壱番屋の公開買付けによる子会社化(2015年・ハウス食品グループ本社の決断)

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論点 持分法の取引先を連結子会社にするか
ハウス食品グループ本社:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
家庭用ルウの伸び悩みを補う、カレー専門店の過半取得

何をなぜ決めたか:家庭用ルウの伸び悩みを補う、カレー専門店の過半取得

概要

2015年10月30日、ハウス食品グループ本社の取締役会は、持分法適用関連会社だった壱番屋を連結子会社にするため、同社株式の公開買付けを決議した。買付価格は1株6,000円、買付代金は30,126百万円である。12月8日を企業結合日として議決権比率は19.55%から51.00%に上がり、報告セグメントに「外食事業」が加わった。

取得原価は、すでに持っていた株式の時価18,720百万円と、追加で取得した株式の30,127百万円を合わせた48,847百万円となる。既存の持ち分を時価で評価し直したため段階取得に係る差益13,851百万円が生じ、2016年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は22,632百万円と前期比224.6%増えた。

背景

家庭用カレーを担う香辛・調味加工食品事業は、2015年3月期の外部顧客への売上高が122,094百万円で、連結売上高231,448百万円の5割強を占めた。その足元で、家庭内調理の簡便化や中食・外食の利用が増える「食の外部化」が進んでいた。カレーは成熟市場で規模の拡大が見込めず、競争は同業他社だけでなく商品カテゴリーを超えて広がっていた。

海外では、ハウス食品は米国・中国・台湾・韓国でカレーレストランを運営していた。このうち米国は独自ブランドで、残る3か国は壱番屋とのフランチャイズ契約による「カレーハウスCoCo壱番屋」である。2004年6月に上海で運営会社を設立して以来、ハウス食品は壱番屋の加盟店として店を出してきた。

内容

両社が連携のあり方を協議し始めたのは2015年7月で、ハウス食品は10月中旬に51%の取得に見合う買付価格を算定して壱番屋へ提示した。連結子会社化の狙いは、グループのバリューチェーン上の事業領域を広げ、原材料の供給や海外での協働を超える連携効果を得ることに置いた。買付け後も壱番屋の事業経営は続けてもらい、独自の企業文化と経営の自主性を尊重する方針とした。

取得原価の配分では、のれん17,083百万円を5年で均等償却し、商標権26,666百万円と契約関連無形資産28,995百万円、計55,661百万円を加重平均36年で償却する。償却で損益が大きく動くため、配当の基準を「企業結合に伴い発生する特別利益やのれん償却の影響を除く連結配当性向30%以上」に改めた。

含意

壱番屋を通期で連結した2017年3月期、外食事業の売上高は51,368百万円となったが、セグメント損益は424百万円の損失だった。2017年3月には、ハウス食品が加盟店として運営してきた中国と台湾の店舗運営会社を壱番屋へ譲渡し、レストラン事業を壱番屋に集約した。それでも外食事業の損失は2019年3月期まで3期続き、黒字に転じたのは2020年3月期の202百万円である。

2021年3月期、新型コロナウイルス感染症の再拡大で超過収益力が下がったとして、壱番屋ののれん854百万円、商標権4,072百万円、契約関連無形資産4,202百万円の計9,128百万円を減損した。2026年3月期の外食事業は売上高655億7百万円、営業利益33億88百万円で、連結営業利益182億46百万円の2割近くにあたる。壱番屋への議決権の所有割合は51.00%のまま変わっていない。2026年8月31日、ハウス食品グループ本社は壱番屋の非公開化を含むあらゆる選択肢を検討していると開示した。

いつ何が起きたか 12件
考察:家庭の外へ移った需要を連結に取り込む
考察

考察:家庭の外へ移った需要を連結に取り込む

なぜハウス食品は、ルウの得意先を子会社にしたのか。家庭用カレーを担う事業は連結売上高の5割強を占めていた。しかし会社自身が、カレーは成熟市場で規模が伸びず、食事は家庭の外へ移っていると認めていた。家で作る回数が減れば、ルウの売上も増えない。店で食べるカレーを連結に入れれば、外へ移った需要をそのまま取り込める。壱番屋は2002年から持分法適用関連会社で、海外では加盟店として店を出してきた相手である。外食を一から始めるより、事情を知る会社の過半を取るほうが確かだと考えたのだろう。

もっとも、過半の取得は会計上の負担も伴った。取得原価48,847百万円のうち、のれん17,083百万円は5年で、商標権などの無形資産55,661百万円は数十年かけて償却する。そのため外食事業は、2017年3月期に売上高51,368百万円を計上しても営業損失となり、損失は3期続いた。また上場を残したため、壱番屋の利益の半分近くは非支配株主に帰属する。連結の売上が増えるほどには、ハウス食品の利益は増えない構造だったとみられる。配当の基準からのれん償却の影響を除いたのも、この構造を前提にした手当てである。

