この一連の動きを単なる多角化と呼ぶと、芯を取り逃す。丸亀製麺は780店規模で既存店が食い合い、立て直しには社外の森岡毅氏の手を借りるところまで追い込まれていた。単一業態の完成度で駆け上がった会社が、その完成度だけでは次の成長を描けないと悟り、自前で新業態を育てる時間を買収で買いにいった点にこそ、この転換の中心があるとみられる。持株会社体制への移行は、丸亀製麺の運営と切り離して外から事業を取り込むための足場だったといえる。
もっとも、買って統合することは、統合したその年に果実を約束しない。買った業態のすべてが安定したわけではなく、2019年3月期には減損で営業利益が76億円から23億円へ沈み、粟田貴也社長自身が各企業を伸ばす段階だと言い直している。時間をかけて海外事業が丸亀製麺に迫る規模まで育ったのは、買収の巧みさよりも、その後の育成に資源と年月を割いた結果と推察される。次の収益源を買うと決めることと、買った収益源を育て切ることは別の仕事であり、マルチブランド化の質はむしろ後者に表れるといえる。