この買収で支払った263百万円は、同じ期の連結売上高の0.1%にすぎない。受け入れた現金のほうが取得価額を上回り、差引では65百万円が入ってきている。もっとも値札が小さかったのは、相手が稼いでいたからではない。期首に完了したと仮定した影響額は売上高31,239百万円に対して営業利益△618百万円・経常利益△663百万円で、年商312億円を挙げながら損失を計上する会社であった。取得したのは利益ではなく、米国の産地で牛を処理し続けている設備とその場所である。1989年にネブラスカ州へ合弁で入ったときの動機が原料の入口を押さえることだったとすれば、2015年の選択はその入口を2つに増やし、等級の高い米国産牛を自社の名前で売る側へ回る手立てだっただろう。
効きは翌期の地域別の数字に出た。米国に所在する子会社の外部顧客への売上高は2016年2月期の85億9千6百万円から、通期で連結した2017年2月期には323億9千8百万円へ増えている。同じ期の連結売上高の増加386億円のうち、米国分が238億円を占めた計算になる。一方で米国の有形固定資産は34億円前後で動かず、買ったのは能力であって、能力を増やす投資はまだ先であった。買収から10年が経ち、イリノイ州ノースオーロラの工場は建て替えの段階に入っている。中期計画は2026年の新工場竣工で処理能力を2.5倍にすると記し、2029年2月期に売上高6,000億円・営業利益170億円を掲げた。のれん66百万円を重要性が乏しいとして一括償却した買い物が、10年後にグループで最も重い設備投資を呼び込んでいる。