上場企業の経営論点>グローバル

グローバル経営

海外に拠点を持つことと、海外を含めて一つの会社を経営することは別で、日本企業は後者へ三十年遅れて着手した。1970年代の海外展開は販売子会社網の建設にとどまり、マキタはマキタUSAを設立、クボタはトラクタで北米へ進出したが、値決めも生産計画も本社にあった。転換は海外事業が本社と拮抗する規模に達した1980年代に始まる。TDKはニューヨーク上場を機に部品メーカーへ転じ、住友ゴム工業は英ダンロップ事業を取得、富士通は英ICLを傘下に収め日米欧の三極供給へ移った。統治の仕組みは後から作られ、東京エレクトロンは海外販売を直販へ転換し、シスメックスは家次恒氏の下で直販経営を世界へ広げた。2010年代には経営者を外から迎え、LIXILは藤森義明氏をCEOに招聘している。海外売上高比率ではなく、誰がどこで意思決定するかがグローバル経営の水準を分けた。

財務諸表のどこを見るか

地域別セグメントの営業利益率を並べ、地域間の差を測る。拠点を置いただけの段階では海外の利益率が国内を大きく下回り、経営が統合されるにつれて差が縮まる。連結子会社数と持分法適用会社数の推移は、提携で回していた海外事業をいつ連結へ取り込んだかを示す。「役員の状況」と従業員数の内訳では、外国籍の役員と海外従業員の比率を確かめたい。連結貸借対照表の為替換算調整勘定は在外子会社の純資産の大きさを映すため、その他の包括利益と併せて読む。

2020年代

2025年 亀田製菓 TH FOODSの完全子会社化 残り50%の取得による、合弁から単独経営への切り替え 2025年 東映アニメーション 「VISION2030」策定 売上高2,000億円・営業利益500億円を掲げる中期経営計画の始動 2025年 住友ゴム工業 DUNLOP商標権を取得 グッドイヤーからの欧州・北米・オセアニアの権利の買い戻しと、基幹ブランドのFALKENからの入れ替え 2024年 ロート製薬 ユーヤンサンの取得 三井物産と組んでのシンガポール漢方薬企業の取り込み 2024年 みずほリース 丸紅の出資受け入れ 第三者割当増資による20%の資本参加と、総合商社の持分法適用関連会社化 2023年 荏原製作所 E-Plan2025策定 対面市場別5カンパニー制への移行と、成長事業・基盤事業の切り分け 2023年 ピジョン 第8次中計で中国を安定成長へ 成長市場としての位置づけ引き下げと、米州・欧州への成長投資の集中 2023年 三菱倉庫 米Cavalierの買収 米英物流グループの取り込みと、自前拠点による海外展開からの転換 2023年 東京ガス ロッククリフの全株取得 米国でシェールガスを開発・生産する会社の完全子会社化 2022年 NTTデータG NTT Ltd.との海外事業統合 規模の倍増と、有利子負債1.7兆円の引き受け 2021年 サンリオ ハローキティ依存の脱却 ハローキティ一本足のライセンス収益を複数キャラクターへ分散させた収益構造の組み替え 2020年 セブン&アイHD 米スピードウェイ買収 210億ドルを投じた、日本小売業で過去最大級の海外M&A 2020年 日立製作所 ABBパワーグリッド買収 送配電の世界最大手を買い、エネルギーの柱を火力から入れ替える 2020年 ナカニシ 米DCI社の子会社化 成長戦略を自力開発から海外M&Aへ切り替える方針の転換 2020年 みずほリース 米Aircastleの買収 単独ではなく丸紅と組んだ共同買収と、議決権25%の取得

