米エンデュランスの買収(2016年・SOMPOHDの決断)

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論点 米国保険市場へ大型買収で参入するか
SOMPOHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
約6,831億円を投じた、最大の米国市場への橋頭堡の確保

何をなぜ決めたか:約6,831億円を投じた、最大の米国市場への橋頭堡の確保

概要

2016年10月5日、SOMPOホールディングスが、傘下の損害保険ジャパン日本興亜を通じて、バミューダ籍の保険持株会社エンデュランス・スペシャルティ・ホールディングスの普通株式100.0%を取得する手続きを開始することで同社と合意した経営判断。株主総会の承認と関係各国の監督当局の認可を経て、2017年3月28日に手続きを完了した。取得原価は6,288百万米ドル、円換算した取得価額総額は約6,831億円で、櫻田謙悟氏(グループCEO・代表取締役社長)の主導による。

背景

国内は人口減で自動車・火災保険の先細りが見込まれ、収益源の地域分散が課題となっていた。SOMPOの海外展開は2014年5月に取得した英キャノピアス(613百万英ポンド、約1,048億円)にとどまり、メガ損保3社のなかでは規模が小さかった。有価証券報告書は買収の目的を、米国における強固な事業基盤の獲得により海外保険事業がさらに地域分散の効いたポートフォリオとなり、グループ全体に占める海外保険事業からの収益比率が12%から27%へ高まることと記している。

内容

法的形式はバミューダの会社法に基づく逆三角合併で、対価は全額現金である。企業結合日が期末の3日前であったため、2017年3月期の連結損益計算書に被取得企業の業績は含まれていない。受け入れた資産は12,509百万米ドル(うち有価証券7,758百万米ドル)、引き受けた負債は7,228百万米ドル(うち保険契約準備金4,882百万米ドル)で、のれんは1,513百万米ドル(連結上176,307百万円)が10年間の均等償却で計上された。取得のための支出は、同社が持っていた現金を差し引いた純額で549,226百万円である。

含意

買収により連結ののれんは2016年3月期の113,976百万円から2017年3月期の279,386百万円へ膨らんだ。ロイズ市場で事業が重なるCanopius社は2018年3月に譲渡され、海外の受け皿はエンデュランスを母体とするSompo Internationalへ一本化された。のれんは減損されることなく償却で減り続け、2026年2月にはこのプラットフォームを通じてアスペンの買収が完了している。

いつ何が起きたか 5件
考察:出遅れを一手で埋めた買収の意味
考察

考察:出遅れを一手で埋めた買収の意味

この判断の中心にあるのは、主力を国内損保という成熟事業に置いたままでは、投資家が求めるROEの水準にも、世界の損保大型化の潮流にも追いつけないという危機感であった。有価証券報告書が掲げた目算は明快で、グループ全体に占める海外保険事業からの収益比率を12%から27%へ引き上げることにある。6,831億円という金額は、2017年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益1,664億円のおよそ4年分にあたる。企業結合日が期末の3日前であったため、この期の損益には被取得企業の数字が1円も入っていない。買った資産だけが貸借対照表に載り、成果は翌期以降に持ち越された買収であった。

もっとも、海外の保険引き受けを取り込むことは、日本の台風や風水害に加えて、米欧の巨大災害の振れも自らの収益に映るようになるということである。海外保険事業のセグメント利益は、通期で寄与した2018年3月期に208億円を計上した後、2019年3月期は60億円の損失、2021年3月期も56億円の損失と、期ごとに大きく振れている。一方でのれん1,763億円は10年の均等償却で費用化され、監査上の主要な検討事項として毎期その減損が検討されながら、減損損失は計上されていない。ロイズ事業で重なるCanopius社を1年で手放して受け皿をSompo Internationalへ一本化した身のこなしを含め、この買収は事業そのものより、海外を統括する会社を取得したことに意味があったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

SOMPOHD:のれんの推移

のれん(百万円)
SOMPOHD:のれんの推移
(百万円) のれん 備考
2012年3月期 47,740
2013年3月期 49,311
2014年3月期 54,431
2015年3月期 83,636 英キャノピアスを2014年5月に取得した
2016年3月期 113,976
2017年3月期 279,386 エンデュランス分176,307を計上。10年間の均等償却で費用化する
2018年3月期 223,977 Canopius社の譲渡と償却による減少
2019年3月期 198,694
2020年3月期 172,665
2021年3月期 163,555
2022年3月期 151,012 のれんの減損損失は計上されていない
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第2期〜第12期(連結貸借対照表)
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第2期〜第12期(連結貸借対照表)

SOMPOHD:海外保険事業のセグメント利益の推移

セグメント利益(百万円)
SOMPOHD:海外保険事業のセグメント利益の推移
(百万円) セグメント利益 備考
2015年3月期 14,007 この期から海外保険事業を報告セグメントとして独立させた
2016年3月期 16,046
2017年3月期 12,833 企業結合日は期末の3日前で、エンデュランスの業績は含まれない
2018年3月期 20,892 エンデュランスが通期で寄与した最初の期
2019年3月期 △6,033
2020年3月期 21,599
2021年3月期 △5,639
2022年3月期 42,168
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第5期〜第12期(セグメント情報。セグメント利益は親会社株主に帰属する当期純利益をベースとした数値)
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第5期〜第12期(セグメント情報。セグメント利益は親会社株主に帰属する当期純利益をベースとした数値)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 Endurance Specialty Holdings Ltd. 英国領バミューダに本社を置く保険持株会社。事業の内容は海外保険事業
合意した日 2016年10月5日 連結子会社の損害保険ジャパン日本興亜を通じ取得の手続きを開始することで合意
企業結合日 2017年3月28日 株主総会の承認と関係各国の監督当局等の認可を得て手続きを完了した
企業結合の法的形式 バミューダの会社法に基づく逆三角合併による買収
取得した議決権比率 100.0% 損害保険ジャパン日本興亜が議決権の100.0%を取得し支配するに至った
取得原価 6,288百万米ドル 対価は全額現金。円換算した取得価額総額は約6,831億円
取得関連費用 2,849百万円 アドバイザリー費用等。これを含めた取得価額総額は約6,859億円
のれん 1,513百万米ドル 連結上は176,307百万円。10年間にわたる均等償却
のれんの発生原因 取得原価が純額を上回った差額 受け入れた資産および引き受けた負債に配分された純額を上回ったことによる
受け入れた資産 12,509百万米ドル うち有価証券7,758百万米ドル。連結上は1,457,267百万円
引き受けた負債 7,228百万米ドル うち保険契約準備金4,882百万米ドル。連結上は842,071百万円
取得のための支出(純額) 549,226百万円 取得価額683,139百万円から同社の現金及び現金同等物133,913百万円を控除
当期の連結損益への反映 なし 企業結合日が期末の3日前のため、当期の連結損益計算書に業績は含まれない
通期換算した正味収入保険料 276,073百万円 期首に完了したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した経常利益 18,524百万円 同じ概算で親会社株主に帰属する当期純利益は19,684百万円
結合の理由 米国における強固な事業基盤の獲得 海外保険事業からの収益比率が12%から27%へ高まり分散が一層進む
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第7期(2017年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:SOMPOホールディングス 有価証券報告書 第7期(2017年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
参考文献

参考文献

参考
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書「第7期(2017年3月期)」
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書「第4期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書「第8期(2018年3月期)【企業結合等関係】」
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書「第2期〜第12期(連結貸借対照表、セグメント情報)」
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書「第16期(2026年3月期)」

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