48億円が重くのしかかった。黒字化は2020年3月期の13億円まで待つことになり、2025年3月期には売上高1,813億円・セグメント利益53億円の柱に育った。

筆者の見解

保険会社が人を雇う事業を選んだ意味

この判断で選ばれたのは、介護という成長市場そのものよりも、その市場に「運営者として」立つ形であった。保険は事故の確率を引き受けて手数料を得る事業で、資本と数理が競争力になる。対して介護は、施設の数と働き手の数がそのまま供給力になる労働集約の事業である。2件の買収で正規の従業員が9,240人、臨時の従業員が14,348人増えた事実は、SOMPOが保険会社としての体つきを自ら変えたことを示している。出資や提携で外から関わる道もあったなかで、運営を自前で抱える側に踏み込んだところに、この決断の核があったとみることができる。

もっとも、買った規模はそのまま利益にはならなかった。のれん556億円は15年と10年で償却され、参入直後の3期は毎期セグメント損失が続いた。黒字に転じたのは2020年3月期で、判断から4期を要している。人手の需給ギャップという構造問題は、規模を持つほど重くのしかかる。それでも2025年3月期には売上高1,813億円・セグメント利益53億円まで届き、介護事業の修正利益は役員報酬の業績指標に組み込まれるところまで来た。保険の外に稼ぎ口を作るという当初の狙いは、時間をかけて形になりつつあるといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

介護2社を取得した条件

科目 概要 備考
決議と契約(ワタミの介護) 2015年10月2日 取締役会でワタミ株式会社との株式譲渡契約の締結を決議し、同日付で締結した
対象会社(ワタミの介護) 介護付有料老人ホーム111か所 2015年3月末時点。通所介護・訪問介護・訪問看護・サービス付き高齢者向け住宅も営む
企業結合日と形式 2015年12月1日・現金を対価とする株式取得 結合後の商号はSOMPOケアネクスト株式会社。資本金は5,095百万円となった
取得した議決権比率 100.0% 取得企業の決定根拠は、当社による現金を対価とする株式取得であることによる
取得原価(ワタミの介護) 20,830百万円 株式の取得価額は21,109百万円。取得関連費用はアドバイザリー費用等279百万円
発生したのれん(ワタミの介護) 22,534百万円・15年間の均等償却 受け入れた資産合計83,311百万円、引き受けた負債合計85,015百万円
決議と覚書(メッセージ) 2015年12月18日 取締役会で公開買付けによる連結子会社化を決議し、覚書を締結した
公開買付価格 第一回2,500円・第二回3,500円 第一回は2015年12月21日〜2016年1月25日、第二回は1月29日〜2月29日
買付けの結果 18,298,849株(発行済株式総数の91.13%) 買付価額は第一回17,462百万円、第二回39,599百万円
企業結合日と議決権比率 2016年3月7日・94.6% 結合直前に所有していた3.5%に、企業結合日に追加取得した91.1%が加わった
取得原価(メッセージ) 59,254百万円 追加取得の現金57,061百万円と既保有株式の時価2,193百万円。段階取得に係る差損109百万円
発生したのれん(メッセージ) 33,055百万円・10年間の均等償却 受け入れた資産合計55,852百万円、引き受けた負債合計27,235百万円
2件の合計 取得原価80,084百万円・のれん55,589百万円 2016年3月期末の介護・ヘルスケア事業ののれん未償却残高は55,213百万円

出所:損保ジャパン日本興亜ホールディングス 有価証券報告書 第6期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】/SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第7期(2017年3月期)【セグメント情報等】

SOMPOホールディングス:介護・ヘルスケア事業のセグメント推移

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2011年3月期 介護は報告セグメントになく、「その他」に含まれていた
2012年3月期
2013年3月期 株式会社シダーをグループ会社化した期
2014年3月期
2015年3月期
2016年3月期 11,445△887198,609 ワタミの介護を12月に連結。売上高は1月から3月までの3か月分
2017年3月期 116,492△6,847189,066 この期から報告セグメントに新設。のれん償却4,807百万円が利益を圧迫した
2018年3月期 125,047△1,485187,434
2019年3月期 127,405△201177,267
2020年3月期 134,2891,318173,721 参入から4期目でセグメント利益が黒字に転じた
2021年3月期 138,4251,090166,822
介護・ヘルスケア事業の売上高とセグメント利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第7期〜第11期(2017年3月期〜2021年3月期)【セグメント情報等】 / 損保ジャパン日本興亜ホールディングス 有価証券報告書 第6期(2016年3月期)【セグメント情報等】

SOMPOホールディングス:連結従業員数と臨時従業員数

(人) 連結従業員数臨時従業員数 備考
2011年3月期 34,203 臨時従業員数の記載は2015年3月期から
2012年3月期 35,542
2013年3月期 35,481
2014年3月期 35,904
2015年3月期 36,0863,985
2016年3月期 45,32618,333 介護2社の連結で正規は9,240人、臨時は14,348人増えた
2017年3月期 47,43016,713
2018年3月期 48,54416,719
2019年3月期 49,38715,636
2020年3月期 47,53514,796
2021年3月期 48,11514,679
連結従業員数
連結従業員数(人)臨時従業員数(人)

出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第2期〜第11期【従業員の状況】

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出典・参考

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