米Ampere買収で半導体強化(2025年・ソフトバンクグループの決断)

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論点 半導体の製品化能力を買収で得るか
ソフトバンクグループ:業績の推移
売上高(億円)税引前利益率(%)
米国の半導体設計会社を65億ドルで取り込む事業基盤の強化

何をなぜ決めたか:米国の半導体設計会社を65億ドルで取り込む事業基盤の強化

概要

2025年3月、ソフトバンクグループが100%子会社を通じて、Armコンピュートプラットフォームに基づくAIコンピューティング特化の半導体設計企業である米Ampere Computingの全持分を総額65億米ドルで取得することに合意した経営判断。主な売主はCarlyle、Oracle、Armで、2025年11月25日に買収取引が完了し、Ampereは完全子会社となった。

背景

ソフトバンクグループは2016年のアーム買収以降、半導体設計を事業の核に据え、2025年3月期には英Graphcoreを子会社化し、OpenAIのためのAIインフラを米国内で構築するStargate Projectを2025年1月に発表していた。ただしアームは設計をライセンスする企業であり、チップそのものを製品化してテープアウトに至らせるノウハウを欠いていた。

内容

子会社Silver Bands 6 (US) Corp.が一部の売主から持分保有エンティティの持分を取得したうえで、同社の完全子会社をAmpereに吸収合併させる逆三角合併の方法を採り、Ampereを存続会社とした。取得原価は現金9,706億円と既に保有していた資本持分の公正価値468億円の合計1兆175億円で、資金は65億米ドルのブリッジローンで賄った。

含意

有報が挙げた本取引の狙いは、アームの設計力を補完する形で、Armベースのチップの開発とテープアウトで実績を持つAmpereの専門知識を統合する点にあり、それがNAVの長期的な拡大につながるという見立てであった。買収完了を契機に、アーム・Ampere・Graphcoreをまとめた新セグメント「AIコンピューティング事業」が2026年3月期第3四半期に設けられた。

いつ何が起きたか 8件
当時の取締役 9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

  • 孫正義:会長
  • 宮内謙:取締役
  • 飯島彰己:取締役
  • 松尾豊:取締役
  • 後藤芳光:専務執行役員
  • 襟川恵子:取締役
  • ケンシーゲル:取締役
  • デビッドチャオ:取締役
  • レネハース:取締役
考察:欠けたピースの代価
考察

考察:欠けたピースの代価

65億米ドルという対価は、Ampere単体の事業規模から導かれた数字というより、アームを核とする半導体戦略の欠けたピースへの支払いだろう。取得原価1兆175億円に対し、受け入れた純資産は△610億円で、のれんは1兆786億円にのぼった。買った資産の中身ではなく、人的資源と既存事業とのシナジーにほぼ全額を払った取引である。設計のアーム、製品化のAmpere、AI専用チップのGraphcoreという分業を傘下に揃えた判断は、2016年のアーム買収に始まる垂直統合の仕上げにあたり、Stargate Projectと一体で読むべき布石といえる。

もっとも、部品が揃うことと、市場で優位に立つことは別の問題である。有報が示すとおり、AIコンピューティング事業の2026年3月期のセグメント利益は1,372億円の損失で、次世代技術の開発に伴う研究開発費とAmpereの取得関連費用が重くのしかかった。のれんが取得原価をほぼ丸ごと占める以上、期待した超過収益力が実現しなければ減損という形で表に出る。約1兆円の投資が生きるかどうかは、Ampere自身の製品力に加えて、グループ全体のAI投資が需要の実体に支えられ続けるかに懸かっており、この判断の評価が定まるのはこれからと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ソフトバンクグループ:のれん・無形資産・総資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
ソフトバンクグループ:のれん・無形資産・総資産の推移
(百万円) のれん無形資産総資産 備考
2021年3月期 4,684,4192,308,37045,750,453
2022年3月期 4,897,9132,427,58047,544,670
2023年3月期 5,199,4802,409,64143,936,368
2024年3月期 5,709,8742,448,84046,724,243
2025年3月期 5,781,9312,414,56245,013,756 Graphcoreの子会社化で計上したのれんは、この期末時点で851億円
2026年3月期 7,314,5322,469,84360,749,547 Ampereの暫定のれん1兆786億円を計上し、のれんは前期末から1兆5,326億円増えた
出所:ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第41期〜第46期(連結財政状態計算書)
出所:ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第41期〜第46期(連結財政状態計算書)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
取得の合意日 2025年3月 主な売主はCarlyle、Oracle、Arm。米国当局等の承認を前提としていた
支配獲得日 2025年11月25日 発表時は2025年度後半の完了見込みとしていた。合意から約8か月後にあたる
企業結合の法的形式 逆三角合併 子会社Silver Bands 6 (US) Corp.の完全子会社をAmpereに吸収合併させる形を採った
取得した持分比率 100% 異動前の持分割合は間接所有で8.08%。議決権付持分数に基づく
投資総額 65億米ドル 2025年3月の合意時に公表した総額。取得関連費用は当時未定としていた
取得原価 1兆175億円 現金9,706億円と、既に保有していた資本持分の公正価値468億円の合計
取得関連費用 155億円 販売費及び一般管理費へ計上。段階取得差額は△30億円を認識した
受け入れた資産 562億円 負債1,173億円を差し引いた純資産は△610億円。うち現金及び現金同等物は398億円
のれん 1兆786億円 暫定額。取得原価の配分が未了で、支配獲得日から1年間は修正されうる
買収資金 65億米ドルの借入 2025年4月10日締結のブリッジローンを11月25日に実行し、2026年4月に返済した
業績への影響 売上高21億円 支配獲得日以降の約4か月。同期間の純損失は352億円であった
期首に完了と仮定した連結売上高 7兆8,010億円 プロフォーマ情報(非監査)。同じ仮定での連結純利益は5兆6,060億円
出所:ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第45期(2025年3月期)連結財務諸表注記【追加情報】・第46期(2026年3月期)連結財務諸表注記【企業結合】
出所:ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第45期(2025年3月期)連結財務諸表注記【追加情報】・第46期(2026年3月期)連結財務諸表注記【企業結合】
当時の取締役 9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

  • 孫正義:会長
  • 宮内謙:取締役
  • 飯島彰己:取締役
  • 松尾豊:取締役
  • 後藤芳光:専務執行役員
  • 襟川恵子:取締役
  • ケンシーゲル:取締役
  • デビッドチャオ:取締役
  • レネハース:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第45期(2025年3月期)連結財務諸表注記【追加情報】
  • ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第46期(2026年3月期)連結財務諸表注記【企業結合】
  • ソフトバンクグループ 有価証券報告書 第46期(2026年3月期)【事業の内容】【セグメント情報】
  • ソフトバンクグループ 有価証券報告書「第45期(2025年3月期)有価証券報告書」
  • ソフトバンクグループ 有価証券報告書「第46期(2026年3月期)有価証券報告書」
  • ソフトバンクグループ 統合報告書「SoftBank Group Report FY2025」

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