デイトン買収で金型機能獲得(2012年・ミスミグループ本社の決断)

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論点 北米の金型部品の製造機能を買収するか
ミスミグループ本社:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
米Dayton Progress・Anchor Lamina買収による金型部品の製造機能取り込み

何をなぜ決めたか:米Dayton Progress・Anchor Lamina買収による金型部品の製造機能取り込み

概要

2012年10月17日、ミスミグループ本社は取締役会で米金型部品メーカーのDayton Progressと、北米・欧州にダイセット製造拠点を持つAnchor Lamina Americaの買収を決議し、11月6日に取得を終えた。両社の全株式を持つ持株会社Connell Industrial Tool Corporationを取得原価16,419百万円で取得した。

背景

リーマン・ショックで2010年3月期の連結売上高は891億円へ減少し、当期純利益は38.8億円と2008年3月期の4割に沈んだ。赤字・低収益商品の利益改善、いわきファインテクノロジー事業の撤退、駿河精機の構造改革、人件費削減という収益構造の改善を進める一方、需要が戻り始めると新興国の営業拠点を相次いで開いていた。

内容

買収した2社は北米自動車ビッグ3や欧州自動車メーカーを顧客基盤に持つ金型部品メーカーであった。ミスミは2005年の駿河精機統合で得た製造機能を、カタログ販売網の届かない北米・欧州の金型部品ユーザーへ、現地の工場ごと取り込む形で広げた。

含意

金型部品事業の売上は2013年3月期の370億円から2014年3月期に563億円へ伸びた一方、利益率は自動化事業に及ばず、のれん6,261百万円は5年で償却を終えたものの、その他無形固定資産の償却は2021年3月期の有価証券報告書にもなお注記として残った。設備投資需要の振れが大きい事業を、規模と現地供給力で支える構えへ移した判断であった。

いつ何が起きたか 6件
考察:標準化の外側を買収するということ
考察

考察:標準化の外側を買収するということ

この買収は、ミスミが自ら発明した方法の届かない領域へ、別の方法で手を伸ばした取引だったとみられる。型番で選ばせ、決めた日に届ける——その仕組みは日本とアジアの現場では強く働いたが、相手先の設計へ深く食い込んだ北米の金型部品供給には、外から入り込む隙間が小さかった。ならば、その回路を持つ会社ごと引き受ける。2005年に委託生産という外部依存を解いた会社が、7年後には販路の外部性を買って解こうとした点で、二つの判断は同じ問いの別の答えであったといえる。

ただし、買った先の事業は、ミスミが得意としてきた小口・短納期の世界とは性格が違った。自動車の生産計画に連動する金型部品は、設備投資の波をそのまま受け、利益率も自動化事業には届かないまま推移している。買収から10年以上が過ぎてなお、この事業は好況期に規模の効果を生み、不況期には固定費として現れる。標準化の外側を規模で押さえるという選択が、どの時期に報われるのか——その評価は、需要の一巡ごとに書き換えられていくと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ミスミグループ本社:のれん残高と総資産の推移

のれん(百万円)
ミスミグループ本社:のれん残高と総資産の推移
(百万円) のれん総資産 備考
2008年3月期 2,14692,596
2009年3月期 1,40886,079
2010年3月期 67092,940 リーマン・ショックで売上高は891億円へ落ち、収益構造の改善を進めた期
2011年3月期 488107,551
2012年3月期 245115,721
2013年3月期 6,653136,302 11月にDayton・Anchor Laminaを取得し、のれん6,261百万円を計上した
2014年3月期 6,341163,201
2015年3月期 5,345184,784
2016年3月期 3,457194,186
2017年3月期 1,011212,041
2018年3月期 0243,492 5年の償却を終えてのれんは消えたが、その他無形固定資産の償却は続いた
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第47期〜第56期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第47期〜第56期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)

ミスミグループ本社:金型部品事業のセグメント業績

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
ミスミグループ本社:金型部品事業のセグメント業績
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2008年3月期 34,5143,787
2009年3月期 28,4241,354
2010年3月期 22,760746
2011年3月期 26,6221,910
2012年3月期 27,6852,195
2013年3月期 37,0202,501 のれん等償却前のセグメント利益は3,295百万円で、償却費が794百万円を削った
2014年3月期 56,3093,288 買収した2社の通年寄与で売上高が5割伸びた
2015年3月期 64,7374,279
2016年3月期 69,7323,464
2017年3月期 69,7973,097 のれん等償却前のセグメント利益は5,391百万円
2018年3月期 76,5235,869
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第47期〜第57期【セグメント情報】
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第47期〜第57期【セグメント情報】

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 Connell Industrial Tool Corporation Dayton社とAnchor Lamina社の全株式を保有する持株会社
取締役会の決議 2012年10月17日 同日付で株式譲渡契約を締結した
企業結合日 2012年11月6日 連結に含めた被取得企業の業績の期間は2012年11月6日から12月31日まで
企業結合の法的形式 現金を対価とする株式取得 子会社MISUMI Investment USA Corporationを通じて持分を取得した
取得した議決権比率 100%
取得原価 16,419百万円 企業結合日における株式の時価16,035百万円とアドバイザリー費用383百万円の合計
対価の算定 企業価値15,313百万円 これに契約で定めた現金及び運転資本の調整額を加えて対価を決めた
のれん 6,261百万円 取得原価が受け入れた純額を上回った額。5年間にわたる均等償却
受け入れた資産・負債 資産21,485百万円/負債4,879百万円 流動資産5,708・固定資産15,776/流動負債1,795・固定負債3,083
期首に完了と仮定した影響 売上高13,558百万円/営業損失292百万円 当期純損失558百万円。企業結合前の数値で監査証明を受けていない
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第51期(2013年3月期)・第52期(2014年3月期)【企業結合等関係】
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第51期(2013年3月期)・第52期(2014年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書 第63期(2025年3月期)【沿革】【セグメント情報】【主要な経営指標等の推移】
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書(2013年3月期・2014年3月期・連結)【セグメント情報】
  • ミスミグループ本社 2025年度通期決算説明会 質疑応答(2026年4月30日)
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第51期(2013年3月期)【企業結合等関係】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第51期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第52期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第59期(2021年3月期)【セグメント情報】」

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