RFPグループを買収(2021年・飯田グループHDの決断)

更新:
論点木材調達の上流を国外で取得するか
飯田グループHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
ロシア極東の林業大手19社の取り込みと、侵攻直後の暗転

何をなぜ決めたか:ロシア極東の林業大手19社の取り込みと、侵攻直後の暗転

概要

2021年6月8日開催の取締役会で、飯田グループホールディングスはロシア極東の林業大手Russia Forest Products(BVI)の発行済株式75%の取得と、同社が実施する第三者割当増資の引受けを決議した。ロシア政府当局の許認可を2021年12月7日に取得したことで株式取得が確定し、翌8日に公表した。

2022年1月14日に株式取得を実行し、RFP(BVI)およびDallesprom・ALKなど子会社18社を合わせた計19社が連結子会社となった。支配の獲得方法は現金を対価とする株式取得と第三者割当増資引受で、支払対価の公正価値は18,578百万円である。

背景

戸建分譲の量産では利幅が原価で決まる。飯田グループHDは2014年のファーストウッド子会社化から建材の内製化を進め、同年にはウラジオストクへ現地法人を設立していた。2021年に木材価格が急騰したウッドショックが重なり、木材の上流そのものを押さえる必要が経営課題として前面に出た。

企業結合の理由に挙げたのは、主要な住宅用資材である木材をウッドショックにみられるような需給逼迫時や市況変動に影響されることなく安定的かつ永続的に調達できるようにし、中核事業である戸建分譲事業の競争力を高めることであった。木材加工ノウハウの移転による建材事業の収益性向上も見込んだ。

内容

RFPグループはハバロフスクを拠点に、森林認証を取得した約400万ヘクタール(九州の1.08倍)の林区を持つ。年間原木伐採量170万立方メートルは、飯田グループHDが供給する年間戸建住宅約4万6千棟の木材使用量(原木換算)に相当する規模であった。

取得日に受け入れた資産と引き受けた負債の公正価値は純額で11,906百万円。取得資産のうち有形固定資産が27,580百万円、無形資産が8,905百万円を占める一方、引き受けた社債及び借入金は流動32,964百万円・非流動6,703百万円にのぼった。取得関連費用500百万円は全額を販売費及び一般管理費に計上した。

含意

取得時に暫定計上したのれん20,446百万円は、翌2023年3月期に取得資産・引受負債の公正価値と支払対価が確定して9,382百万円減り、11,064百万円となった。有形固定資産の評価が13,425百万円増えた分だけ、のれんが縮んだ形である。

買収の1カ月余り後にロシアがウクライナへ侵攻し、各国が制裁と輸入規制を強化した。RFPグループを含む「その他」セグメントの損益は2023年3月期に5,178百万円の損失へ転じ、2026年3月期は事業計画の見直しに伴うのれんの減損損失1,494百万円を含めて9,281百万円の損失となった。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役12名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

考察:400万ヘクタールは持ち帰れない
考察

考察:400万ヘクタールは持ち帰れない

この投資の芯にあるのは、木材をどこから買うかではなく、原価の振れを誰の手に預けるかという判断であった。2014年5月のファーストウッド子会社化以来、飯田グループホールディングスは窓サッシ・住宅設備・建材流通へ内製化の対象を広げてきた。ウッドショックに揺さぶられた翌年、ハバロフスクの約400万ヘクタールを自社の帳簿へ載せる判断は、その延長として筋が通る。議決権付資本持分の75.0%という条件も、伐採から製材までの意思決定を自社で握るために選ばれたものであった。市場に預けていた振れを、一つの国の内側へ移した点だけがそれまでと違っていた。

もっとも、経営権を掌握するということは、事態が変わったときに降りる判断まで自社で背負うことでもある。支払対価18,578百万円は連結総資産の1%強にすぎず、金額としては軽い。重いのはそこではない。RFPグループを含む「その他」セグメントは、連結前の2021年3月期まで一貫して黒字だったものが、通期で寄与した2023年3月期以降は損失が続き、2026年3月期には減損を含めて9,281百万円の損失に沈んだ。上流をさかのぼる調達は、上流と下流が同じ制度の内側にあるあいだしか働かない。飯田グループホールディングスがいま抱えているのは木材の値段の振れではなく、いつどう畳むかを自社では決められない資産だと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

