TOPPAN(凸版印刷) 米Sonocoの事業取得 軟包装・熱成形容器事業に1,826百万米ドルを投じた北米軟包装の面化

更新:

時期 2024年12月
当時の社長 麿秀晴
論点 海外軟包装事業の規模拡大と成長事業への転換
何をなぜ決めたか
概要

TOPPANは2024年12月18日(米国時間)、米SONOCO社の軟包装事業および熱成形容器事業(TFP事業)を取得する契約を締結し、2025年4月1日付で取得を完了した。取得原価は価格調整を反映して1,826百万米ドル、計上したのれんは770億円にのぼる。従業員約4,500名・22の製造工場を擁する事業を取り込み、2008年のSNP、2016年の米ジョージア工場、2021年のInterFlexと10年以上かけて点で押さえてきた北米の供給網を、一挙に面へまとめる買収であった。

背景

リーマンショック後の長い踊り場で紙媒体の縮小が続くなか、凸版印刷は軟包装を次の主力に据え、群馬のマザー工場を核に海外へ拠点を広げてきた。2022年に発足した麿秀晴社長の体制は、2023年度を初年度とする中期経営計画で「Digital & Sustainable Transformation」を掲げ、DX・SX海外生活系・新事業からなる成長事業で営業利益の過半を稼ぐ構造への転換を進めた。軟包装はそのSX・海外生活系の中核にあたり、点で確保した拠点を大型買収で面へ広げる二段構えの投資順序が描かれていた。

内容

取得したのは、北米・南米に強い顧客基盤と製造拠点を持つSONOCO社の軟包装・熱成形容器事業である。米国・ブラジル・カナダ・インドなど27社の株式と事業が移り、議決権比率はインドのデザイン制作会社の91.0%を除きいずれも100.0%、法的形式は現金を対価とする株式の取得および事業の譲り受けであった。受け入れた資産は2,515億円、引き受けた負債は554億円、のれんは770億円、顧客関連・技術関連の無形資産は977億円にのぼる。従業員約4,500名、22の製造工場、10カ国のデザイン拠点、2023年の収益約13億ドル、700件を超える特許を伴う規模であった。

含意

買収の効果は2026年3月期の数字にあらわれた。生活・産業事業分野の売上高は5,399億円から7,152億円へ1,753億円増え、同分野ののれん残高は67億円から840億円へ跳ね上がった。地域別売上では北米が1,426億円から2,474億円へ広がり、海外売上比率は36.6%から40.5%へ上がっている。一方でセグメント利益は333億円から331億円へわずかに減り、のれんと無形資産の償却が先に重くのしかかる姿となった。1965年のカナダMoore社との合弁で本格化した海外展開は、60年を経て北米で最大級の軟包装事業を持つに至ったが、それを利益へ変える作業はこれからである。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

時間をかけて跳ぶ投資の型

この買収の性格は、単発の大型M&Aというより、10年以上にわたる投資順序の帰結にあらわれている。2008年のアジア、2016年の北米と、点で拠点を開設し、供給網を静かに広げたうえで、頂点でSonocoの事業を面ごと取り込む——時間をかけて条件を整えてから一挙に規模を跳ばせる運び方に、この会社の投資の型がうかがえる。海外の相手と組んで成長市場を押さえるやり方は、1900年の創業時に欧州の製版技術を輸入した頃から変わっていない。

