英イージスの買収(2012年・電通グループの決断)

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論点 海外網は自前構築か買収で一括取得か
電通グループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
取得原価3,651億円を投じ、海外本社を英国に設置した

何をなぜ決めたか:取得原価3,651億円を投じ、海外本社を英国に設置した

概要

2012年7月11日にイージス社との間で買収実施契約を、翌12日に筆頭株主Bolloré Groupとの間で1株240ペンスで株式を取得する譲渡契約を締結し、2013年3月26日に英国法上のスキーム・オブ・アレンジメントによって全発行済株式を取得した経営判断。取得原価は365,119百万円で、同日付でイージス社はDentsu Aegis Network Ltd.へ商号を変更した。

背景

有価証券報告書は企業結合を行った理由として、事業領域やサービスにおける補完関係に加え、地理的な広がり、主要市場やデジタル分野における規模の拡大、財務資源の強化により成長を加速していくことを挙げている。仏ピュブリシスグループとの戦略的提携は2012年2月16日に解除で合意し、同社株式は2013年2月15日に全て売却された。買収前の売上総利益における海外比率は約18%であった。

内容

取得した議決権比率は100%で、対価は現金69,354百万円と未払金294,178百万円、取得に直接要した費用1,586百万円であった。未払金は2013年4月5日に三菱東京UFJ銀行からの260,000百万円の借入で支払われている。みなし取得日は2013年1月1日だが、12月31日現在の財務諸表を基礎に連結するため、2013年3月期には被取得企業の業績を含んでいない。

含意

のれんは取得時に暫定値519,076百万円を計上し、翌期に配分が確定して382,035百万円へ137,041百万円減った。顧客との関係130,995百万円などが無形固定資産として識別され、のれんは20年間の定額法で償却された。IFRSへ移行した後は償却を止め、2019年12月期以降は減損損失が繰り返し計上されている。

いつ何が起きたか 10件
当時の取締役 11名

当時の取締役(2012年6月株主総会決議)

  • 石井直:社長執行役員
  • 髙嶋達佳:会長
  • 中本祥一:専務執行役員
  • 内海朋基:常務執行役員
  • 杉本晶:常務執行役員
  • 加藤讓:常務執行役員
  • 秋山隆平:常務執行役員
  • 石川聰:取締役
  • 中田正博:取締役
  • 志村薫:常務執行役員
  • 松島訓弘:執行役員
考察:買収で規模を得る決断の二面性
考察

考察:買収で規模を得る決断の二面性

この決断の核心は、自前でも提携でもなく、買収で時間を買うことを選んだ点にある。2002年に基本合意した仏ピュブリシスグループとの戦略的提携は、2012年2月に解除で合意し、翌年2月には保有株式をすべて売却した。出資と提携による海外展開から撤退したその年に、電通は英国法上のスキーム・オブ・アレンジメントによってイージス社の全発行済株式を取得している。取得原価365,119百万円のうち現金で払われたのは69,354百万円にとどまり、294,178百万円は未払金として翌期に持ち越され、その支払資金は借入で調達された。買うと決めた時点で、代金の手当ては後に回されていたことになる。

その後の展開は、この判断の光と影を同時に示している。買収で立ち上がったのれんは、取得時の暫定値519,076百万円から配分の確定で382,035百万円へ削られ、顧客との関係130,995百万円などが無形固定資産として切り出された。20年間の定額法で償却する計画はIFRSの適用で止まり、のれんは償却されずに積み上がって2017年12月期には798,177百万円へ達する。そして2019年12月期の70,187百万円を皮切りに、2020年12月期140,367百万円、2024年12月期210,162百万円、2025年12月期396,074百万円と、減損損失が繰り返し計上された。規模を買うという決断の代償は、買収後の十数年をかけて顕在化したと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

電通グループ:のれんと総資産の推移

のれん(百万円)
電通グループ:のれんと総資産の推移
(百万円) のれん総資産 備考
2008年3月期 17,4771,251,912
2009年3月期 20,6581,092,543
2010年3月期 23,6471,118,236
2011年3月期 32,8531,133,300
2012年3月期 44,3391,201,894
2013年3月期 576,0092,205,569 イージス社の取得で暫定のれん519,076百万円が発生し、総資産はほぼ倍になった
2014年3月期 558,8342,638,319 取得原価の配分が確定。顧客との関係などが無形固定資産へ振り替えられた
2015年3月期 656,5653,159,534 IFRSを適用(移行日2013年4月1日)。日本基準の総資産は3,075,028百万円
2015年12月期 656,8623,066,075 決算期の変更に伴う9か月決算
2016年12月期 718,7173,155,230
2017年12月期 798,1773,562,857
出所:電通 有価証券報告書 第160〜169期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)
出所:電通 有価証券報告書 第160〜169期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)