飯田グループHD:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
飯田グループHD:のれんと無形資産の推移
(百万円)のれん無形資産総資産備考
2017年3月期−−1,168,389のれんと無形資産は有報の逐語で照合できていない
2018年3月期198,2781,6301,280,540
2019年3月期198,5091,5831,389,255
2020年3月期199,7761,7501,536,537
2021年3月期199,7762,1001,474,931
2022年3月期210,84010,7931,708,668RFPグループを子会社化。のれんは確定額11,064百万円を含む(取得時の暫定額は20,446百万円)
2023年3月期214,29514,8051,765,618暫定的な会計処理が確定し、前期の数値は確定額に修正されている
2024年3月期214,83213,9731,811,179
2025年3月期215,95215,2101,853,830
2026年3月期225,15917,9142,008,739RFPグループののれんを1,494百万円減損。米国住宅会社の買収でのれんは純増
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第5〜13期(連結財政状態計算書)
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第5〜13期(連結財政状態計算書)

飯田グループHD:RFPグループを含む「その他」セグメントの推移

売上収益(百万円)セグメント利益率(%)
飯田グループHD:RFPグループを含む「その他」セグメントの推移
(百万円)売上収益セグメント利益備考
2017年3月期33,214220「その他」はファーストウッドグループの木材製造事業とホームトレードセンター等
2018年3月期32,407348
2019年3月期52,350819
2020年3月期64,1781,001
2021年3月期55,2621,773
2022年3月期94,8034,5861月14日にRFPグループを子会社化。取得日以降に生じた損益は該当がなく記載を省略
2023年3月期139,147△5,178RFPグループが通期で寄与した最初の期。ウクライナ侵攻後の制裁と輸入規制が重なる
2024年3月期115,339△3,512
2025年3月期111,688△4,415
2026年3月期114,633△9,281のれんの減損損失1,494百万円を含む。RFPグループの業績回復は遅れている
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第5期・第8〜11期・第13期【セグメント情報】
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第5期・第8〜11期・第13期【セグメント情報】

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業Russia Forest Products (BVI) Limited林産・木材加工会社の持分を保有する持株会社。子会社18社と合わせた計19社をRFPグループと総称
取得の法的形式現金を対価とする株式取得及び第三者割当増資引受2021年6月8日の取締役会で決議し、ロシア政府当局の許認可を2021年12月7日に取得して取得が確定した
取得日2022年1月14日株式取得と同日付で、同じ資本持分割合での第三者割当増資引受にかかる払込も完了した
取得した議決権付資本持分の割合75.0%新たに発生した非支配持分にはプット・オプションが付され、金融負債へ振り替えている
支払対価の公正価値18,578百万円全額が現金。暫定額19,374百万円から、株式譲渡契約の価格調整条項により796百万円減額して確定
支払対価の内訳株式取得5,742百万円第三者割当増資による株式引受が12,836百万円。増資の払込金額は17,115百万円
取得関連費用500百万円すべて連結損益計算書の販売費及び一般管理費に計上した
のれん11,064百万円取得時は暫定的な会計処理により20,446百万円。翌期の確定で9,382百万円減少した
のれんの発生要因既存事業とのシナジー効果と超過収益力個別に認識要件を満たさないもの。償却は行わず、毎期減損テストを実施する
取得資産・引受負債の公正価値純額11,906百万円有形固定資産27,580・無形資産8,905・社債及び借入金39,667(流動32,964/非流動6,703)百万円
非支配持分4,392百万円識別可能な被取得企業の純資産に対する持分割合相当額で測定した
子会社の取得による支出6,096百万円支出した現金19,374百万円から、取得時に被取得会社が保有していた現金13,278百万円を控除
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第10期(2023年3月期)【企業結合】・第9期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:飯田グループホールディングス 有価証券報告書 第10期(2023年3月期)【企業結合】・第9期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】
当時の取締役12名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 飯田グループホールディングス 有価証券報告書【沿革】
  • 飯田グループホールディングス 有価証券報告書「第9期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合】」
  • 飯田グループホールディングス 有価証券報告書「第10期(2023年3月期)【企業結合】」
  • 飯田グループホールディングス 有価証券報告書「第5期・第8〜11期・第13期【セグメント情報】」
  • 飯田グループホールディングス 有価証券報告書「第13期(2026年3月期)【のれん及び無形資産の減損】」
  • 飯田グループホールディングス 決算説明会資料「2026年3月期 決算説明会資料」

次に読む決断

免責事項およびポリシー