この買収は、部分的な成功だった。外食を連結に取り込む狙いは果たしている。2026年3月期の外食事業の営業利益は3,388百万円で、連結営業利益18,246百万円の2割近くを占めた。家庭用の伸び悩みを補う収益源には育ったといえる。一方で、2021年3月期には取得原価48,847百万円の2割近くにあたる9,128百万円を減損した。買収時に見込んだ稼ぐ力が下がったと、会社自身が認めたことになる。さらに2026年8月には、壱番屋の非公開化を含む選択肢の検討を開示した。過半を持ちながら上場を残す持ち方も、見直しの対象になった。狙った事業は獲得したが、払った対価と持ち方には修正が要った。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ハウス食品グループ本社:外食事業セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)

2021年3月期に壱番屋関連の減損9,128百万円を計上

ハウス食品グループ本社:外食事業セグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産減損損失 備考
2015年3月期 6,711△723,567− 壱番屋の連結前。第70期が比較情報として組み替えた値
2016年3月期 18,31244107,99453 壱番屋は12月から3か月分。無形資産の計上で資産が1,079億円へ
2017年3月期 51,368△424102,7681,093 壱番屋を通期で連結した最初の期
2018年3月期 51,965△406100,851571
2019年3月期 52,056△56196,034579
2020年3月期 52,41920293,421387 外食事業が初めて通期で黒字
2021年3月期 44,506△66077,2789,604 減損9,604のうち9,128が壱番屋ののれんと無形資産
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(セグメント情報、各期の当期欄)
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(セグメント情報、各期の当期欄)

ハウス食品グループ本社:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
ハウス食品グループ本社:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2015年3月期 4763,478286,149 第70期の前期欄
2016年3月期 16,54274,799349,427 のれん17,083と無形資産55,661を計上し、償却を始めた
2017年3月期 12,96469,949353,888
2018年3月期 9,40064,441380,003
2019年3月期 5,98059,238371,025
2020年3月期 2,56254,476367,194
2021年3月期 31244,021369,150 壱番屋ののれん854を減損し、残高が消えた
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(連結貸借対照表、各期の当期欄)
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(連結貸借対照表、各期の当期欄)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 ㈱壱番屋 カレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」の店舗運営とフランチャイズ展開
取得の法的形式 現金を対価とする株式の取得 取得企業を決定した根拠も、公開買付けにより株式を取得したこと
企業結合日 2015年12月8日 みなし取得日は11月30日。連結は12月1日から2月29日までの3か月分
取得直前の議決権比率 19.55% 1998年から2002年にかけて計3,120,000株を取得し持分法適用関連会社としていた
追加取得した議決権比率 31.45% 壱番屋の株式8,141,100株を保有した
取得後の議決権比率 51.00% 壱番屋は上場を維持。2025年3月期末も51.00%で変わっていない
取得原価 48,847百万円 追加取得分30,127百万円と、既保有分の企業結合日時価18,720百万円の合計
取得のための支出 16,556百万円 追加取得価額から、連結開始時の現金及び現金同等物13,571百万円を差し引いた額
取得関連費用 186百万円 野村證券㈱に対する報酬・手数料等
段階取得に係る差益 13,851百万円 既保有分の持分法評価額5,056百万円と企業結合日時価との差。特別利益に計上
のれん 17,083百万円 5年間の均等償却。第3四半期の暫定値36,369百万円が確定で19,286百万円減った
のれん以外の無形資産 55,661百万円 契約関連無形資産28,995百万円(30年)と商標権26,666百万円(42年)
受け入れた資産合計 89,818百万円 流動資産18,152百万円、固定資産71,666百万円
受け入れた負債合計 27,048百万円 流動負債5,565百万円、固定負債21,483百万円
非支配株主持分 30,819百万円 連結開始時。上場を維持したため残る49%は市場に残った
通期換算した売上高の増加 31,726百万円 期首に結合したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純利益の増減 △2,460百万円 同じ概算で営業利益△282百万円、経常利益△661百万円。監査証明を受けていない
結合の理由 事業シナジーの創出 成熟市場で商品カテゴリーを超えた競争が広がり、海外は成長が続くという認識
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【事業の内容】
出所:ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【事業の内容】
参考文献

参考文献

参考
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】【業績等の概要】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【セグメント情報】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【沿革】【業績等の概要】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【配当政策】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第71期〜第74期(2017年3月期〜2020年3月期)【セグメント情報】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第75期(2021年3月期)【注記事項】(連結損益計算書関係・重要な会計上の見積り)
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第80期(2026年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「当社に関する一部報道について」(2026年8月31日)
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【沿革】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【業績等の概要】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第71期(2017年3月期)【セグメント情報】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第74期(2020年3月期)【セグメント情報】
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第75期(2021年3月期)【注記事項】(連結損益計算書関係)
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(セグメント情報、各期の当期欄)
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書 第70期〜第75期(連結貸借対照表、各期の当期欄)
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「株式会社壱番屋株式(証券コード7630)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「株式会社壱番屋株式(証券コード7630)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ及び子会社の異動に関するお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「業績予想の修正および特別利益の計上に関するお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書「第70期(2016年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報】【配当政策】【業績等の概要】【沿革】」
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書「第71期〜第74期(2017年3月期〜2020年3月期)【セグメント情報】【連結貸借対照表】」
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書「第75期(2021年3月期)【注記事項】(連結損益計算書関係・重要な会計上の見積り)【セグメント情報】」
  • ハウス食品グループ本社 有価証券報告書「第80期(2026年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【関係会社の状況】」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第36期(2018年2月期)【事業の内容】」

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