電通グループ:のれんと減損損失の推移

のれん(百万円)
電通グループ:のれんと減損損失の推移
(百万円) のれんのれんの減損損失 備考
2015年12月期 656,862−
2016年12月期 718,717−
2017年12月期 798,177−
2018年12月期 786,851−
2019年12月期 754,79670,187 減損の対象はAPAC地域の資金生成単位グループ
2020年12月期 593,369140,367 海外事業で認識
2021年12月期 670,749−
2022年12月期 749,7559,262 減損の対象はAPAC地域の資金生成単位グループ
2023年12月期 831,121−
2024年12月期 697,052210,162 海外事業で認識。営業損失124,992百万円、当期損失192,172百万円
2025年12月期 320,102396,074 米州及びEMEA地域で認識
出所:電通グループ 有価証券報告書 第167〜177期(連結財政状態計算書・のれん及び無形資産)
出所:電通グループ 有価証券報告書 第167〜177期(連結財政状態計算書・のれん及び無形資産)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業の名称 Aegis Group plc 本社は英国ロンドン市。事業内容は広告業
買収実施契約の締結日 2012年7月11日 翌12日に英国の公開買付規制に基づき本件を公表した
株式譲渡契約の買付価格 1株240ペンス 2012年7月12日、筆頭株主Bolloré Groupが持つ株式の一部を取得する契約
企業結合日 2013年3月26日 同日付でDentsu Aegis Network Ltd.へ商号を変更した
企業結合の法的形式 株式取得 英国法上の買収手続きであるスキーム・オブ・アレンジメントによる
取得した議決権比率 100% 取得企業を決定した根拠は、現金を対価として株式を取得したこと
みなし取得日 2013年1月1日 12月31日現在の財務諸表を基礎とするため2013年3月期に業績は含まない
取得原価 365,119百万円 現金69,354百万円、未払金294,178百万円、取得に直接要した費用1,586百万円
買収の対価(ポンド建て) 約3,164百万ポンド 【事業等のリスク】が買収完了時の対価として記す金額
未払金の支払日 2013年4月5日 294,178百万円。三菱東京UFJ銀行からの260,000百万円の借入などで調達した
追加取得の対価 43,243百万円 2013年4月17日の転換社債の買取。ストックオプション行使分は835百万円
受け入れた資産・負債 資産478,571百万円/負債631,929百万円 イージス社で計上されていたのれんは含まない。暫定的な金額
のれん 382,035百万円 取得時は暫定値519,076百万円。配分の確定で137,041百万円減。20年定額法
識別した無形固定資産 顧客との関係130,995百万円 取得原価の配分の確定で認識。無形固定資産その他は37,670百万円
通期換算した影響の概算額 売上高160,899百万円 営業損失8,337百万円、当期純損失14,838百万円。監査証明を受けていない
米国私募債の早期償還 2013年4月25日 支配株主の異動により316百万USドルと25百万ポンドを買入償還した
償還資金の借入 400百万USドル 2013年4月24日、みずほコーポレート銀行を幹事とする銀行団からの借入
出所:電通 有価証券報告書 第164期(2013年3月期)・第165期(2014年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
出所:電通 有価証券報告書 第164期(2013年3月期)・第165期(2014年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
当時の取締役 11名

当時の取締役(2012年6月株主総会決議)

  • 石井直:社長執行役員
  • 髙嶋達佳:会長
  • 中本祥一:専務執行役員
  • 内海朋基:常務執行役員
  • 杉本晶:常務執行役員
  • 加藤讓:常務執行役員
  • 秋山隆平:常務執行役員
  • 石川聰:取締役
  • 中田正博:取締役
  • 志村薫:常務執行役員
  • 松島訓弘:執行役員
参考文献

参考文献

参考
  • 電通 有価証券報告書 第164期(2013年3月期)
  • 電通 有価証券報告書 第165期(2014年3月期)
  • 電通 有価証券報告書 第166期(2015年3月期)
  • 電通グループ 有価証券報告書 第176期(2024年12月期)・第177期(2025年12月期)
  • 電通 有価証券報告書「第164期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】【重要な後発事象】」
  • 電通 有価証券報告書「第165期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • 電通 有価証券報告書「第166期(2015年3月期)【連結財政状態計算書】」
  • 電通グループ 有価証券報告書「第171期(2019年12月期)・第172期(2020年12月期)・第174期(2022年12月期)・第176期(2024年12月期)・第177期(2025年12月期)【のれん及び無形資産】」
  • 電通 有価証券報告書「第160〜169期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)」

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