ユナイテッドアローズコロナ禍の赤字転落を受けた不採算店の整理とEC基盤の刷新

店頭接客で伸びた高感度セレクトは、店をどう減らし、ネットへどう振り向けたか

時期 2020年11月
意思決定者(推定) 松崎善則 社長CEO
論点 危機下の事業構造改革
概要
2020年に社長CEOへ就いた松崎善則氏のもとで、コロナ禍の営業赤字転落を受け、不採算店の整理とEC基盤の刷新を柱とする構造改革を進めた経営判断。2022年3月期に前期末比20店舗の純減を見込み、店頭依存を薄めて店舗とネットの再配分へ動いた。
背景
高感度セレクトショップとして店頭接客を軸に成長した会社は、2021年3月期にコロナで連結売上高が1217億円へ22.7%減り、当期損益は71億9700万円の赤字となって、1999年の上場以来はじめての最終赤字に沈んだ。
内容
2020年11月の中期経営計画で当時の全363店のうち1割程度の退店を見込み、選択と集中で2022年3月期に20店舗を純減。銀座店など旗艦級を含む店舗を閉じる一方、EC基盤を刷新して店舗とネットをつなぐOMOを強めた。
含意
2022年3月期に営業黒字へ回復し、その後プライム市場への移行と高付加価値への集中を経て、2026年3月期には連結売上高1646億円と過去最高を更新した。店舗数で成長を測る発想からの転換につながった。
筆者の見解

守りの整理が描き直した業態の輪郭

コロナ赤字を受けたこの整理は、単なる店じまいや守りの一手という言葉には収まらない。店頭での品ぞろえと接客で規模を追ってきた高感度セレクトの成長モデルそのものを、店舗とネットのあいだで組み替える転換であったとみることができる。上場以来初の72億円の赤字と20店舗の純減という重い数字を、社長就任直後の松崎氏が抱えたところに、この判断の緊張がうかがえる。

もっとも、黒字回復をもって改革が成ったと言い切れるのは、その後の歩みを知っているからにすぎない。2022年3月期の黒字は売上を1183億円へ縮めたうえでの16億円であり、拡大ではなく身を軽くした効き目が先に現れたものであった。店を減らして得た余力を高付加価値とデジタルへ振り向け、数年かけて過去最高の売上へ戻した順序をみれば、危機はこの会社に、店舗数で成長を測る発想からの離脱を促したといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

店頭接客で伸びた成長モデルとコロナ赤字

ユナイテッドアローズは、原宿を発信地とする高感度なセレクトショップとして、店頭での品ぞろえと接客を軸に規模を広げてきた。ビームス、シップスと並ぶ御三家の一角として多レーベル化と大型店の出店を重ね、2007年3月には店舗数が100店を超えた。連結売上高は2019年3月期に1589億円へ達し、店舗を主戦場とする事業モデルで成長の到達点に近づいていた[1][2]

その成長モデルを直撃したのが、2020年に広がった新型コロナウイルスであった。外出自粛と店舗休業が店頭売上を大きく削り、2020年に社長CEOへ就いた松崎善則氏は就任直後から危機対応を迫られた。2021年3月期の連結売上高は1217億円へ前期比22.7%減り、当期損益は71億9700万円の赤字となって、1999年の上場以来はじめての最終赤字に沈んだ。営業損益も66億円の赤字であった[3][4]

決断

不採算店の整理と「選択と集中」

松崎社長は、危機対応と同時に事業構造の作り直しへ動いた。2020年11月に打ち出した2021年3月期からの中期経営計画は、当時の全363店のうち1割程度の退店を見込み、不採算店の整理を改革の柱に据えた。あわせて、カジュアル業態の中心価格帯を1万円未満へ下げて客層の裾野を広げ、ネット販売の拡大を掲げた。店舗数の膨張と店頭依存を、危機を機に見直す構えであった[5][6]

整理は数字となって表れた。会社は「持続的成長と未来に向けた大改革」の一環として選択と集中を進め、2022年3月期は前期末比で20店舗の純減となる見通しを示した。下期にあたる2021年10月から2022年3月は2店の新規出店に対し17店の退店を計画し、第2四半期にはユナイテッドアローズ銀座店や青山ウィメンズストアなど9店を続けて閉じた。旗艦級を含む店舗の閉鎖に踏み込む整理であった[7][8]

ECの拡大とデジタルへの傾斜

改革のもう一つの軸は、店頭に偏った販売をネットへ振り向けることであった。会社は実店舗の縮小と歩調を合わせてEC基盤の刷新を進め、中期経営計画では低価格帯のカジュアルをネットで広げる新規事業も掲げた。店舗とネットを行き来する購買に応えるOMOを強め、店を減らす一方で顧客との接点をデジタルで太くする方向であった[9]

整理と刷新は、その後の高付加価値への集中を支える土台にもなった。会社は在庫配分の適正化と定価販売比率の向上で売上総利益率を高める余地があるとみて、商品管理の基幹システムを刷新した「UA3.0」でサプライチェーンのデジタル化を進めた。店舗数を絞った体制のもとで、値引きに頼らずに売る商いへと軸を移していった[10]

結果

黒字回復とその後の再拡大

改革の効きは翌期に現れた。2022年3月期の連結売上高は前期比2.7%減の1183億円と縮んだものの、営業損益は前期の66億円の赤字から16億円の黒字へ転じた。不採算店の整理と在庫の見直しが費用を軽くし、赤字からの脱却を一年で果たした。売上を伸ばしてではなく、身軽にして利益を取り戻す形での回復であった[11][12]

回復ののち、会社は成長路線へ舵を切り直した。2022年4月には東証の市場再編でプライム市場へ移り、2023年3月期には売上高1301億円・営業利益64億円まで戻した。高感度・高付加価値への集中を掲げて改装や商品政策を進め、2026年3月期には連結売上高1646億円と過去最高を更新した。コロナ下の赤字から数年で、規模の面でも危機前を上回る水準へ立て直した[13][14]

出典・参考

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