残る問いは、面へ広げた規模を利益へ変えられるかである。連結取り込みが始まった2026年3月期は、決算日の違いから9か月分の計上にとどまったが、それでも生活・産業事業分野の売上高は1,753億円増えた。半面、セグメント利益はほぼ横ばいで、770億円ののれんは14年と15年に分けて償却されていく。期首から結合していたと仮定すれば売上高はさらに495億円、営業利益は16億円増えていたと算定されており、償却の重みを上回る収益をこの事業が生むかどうかは、これから先の期に持ち越された。印刷会社として生き残るのではなく、印刷の枠を外した事業ポートフォリオで生き残る——麿体制が描いたその路線を、社名から"印刷"を外したTOPPANが海外の軟包装でどこまで体現できるか、その答えはこれから問われることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得事業 SONOCO社の軟包装事業及び熱成形容器事業 Sonoco Flexible Packaging Co., Inc.など27社の株式及び事業
事業の内容 蓋材・パウチング等の軟包装と、トレー・食品容器等の熱成形容器 インドで営むグラフィックデザインの制作事業も含む
契約の締結日 2024年12月18日(米国時間) 取締役会は複数回の審議を重ね、様々な観点から事業検証を行ったと記す
企業結合日 2025年4月1日 連結損益計算書に含まれる業績は2025年4月1日から12月31日までの9か月
企業結合の法的形式 現金を対価とする株式の取得及び事業の譲り受け 取得したのはTOPPAN傘下の軟包装・熱成形容器2つの中間持株会社
取得した議決権比率 100.0% インドのデザイン制作会社のみ91.0%
取得原価 1,826百万米ドル 価格調整を反映した確定額。第179期時点の暫定額は1,822百万米ドル
支払資金の調達 銀行借入及び自己資金
取得関連費用 6,211百万円 アドバイザリー費用等。第179期時点では1,512百万円
受け入れた資産 251,570百万円 軟包装156,915百万円と熱成形容器94,655百万円の合計
引き受けた負債 55,413百万円 軟包装34,526百万円と熱成形容器20,887百万円の合計
のれん 77,041百万円 軟包装47,363百万円、熱成形容器29,677百万円。第180期末に確定
のれんの償却期間 14年と15年の均等償却 軟包装が14年、熱成形容器が15年。発生原因は将来の超過収益力
のれん以外の無形固定資産 97,784百万円 顧客関連資産65,788百万円が20年、技術関連資産31,996百万円が10年
企業結合を行った理由 大きな市場規模を有する米州での事業拡大 サステナブルパッケージのグローバル供給体制を構築するなかで捉えた機会
通期換算した業績への影響 売上高49,520百万円 期首に完了したと仮定した増加分の概算。営業利益は1,633百万円

出所:TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第179期(2025年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第180期(2026年3月期)【企業結合等関係】

のれんと無形固定資産の推移

TOPPAN(凸版印刷):のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれんのれん以外の無形固定資産 備考
2021年3月期 11,37336,808
2022年3月期 27,47856,022 2021年7月に米国InterFlexを買収し北米軟包装に参入した期
2023年3月期 22,93162,418
2024年3月期 23,94267,154
2025年3月期 22,36364,898 SONOCO社との契約は2024年12月。取得完了は期末後のため残高は動いていない
2026年3月期 103,844177,636 TFP事業ののれん77,041百万円と無形資産97,784百万円が加わった
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第175期〜第180期(連結貸借対照表)

生活・産業事業分野の推移

TOPPAN(凸版印刷):生活・産業事業分野の推移

(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2020年3月期 411,72628,955
2021年3月期 418,13427,687
2022年3月期 436,10528,524
2023年3月期 512,67123,507
2024年3月期 529,44327,424 圧縮記帳の会計方針変更を遡及適用した後の利益。変更前は27,421
2025年3月期 539,98233,329
2026年3月期 715,22733,053 TFP事業の取り込みは9か月分。従業員は14,339名から19,336名に増えた
生活・産業事業分野の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第174期〜第180期(セグメント情報。売上高は外部顧客への売上高)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第180期(2026年3月期)
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第179期(2025年3月期)
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書 第174期〜第178期
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書「第180期(2026年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報】【関連情報】」
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書「第179期(2025年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • TOPPANホールディングス 有価証券報告書「第174期〜第180期(連結貸借対照表、セグメント情報)」
  • TOPPANホールディングス ニュースリリース「米国大手パッケージ企業SONOCO社の軟包装・熱成形容器事業を買収へ」
  • TOPPANホールディングス ニュースリリース「SONOCO社の軟包装・熱成形容器事業買収を完了」

免責事項およびポリシー