2010年代

2019年 NTT One NTT体制の構築 海外システム構築事業の統合による国際事業の一本化と指揮系統の集約 2019年 大阪ガス 米サビンの全株取得 自主探鉱での損失計上を経た、シェールガス事業の買収による立て直し 2018年 ジェイエイシーリクルートメント JACアジア法人を子会社化 業務提携で結んでいた海外拠点の連結化と、アジア展開の直営化 2018年 リクルートHD 米Glassdoorを1,430億円で買収 企業の口コミデータベースを1,430億円で買い足したHRテクノロジー事業の第2手 2017年 カルビー フルグラの中国再進出 越境ECと現地専用工場を軸にした中国市場の攻め直し 2017年 ツムラ 中国平安保険との資本提携 第三者割当による外資の筆頭株主化と、業務面まで含めた協業関係の構築 2017年 パーク24 英NCPの海外駐車場買収 豪SECURE PARKINGの5カ国事業を含む連続取得による海外事業の確立 2017年 東海カーボン 米SGL GE社を取得 アジア・北米・欧州にまたがる黒鉛電極3極体制の構築 2016年 トリドールHD 丸亀製麺に次ぐ業態買収 持株会社への移行と、単一業態への依存からマルチブランド化への転換 2016年 信越化学工業 森俊三氏への社長交代 シンテック社長を経た斉藤恭彦氏への、二段階での承継 2016年 リクルートHD 欧州USG Peopleを買収 北米・豪州に続く人材派遣基盤を全株取得で一括して得た地域補完 2016年 GSユアサ パナソニック鉛電池事業を譲受 製造会社ごと引き取る形での取り込みと、国内鉛蓄電池事業の集約 2016年 三菱ロジスネクスト ユニキャリアHD取得 買収を機とした商号変更と、三菱ロジスネクストとしての再出発 2015年 S Foods AURORA PACKING買収 買収による米国食肉処理拠点の二か所化と、現地生産体制の拡張 2015年 不二製油 不二製油グループ本社へ改称 純粋持株会社への移行と、事業会社との役割の切り分け 2015年 ハウス食品G本社 壱番屋をTOBで買収 買収を足がかりにした外食事業への進出と、川下への広がり 2015年 太平洋セメント 米でオログランデ工場取得 西海岸でのレディング工場の取得と、生コン・骨材までの買い足し 2015年 リクルートHD Chandler Macleodなど豪州2社を買収 相次ぐ取得による、北米・欧州に続くアジア太平洋の人材派遣基盤の確保 2015年 栗田工業 独BKギウリニの取得 水処理薬品事業の取得を起点とする、欧米連続買収での海外事業の拡大 2015年 THK TRWのL&S事業譲受 欧米にまたがる事業の引き受けによる海外基盤の獲得 2015年 東京海上HD 米HCCの買収 898,012百万円を現金で投じ、成長の場を国内損保から米国のスペシャルティ保険へ移した 2014年 武田薬品工業 外国人CEOウェバー氏招聘 トップの外部登用に踏み切ったグローバル経営体制への転換 2014年 資生堂 魚谷雅彦氏を招聘 外部のプロ経営者に経営を委ねる決断と、「VISION 2020」の始動 2014年 サントリーHD 1兆円超で米ビーム買収 自前で育てれば30年かかる時間を、資金で一気に買い取る選択 2013年 LIXIL 独グローエを買収 米アメリカンスタンダード北米事業の取得に続く欧州大手の取り込み 2013年 三菱ロジスネクスト 三菱重工のフォークリフト事業承継 吸収分割による事業の引き受けと、譲渡元の連結子会社への移行 2013年 オリックス 蘭ロベコの買収 2400億円を投じた買収による資産運用事業への本格進出 2013年 トーセイ シンガポール証券取引所上場 メインボードへのセカンダリー上場による、東証との同時上場 2012年 電通G 英イージスの買収 約4,000億円を投じた、日本の広告会社で過去最大の海外M&A 2012年 リクルートHD 米Indeedを買収 米国企業の取り込みによる海外への足がかり 2012年 三菱HCキャピタル 米JSAの買収 Jackson Square Aviation の買収と航空機リースの本格化 2012年 ミスミG本社 デイトン買収で金型機能獲得 米Dayton Progress・Anchor Lamina買収による金型部品の製造機能取り込み 2011年 日清紡HD TMD Frictionの買収 欧州のブレーキ摩擦材大手の全株式取得と、その完全な傘下入り 2011年 武田薬品工業 ナイコメッドの買収 約1.1兆円を投じた欧州・新興国販売網の一括取得 2011年 小野薬品工業 米BMSと抗PD-1抗体提携 北米以外・日韓台を除く全世界の開発販売権を委ね、対価をロイヤルティで受け取る道を選んだ 2011年 LIXIL 藤森義明氏をCEO招聘 米GE出身の経営者を迎えての創業家からの経営権の移譲 2010年 エムスリー 「ソネット・エムスリー」から改称 冠していた社名の一部を外し、一語の商号へ改めた名乗りの整理 2010年 資生堂 米ベアエッセンシャル買収 初の大型クロスボーダーM&Aとなった海外ブランドの取り込み 2010年 カナデビア AE&E Inova買収 欧州・豪州の環境プラント企業の連続取得と、日立造船からカナデビアへの商号変更 2010年 ANAHD JAL破綻機に国際線拡大 競合の破綻を機とした、国内線中心の収益構造からの転換と路線網の組み替え

