トリドールホールディングス英Fulham Shoreの子会社化による欧州レストラン事業の取得

自前で広げるか、現地の繁盛業態ごと買うか——欧州という新地域へどう踏み込んだか

時期 2023年4月
意思決定者(推定) 粟田貴也 社長
論点 海外成長の担い手と欧州への進出方法
概要
2023年4月5日、トリドールホールディングスは、英国でピザ「Franco Manca」とギリシャ料理「The Real Greek」を展開するFulham Shore Plcを、欧州の外食ファンドCapdesiaと共同で約151億3000万円で買収すると発表した。同年7月に全株式の取得を完了し、二つのブランドをグループに取り込んで欧州での事業基盤を得た。
背景
コロナ後の回復を経て成長の主軸を海外へ移していたトリドールは、丸亀製麺の海外出店に加え、現地で繁盛する業態をM&Aで取り込むマルチブランド化を進めていた。欧州ではグループの持つブランドが薄く、2022年の中期経営計画でM&Aに1000億円の枠を設け、欧州とアジアを重点地域に据えていた。
内容
買付総額は約151.3億円(約9300万ポンド)。ロンドン・ブリュッセルを拠点に欧州の外食へ投資するCapdesiaを現地バディとし、共同で全株式を取得した。対象のFulham Shoreはロンドンに上場し、Franco Mancaを72店、The Real Greekを27店運営していた(2023年6月末時点)。
含意
海外事業は2025年3月期に売上1047億円まで伸びて丸亀製麺に迫ったが、英国事業は市場の悪化に苦しんだ。2026年3月期に114億円の減損を計上し、The Real Greekは倒産手続きへ、Franco Mancaは不採算店の閉鎖に入り、英国事業の黒字化は先へずれ込んだ。
筆者の見解

欧州という新地域を、買って手に入れるということ

この買収を欧州進出の足がかりという言葉だけで捉えると、芯を取り逃す。トリドールが手に入れたのは、Franco MancaとThe Real Greekという既に各地で営業する二つの業態と、Capdesiaという現地に通じたバディであった。自前で店を一から立ち上げる時間とリスクを、繁盛している会社を丸ごと取り込むことで縮めようとした点にこそ、この判断の中心があるとみられる。丸亀製麺のMarugame Udonが英国で得ていた手応えが、欧州でも同じ型が通じるという見込みを支えていた。

もっとも、買収の判断が当時の材料に照らして理にかなっていたとしても、その先の英国市場までは織り込めなかった。子会社化から三年のうちに、エネルギーと食品のインフレ、最低賃金の上昇が現地の外食を直撃した。114億円の減損とギリシャ料理業態の倒産手続きが、その誤算を映した。買って束ねる戦略は、束ねた先の市場環境という制御しがたい変数に晒される。次の柱を買う判断の巧拙は、買った時点では定まらず、その後に訪れる市場の側にも半ば委ねられているとみることができる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

海外を主軸に据えた成長と、ローカルバディという型

コロナ禍の赤字から業績を回復させたトリドールホールディングスは、成長の主軸を海外へ移していた。主力の丸亀製麺を各国へ出店する一方、現地で繁盛している外食業態をM&Aで取り込み、複数のブランドを束ねる形で店舗網を広げた。うどん業態のMarugame Udonは英国でも支持を得ていたが、欧州でグループが抱えるブランドはなお限られ、面として広げるには時間がかかる状態にあった[1]

海外での拡大を、トリドールは自前の出店だけに頼らなかった。英国や米国で外食に特化した投資ファンドと組み、現地の事情に通じたバディを介して、既に集客力のある業態を買って取り込む型を敷いた。2022年に公表した中期経営計画ではM&Aの枠として1000億円規模を用意し、欧州とアジアを重点地域に据えた。異国での立ち上げに伴う不確実性を、現地の繁盛業態の取得で下げる狙いがあった[2]

決断

Capdesiaと組んだ英Fulham Shoreの買収

2023年4月5日、トリドールは英国でレストラン事業を営むFulham Shore Plcの買収を発表した。買付総額は約151億3000万円(約9300万ポンド)で、欧州の外食に特化した投資ファンドのCapdesiaと共同で全株式を取得する枠組みをとった。同社はロンドンに上場し、ピザの「Franco Manca」を72店、ギリシャ料理の「The Real Greek」を27店運営していた(2023年6月末時点)。株式の取得は同年7月に完了した[3][4]

この買収を、粟田貴也社長は欧州における重要な足がかりと位置づけた。Capdesiaはロンドンとブリュッセルを拠点に英国・欧州の外食への成長投資を手がけており、現地の市場と人脈に通じたバディとして事業運営に加わった。トリドール単独で欧州にブランドを一から育てるのではなく、既に二つの業態を各地に展開する会社を丸ごと取り込むことで、欧州での規模と時間を一度に手に入れる形を選んだ[5]

結果

欧州網の獲得と、英国市場の逆風

買収の直後、トリドールの海外事業は数字のうえで伸びた。2025年3月期には海外事業のセグメント売上収益が1047億円まで拡大し、国内主力の丸亀製麺の1281億円に迫る規模へ育った。ただ、取り込んだ英国事業は思うように伸びなかった。買収時の想定を超えて英国の景気が悪化し、エネルギーや食品の価格上昇に最低賃金の引き上げが重なって、店舗の運営コストが膨らんだためである[6][7]

逆風は数字に表れた。2026年3月期にトリドールは英国事業などで114億円の減損損失を計上した。同年4月にFulham Shore傘下のFranco Mancaが再建手続きに入り、5月1日にはギリシャ料理を運営するThe Real Greek Food Companyの倒産手続き開始を決めた。この会社は2025年3月期に約6億円の最終赤字を抱えていた。トリドールはギリシャ料理からの撤退と不採算のピザ店の閉鎖を進め、英国事業を2年後をめどに黒字へ戻す方針を示した[8][9]

出典・参考

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