日本医療データセンター等買収(2013年・ノーリツ鋼機の決断)

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論点 消える祖業の後をどの分野で補うか
ノーリツ鋼機:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
医療・シニア・農業の連続買収による事業ポートフォリオの組み立て

何をなぜ決めたか:医療・シニア・農業の連続買収による事業ポートフォリオの組み立て

概要

2009年から2013年にかけて、ノーリツ鋼機が医療・シニア向け通販・農業の会社を相次いで買い集め、写真処理機器に代わる収益源を組み立てた判断。2013年3月29日の取締役会でオリンパスビジネスクリエイツからの4社取得を決議し、5月2日に株式を取得した。この1件で買収の頻度と規模がいちばん高まった。

背景

2011年2月の持株会社化で写真処理機器は子会社NKワークスへ移り、本体には投資判断と現金が残った。2013年3月末の現金及び現金同等物は235億76百万円で、これを何に振り向けるかがそのまま経営の中身になっていた。

内容

2012年にエヌエスパートナーズ・いきいき(現ハルメク)・全国通販グループ、2013年5月にオリンパスビジネスクリエイツから日本医療データセンター・フィード・アイメディック・秋田ケーブルテレビを取得した。4社の取得原価は合計5,503百万円で、秋田ケーブルテレビだけは議決権比率を50%にとどめている。同年10月には日本再生医療を設立した。

含意

事業間の関連ではなく、需要が縮まないことを買収の条件に置いた。集めた事業の多くは数年後に手放されたが、日本医療データセンターは後のJMDCとして2019年12月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年2月のオムロンへの株式譲渡では受取対価111,864百万円を生む資産になった。

いつ何が起きたか 10件
考察:打率ではなく、一本の当たり
考察

考察:打率ではなく、一本の当たり

2009年から2017年にかけてノーリツ鋼機が取り込んだ会社は、医療コンサル、雑誌、通販、生鮮野菜、再生医療、バイオ、医療情報、少額短期保険、ペン先と、業種の並びとしてはまとまりを欠く。事業間の相乗効果を説明しにくい構成であり、管理の手間も増える。それでも買い続けられたのは、写真処理機器の市場が消えた経験から、一つの事業に頼る形へ戻る道を選ばなかったためと思われる。

この買い方の採点は、平均ではなく分布で行うほかない。取得した会社の大半は数年で外へ出て、残った利益の大半は日本医療データセンター一社から出た。取得原価2,423百万円で引き取った会社の株式の一部が111,864百万円の対価に変わる展開を、2013年3月の取締役会が予見していたとは考えにくい。当たりを引く確率を上げるのではなく、当たりが出るまで持ち続けられる現金を切らさなかったことが、この4年間の買収の実際の設計であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ノーリツ鋼機:のれんと総資産の推移

のれん(百万円)総資産(百万円)
ノーリツ鋼機:のれんと総資産の推移
(百万円) のれん総資産 備考
2009年3月期 −96,448 連結貸借対照表にのれんの計上はない
2010年3月期 −81,510
2011年3月期 2,87273,062 2010年6月のドクターネット買収による
2012年3月期 2,67167,782
2013年3月期 12,43380,849 いきいき・全国通販グループの買収でのれんが9,762百万円増えた
2014年3月期 13,61292,269 4社の取得でのれん2,009百万円と負ののれん発生益580百万円を計上
2015年3月期 41,559119,842 2015年1月のテイボー買収による。日本基準で開示した最後の期
2016年3月期 32,321102,873 第61期からIFRS。2015年3月期はIFRSでのれん32,883・総資産121,469
2017年3月期 38,847116,309
2018年3月期 39,352148,658
2019年3月期 38,928149,705 第65期有価証券報告書の前期欄ではのれん38,788・総資産149,755
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第54期〜第60期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移) / ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第61期〜第64期(連結財政状態計算書、主要な経営指標等の推移)
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第54期〜第60期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移) / ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第61期〜第64期(連結財政状態計算書、主要な経営指標等の推移)

ノーリツ鋼機:医療(ヘルスケア)セグメントの売上高と利益

売上高(百万円)セグメント利益(百万円)
ノーリツ鋼機:医療(ヘルスケア)セグメントの売上高と利益
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2013年3月期 2,030116 医療を報告セグメントとして区分した最初の期
2014年3月期 11,6981,039 みなし取得日が期首のため4社の業績を通期で含み、売上高は5.8倍になった
2015年3月期 12,3951,541 日本基準。IFRSでは売上収益10,123・セグメント損益642に組み替えられた
2016年3月期 11,222718 第61期からIFRS。区分の名称をヘルスケアへ改めている
2017年3月期 17,6662,125
2018年3月期 21,7063,112
2019年3月期 23,5563,182 ヘルスケアセグメントに減損損失150百万円を計上
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第58期〜第60期(セグメント情報等) / ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第61期〜第64期(連結財務諸表注記 セグメント情報)
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第58期〜第60期(セグメント情報等) / ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第61期〜第64期(連結財務諸表注記 セグメント情報)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
相手方 オリンパスビジネスクリエイツ 同社が保有する4社の株式を、ノーリツ鋼機の子会社NKリレーションズが取得
株式譲渡契約の締結 2013年3月29日 同日の取締役会で決議。第58期の【経営上の重要な契約等】に記載
企業結合日 2013年5月2日 みなし取得日は2013年4月1日で、4社の業績を第59期の通期で連結している
企業結合の法的形式 現金による株式の取得 4社とも結合後の名称の変更はない
取得企業を決定した根拠 現金を対価として株式を取得したこと 4社いずれも同じ根拠が記載されている
被取得企業の事業 医療統計データ、歯科通販、医療機器、有線テレビ 日本医療データセンターは4,000万件以上のレセプト・データを保有していた
日本医療データセンターの取得原価 2,423百万円 株式の購入代価2,395と取得に直接要した費用28。取得した議決権比率は100%
フィードの取得原価 8百万円 購入代価1と直接費用7。議決権比率100%。約10万施設への通販網を持つ
アイメディックの取得原価 1,795百万円 購入代価1,777と直接費用18。議決権比率100%。整形外科向け医療機器の製販
秋田ケーブルテレビの取得原価 1,277百万円 購入代価1,266と直接費用10。議決権比率は50%にとどめている
取得原価の合計 5,503百万円 4社の合計。うち取得に直接要した費用は63百万円
のれん 2,009百万円 日本医療データセンター1,998は20年の均等償却、アイメディック11は一括償却
負ののれん発生益 580百万円 フィード442と秋田ケーブルテレビ138。時価純資産が取得原価を上回ったため
受け入れた資産(4社計) 10,817百万円 のれんを含む。最大は秋田ケーブルテレビの3,784百万円
引き受けた負債(4社計) 3,313百万円 最大はフィードの1,443百万円。差引の純資産は7,504百万円
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第58期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第59期(2014年3月期)【企業結合等関係】
出所:ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第58期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第59期(2014年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第58期・第59期(企業結合等関係、経営上の重要な契約等、重要な後発事象)
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第60期〜第64期(連結財務諸表、セグメント情報)
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書 第66期・第68期(沿革、非継続事業)
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第58期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第59期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第58期〜第60期(セグメント情報等)」
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第61期〜第64期(連結財政状態計算書、セグメント情報)」
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第66期(2020年12月期)【沿革】」
  • ノーリツ鋼機 有価証券報告書「第68期(2022年12月期)【経営上の重要な契約等】35.非継続事業」

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