筆者の見解
拡大の速度と、像を結ばなかったブランド
この判断の核心は、資金と土地さえあれば拡大できたという点と、その拡大が何を目指すのかという像を最後まで結ばなかった点との落差にある。石橋殾一社長は海外リゾートの調査に基づく独自の哲学を語ったが、高級路線を志向する会員制度と、収益を実際に支えていた法人・団体中心の大衆営業とは、ねじれたまま同居していた。低利の転換社債という追い風がある間は、この矛盾は業績の拡大に隠れて表面化しなかったと推察される。
むしろ矛盾が表面化したのは、拡大が止まった後であった。バブル崩壊後に負債圧縮という財務規律が優先される時代になると、性格の定まらないブランドはかえって重荷として意識されるようになったと思われる。2018年のブランド統一は迷走への一つの答えであったが、老朽化した施設群と縮小した需要という現実の前では最終的な解決策にはならなかった。2022年の売却は、多角化が生んだ副作用を、拡大から半世紀近くを経て清算した帰結といえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月