フジクラ AI・データセンターへ集中 需要の伸びる領域への資源の集約と、電線大手という自己規定の刷新
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2023年5月、岡田直樹社長CEOのもとで2025中期経営計画を公表した。情報インフラ・情報ストレージ・情報端末の3分野を掲げ、情報通信・エレクトロニクス・自動車の3事業部門を基軸とした事業ポートフォリオマネジメントで高収益企業を目指すとした。最終年度である2025年度の目標は連結売上高8,250億円・営業利益率10.3%・ROE16.5%である。
生成AIの普及で欧米のデータセンタ投資が拡大するなか、光ファイバと戦略商品SWR®/WTC®を軸とする光配線ソリューションへ資源を配分し、2026年3月期の連結売上高は1兆1,824億円、営業利益は1,887億円と、計画を大きく上回った。
- 背景
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古河電気工業・住友電気工業と並ぶ「電線御三家」の一角だが、銅相場に採算を左右される電線の薄利に長く苦しんだ。中国での光ファイバ需要を見込んだ設備投資が需給の崩れで回収できず、2020年3月期には光ファイバ製造設備7,993百万円を含む172億円の減損損失などで特別損失307億円を計上し、385億円の純損失に沈んだ。
2016年度からの2020中期経営計画を最終年度の2020年度に断念して基本戦略を「早期事業回復への集中」へ転換し、2020年9月に事業再生計画「100日プラン」を策定した。既存事業の聖域なき「選択と集中」を重点施策に据え、海外EPC事業から撤退し、エネルギー分野の海外生産拠点は2020年度をもって全拠点から実質的に引いた。
- 内容
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2022年2月にFPC事業とエネルギー事業の分社化の方針を決め、これをもって事業再生に目途がついたと判断し、持続的成長フェーズへ移った。2024年4月1日には売上高75,185百万円の導体事業をフジクラ・ダイヤケーブルへ簡易吸収分割で承継させ、本体を情報通信中心に組み替えた。
生成AIの普及・拡大を背景にデータセンタ向けの需要が伸び、2025年2月には佐倉事業所のSWR®新工場が竣工してSWR®の生産量が約30%増えた。2026年3月期の設備投資は総額403億円で、佐倉事業所では約450億円を投じる光ファイバ・SWR®次世代工場を建設中である。
- 含意
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情報通信事業部門の売上高は2024年3月期の2,972億円から2026年3月期に6,530億円へ、営業利益は392億円から1,527億円へ伸びた。2025年10月に米国商務省と交わした枠組み合意書のもとで、日米合わせて最大3,000億円を投じ、光ファイバとSWR®/WTC®の生産能力をいずれも現状の最大3倍に高めることを目指している。同部門は2026年3月期に連結売上高の55%、営業利益の81%を占める。
もっとも、見込んだ需要がすべて割り当てられる保証はない。光ファイバの供給がひっ迫するなかで、投じた資金を回収できるかどうかの見極めは難しい。
いつ何が起きたか 11件
筆者の見解
転んだ製品で立つということ
385億円の赤字を計上したのも光ファイバであり、5期連続の増益をもたらしたのも同じ光ファイバであった。製品は変わっていない。変わったのは売り先と、投資を決める仕組みである。2020年3月期に減損した光ファイバ製造設備7,993百万円は中国市場の伸びに賭けた設備で、各事業が個別に設備を積む体制のまま積み上がっていた。20中期を最終年度に断念し、重点施策を選択と集中とガバナンス強化の2点に絞ったあと、カンパニー制を畳んでCFOを置き、価格に厳しいクラウド大手へ営業を向けた。同じ製品で二度目の勝負に出るために、決め方のほうを作り替えたのだと思われる。
2026年3月期の連結で、情報通信事業部門は売上高の55%、営業利益の81%を稼いでおり、利益面の集中度は売上面を上回る。この事実は、判断を縛る力が逆方向にも働くことを示す。米国商務省との枠組みが想定する需要は全量が回ってくる保証がなく、光ファイバが品薄の局面では、先々どれだけ需要が続き、投じた資金をどこまで取り戻せるかの読みが難しい。投資時期の判断が慎重になるのはこのためで、その用心深さは2020年のつまずきから得たものだが、需給が引き締まった現状では好機を逃す要因にもなり得る。最大3,000億円の増産を同じ光ファイバで打とうとしているのが、2020年にその投資でつまずいた会社であるという点に、この判断の重さが表れている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
事業ポートフォリオ組み替えの条件
事業ポートフォリオ組み替えの条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 中止した中期経営計画 | 2020中期経営計画 | 2016年度からの5か年計画を、最終年度の2020年度に断念した |
| 中止時に掲げていた目標 | 売上高9,000億円・営業利益率7.0%以上 | ROE10.0%以上、D/Eレシオ40:60(0.66倍)も掲げていた |
| 減損損失(2020年3月期) | 172億円 | 主な内訳は光ファイバ製造設備7,993百万円、ファイバレーザ2,524百万円 |
| 事業再生計画 | 100日プラン | 2020年9月に策定。重点施策は既存事業の聖域なき「選択と集中」とガバナンス強化 |