2000年代

2009年 久光製薬 米ノーベンの完全子会社化 株式公開買付けを通じて進めた米国の医薬品会社の全株取得 2009年 サンリオ MR.MEN取得と欧米ライセンス転換 国内物販で稼ぐ会社から、欧米でロイヤリティを取る会社への組み替え 2009年 加賀電子 英・チェコに新会社設立 金融危機を「創業以来、最大のチャンス」と読み、M&Aと海外拠点を同時に増やした方針 2009年 スクウェア・エニックスHD 英Eidosの完全子会社化 13年後のEmbracerへの売却 2008年 第一三共 印ランバクシーの買収 買収による事業構造の二本立て化と「複眼経営」への移行 2008年 タダノ LE事業への限定 移動機能付き抗重力・空間作業機械への事業領域の絞り込みと、多角化の不採用 2008年 野村HD リーマン・ブラザーズ承継 アジア太平洋・欧州中東部門の引き受けによるグローバル投資銀行への転身 2007年 三和HD 三和ホールディングス発足 事業を子会社へ移す会社分割と、純粋持株会社体制への移行 2006年 日本板硝子 英ピルキントンの完全子会社化 総額6160億円の資金投入 2006年 ホシザキ 米LANCER・GRAMの買収 二社同時買収による北米の飲料機器事業と欧州の冷蔵庫事業の取得 2006年 三菱重工業 仏アレバと中型炉合弁設立 ウェスチングハウス買収入札での敗退を受けた、中型炉共同開発への転進 2005年 ネクソン 親会社NXCを買収 子会社が親会社の中核事業を逆に取り込む形での資本関係の組み替え 2005年 UBE カプロラクタムの量産化 スペイン・タイでの現地生産まで広げたナイロン原料の世界供給網の構築 2005年 NTTデータG itelligence社買収 自前の海外拠点づくりを採らず、買収の連続だけで欧米へ出た十年余りの海外戦略 2003年 三和HD 欧州ノボフェルム買収 北米オーバーヘッドドアに続く買収による日米欧三極体制の確立 2003年 ソニー エリクソンと携帯電話合弁 合弁会社の設立と、赤字下での追加出資による事業の継続 2002年 ABCマート 韓国からアジアへ海外展開 自社で組み上げたSPA型小売モデルを国外へ持ち出す形での市場開拓 2002年 大塚HD エビリファイ米国事業のBMS提携 自社単独での米国販売を採らず、BMS社との共同商業化で収益の柱を国内消費財から海外医薬品へ移した重点の移し替え 2002年 アズビル ハネウエルとの資本解消 保有株1,099万株の自己株式取得による、49年続いた提携の終幕 2002年 ピジョン 上海進出と母乳育児相談室 国家衛生部と組んだ現地での育児支援拠点づくりと、海外売上高比率5割への移行 2002年 ニフコ ITWとの提携解消 提携の完全な解消と、扱いを主力品目15種へ狭める絞り込み 2001年 ブリヂストン ファイアストンで自主回収 米国での欠陥タイヤ問題と、大規模なリコールへの踏み切り 2000年 豊田自動織機 スウェーデンBT買収 買収による産業車両の世界首位への浮上 2000年 シスメックス 家次恒のグローバル直販経営 血液検査・世界シェア3冠

1990年代

1999年 ANAHD スターアライアンスへ加盟 世界最大の航空連合への参加と「選択と集中」による経営再建 1997年 三共 ノスカールの国際展開 糖尿病薬の海外展開が新たな収益源に育たず終わった戦略の挫折 1996年 ユニオンツール 東証二部に上場 店頭登録から2年後の一部指定へ進む資本市場での歩みと香港子会社の設立 1996年 ローツェ ハイフォンに量産拠点設立 開発と量産を国境で分ける国際分業体制の構築 1994年 東京エレクトロン オースティン拠点の直販化 海外販売の直販体制への全面転換 1993年 第一製薬 クラビットの発売 自社開発の合成抗菌剤による、輸出を通じた海外売上の拡大 1992年 東京応化工業 オーカ・アメリカへ統合 米国現地法人の設立と1992年の二社統合による北米供給体制の構築 1991年 セブンイレブン・ジャパン 米サウスランド社の買収 ライセンス元であるイトーヨーカ堂との共同出資による再建の引き受け 1991年 山之内製薬 アイルランドへの生産拠点設置 欧州の生産販売網の自前構築 1990年 日本精工 英UPIの全株式取得 現地最大の軸受メーカーの取り込みと、中国・ポーランドへの生産拠点の設置 1990年 富士通 英ICL買収で3極体制 欧州拠点の取り込みによる、欧州・北米・日本にまたがるメインフレーム供給体制の構築 1990年 ヤオハン グループ本部の香港移転 国内の出店規制に見切りをつけた海外雄飛

1980年代

1970年代

1960年代

グローバルのほかの問い

問いの一覧へ戻る