ピジョン 第8次中計で中国を安定成長へ 成長市場としての位置づけ引き下げと、米州・欧州への成長投資の集中

更新:

時期 2023年2月
論点 中国依存の見直しと収益性の回復
何をなぜ決めたか
概要

連結営業利益が2019年1月期の196億円から2023年12月期の107億円へほぼ半減するなか、ピジョンが2023年2月の第8次中期経営計画で中国事業を"高成長"から"安定成長"へ置き直し、哺乳器・乳首とベビースキンケアへ商品を絞って収益を立て直し、2026年2月の第9次中期経営計画で成長の中心を米州・欧州へ移した経営判断。

背景

減益は2019年12月期から3期続いた。2020年はコロナ下でも極端な悪化がなかったが、2021年には世界的な出生数の減少、物流の混乱、海上運賃の高騰といった想定外の環境変化が重なった。減少したのは中国だけではなく、日本事業のセグメント利益も41億円から15億円へ減っていた。

内容

第8次中計は中国事業に工場の収益性改善と代理店の見直しを割り当て、最終年度の営業利益率14%以上を目標に置いた。初年度の2023年8月にALPS処理水の海洋放出が重なり、2024年は販管費を前の期より20億円増やして中国の売上回復を最優先とした。その最中の2024年7月、中国の販売子会社で元従業員による架空発注・転売の疑いが見つかり、決算発表が延期された。

含意

2025年12月期は売上高1,092億円・営業利益132億円まで戻ったが、営業利益率12.1%は目標の14%に届かなかった。矢野亮社長は残る課題として中国事業への依存度の高さを挙げ、第9次中計で米州・欧州を"ネクスト・チャイナ"と位置づけ、中国事業の営業利益構成比を2028年に55%へ下げる計画を置いた。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

直すことと、減らすこと

営業利益の70%近くを中国事業に預けたまま、会社が先に手をつけたのは中国事業そのものの立て直しであった。2024年に販管費を20億円増やして哺乳器のシェアを43%まで戻し、中国事業のセグメント利益は2025年12月期に105億円へ戻した。それでも矢野亮社長が第9次中計で最初に挙げた課題は、届かなかった営業利益率ではなく、回復してもなお残る一市場への依存であった。稼ぎ頭を直す作業と、稼ぎ頭を減らす作業は別物であったとみられる。

ただし、依存を下げる先として選ばれた米州・欧州は、まだ中国事業の4分の1ほどの利益しか出していない。3年で4倍に伸びた北米・欧州の哺乳器・乳首も、伸び率の大きさは母数の小ささの裏返しでもある。2028年12月期に掲げた営業利益200億円は、2019年1月期の196億円をようやく上回る水準にすぎない。中国の出生数が減り始めてからの数年で、ピジョンは利益の額をほぼ元の位置へ戻すために10年近くを費やす計画を立てたことになる。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

業績の推移
同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • ピジョン 有価証券報告書(2019年1月期・2019年12月期・連結)
  • ピジョン 有価証券報告書(2019年12月期・連結/セグメント情報)
  • ピジョン 有価証券報告書(2020年12月期・2021年12月期・連結)
  • ピジョン 有価証券報告書(2022年12月期・連結/セグメント情報)
  • ピジョン 有価証券報告書(2023年12月期・連結)
  • ピジョン 有価証券報告書(2024年12月期・2025年12月期・連結/セグメント情報)
  • ピジョン 有価証券報告書(2025年12月期・連結/セグメント情報)
  • ピジョン 2019年12月期決算・第7次中期経営計画説明会 要旨
  • ピジョン 2021年12月期 決算説明会 質疑応答
  • ピジョン 2022年12月期決算・第8次中期経営計画説明会 要旨
  • ピジョン 統合報告書2023
  • ピジョン 2023年12月期 決算説明会 質疑応答
  • ピジョン 2024年12月期 第2四半期 決算説明会 要旨
  • ピジョン 2024年12月期 決算説明会 質疑応答
  • ピジョン 2025年12月期決算・第9次中期経営計画説明会 要旨
  • ピジョン 2025年12月期決算・第9次中期経営計画説明会 質疑応答

免責事項およびポリシー