| 撤退した事業 | 海外EPC事業 | エネルギー分野の海外生産拠点からも2020年度をもって実質的に撤退した |
| 分社化の方針決定 | 2022年2月 | FPC事業とエネルギー事業。これをもって事業再生に目途がついたと判断した |
| 新しい中期経営計画 | 2025中期経営計画 | 2023年度から3年間の計画で、2023年5月に公表した |
| 掲げた3つの分野 | 情報インフラ・情報ストレージ・情報端末 | 情報通信・エレクトロニクス・自動車の3事業部門を基軸に据えた |
| 最終年度(2025年度)の目標 | 売上高8,250億円・営業利益率10.3% | ROE16.5%、ROIC12.8%、自己資本比率51.7%。株主還元は配当性向30%を基本とした |
| 導体事業の会社分割 | 2024年4月1日 | 2023年11月22日と2024年2月21日の取締役会で決議した簡易吸収分割 |
| 分割した事業の規模 | 売上高75,185百万円 | 2024年3月期。電気銅等の材料調達、銅荒引線および銅線の販売 |
| 承継会社 | フジクラ・ダイヤケーブル | 連結子会社。銅荒引線を自己調達できる体制として事業運営の効率化を図った |
| SWR新工場の竣工 | 2025年2月 | 佐倉事業所。これによりSWRの生産量は約30%増加した |
| 光ファイバ・SWR次世代工場 | 約450億円 | 佐倉事業所で建設中 |
| 日米の生産能力増強 | 最大3,000億円 | 2025年10月の米国商務省との枠組み合意書のもと、生産能力をそれぞれ最大3倍へ |
| 設備投資額(2026年3月期) | 403億円 | 成長分野を中心にメリハリをつけた資源投入を実行するとの考え方による |
出所:フジクラ 有価証券報告書 第172期(2020年3月期)【対処すべき課題】【減損損失】・第173期(2021年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】・第174期(2022年3月期)【対処すべき課題】・第175期(2023年3月期)【対処すべき課題】・第176期(2024年3月期)【重要な後発事象】・第178期(2026年3月期)【設備投資等の概要】
連結業績の推移
フジクラ:連結業績の推移
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | 710,778 | 27,679 | 1,453 | |
| 2020年3月期 | 672,314 | 3,346 | △38,510 | 減損損失172億円などで特別損失307億円を計上し、385億円の純損失に沈んだ |
| 2021年3月期 | 643,736 | 24,422 | △5,369 | 2020年9月に事業再生計画「100日プラン」を策定。海外EPC事業から撤退した |
| 2022年3月期 | 670,350 | 38,288 | 39,101 | 2022年2月にFPC事業とエネルギー事業の分社化を決め、持続的成長フェーズへ |
| 2023年3月期 | 806,453 | 70,163 | 40,891 | |
| 2024年3月期 | 799,760 | 69,483 | 51,011 | 2023年5月に2025中期経営計画を公表。2024年4月に導体事業を分社化した |
| 2025年3月期 | 979,375 | 135,519 | 91,123 | |
| 2026年3月期 | 1,182,358 | 188,707 | 157,163 | 情報通信事業部門が連結売上高の55%、営業利益の81%を占めた |
出所:フジクラ 有価証券報告書 第171期〜第178期(連結損益計算書、経営成績の分析)
情報通信事業部門の売上高と営業利益
フジクラ:情報通信事業部門の売上高と営業利益
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 297,229 | 39,191 | 情報通信事業部門を独立した報告セグメントとして開示した最初の期 |
| 2025年3月期 | 451,262 | 92,167 | 生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向けの需要が伸長した |
| 2026年3月期 | 652,977 | 152,729 |
出所:フジクラ 有価証券報告書 第176期〜第178期(セグメント情報、経営成績の分析)
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参考文献
- フジクラ 2024年度 決算説明会 質疑応答(2025年5月13日)
- フジクラ 2025年度第1四半期決算 質疑応答(2025年8月7日)
- フジクラ 有価証券報告書「第172期(2020年3月期)【対処すべき課題】【減損損失】」
- フジクラ 有価証券報告書「第173期(2021年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
- フジクラ 有価証券報告書「第174期(2022年3月期)【対処すべき課題】」
- フジクラ 有価証券報告書「第175期(2023年3月期)【対処すべき課題】」
- フジクラ 有価証券報告書「第176期(2024年3月期)【重要な後発事象】」
- フジクラ 有価証券報告書「第178期(2026年3月期)【設備投資等の概要】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
- フジクラ 決算説明会 質疑応答「2025年度第2四半期決算 質疑応答(2025年11月7日)」
- フジクラ 決算説明会 質疑応答「2025年度第3四半期決算 質疑応答(2026年2月9日)」