パーク24豪SECURE PARKING 5カ国事業と英NCPの連続取得による海外駐車場事業の確立
世界最大の件数を1年で買えるか——227百万豪ドルと158百万ポンド、そして政投銀が持った49%
- 概要
- 2017年1月18日にオーストラリア・ニュージーランド・英国・シンガポール・マレーシアで駐車場を営むSecure Parkingの事業会社群を227百万豪ドル(195億28百万円)で、同年8月3日に英国最大手NATIONAL CAR PARKS LIMITED(NCP)の持株会社を158百万ポンド(234億89百万円)で取得し、7カ月のうちに海外駐車場事業を組み上げた経営判断。
- 背景
- 国内では時間貸駐車場に加えてカーシェアリングが2014年10月期に部門黒字へ転じ、2016年10月期の連結売上高は1,944億円・営業利益215億円となっていた。一方で海外は2006年に設けた韓国の合弁と台湾の拠点にとどまり、2016年12月にオーストラリア・シンガポール・マレーシアへ現地法人を置いたばかりであった。
- 内容
- Secure Parkingは5カ国13社の議決権80%を取得し、のれん174億88百万円を20年で償却する。NCPは日本政策投資銀行と共同で持株会社の全株式を取得し、パーク24が51%、同行が49%を持った。NCPののれんは422億52百万円、引き受けた負債は387億20百万円であった。
- 含意
- 2017年10月期の連結売上高は2,329億56百万円と19.8%増えたが、営業利益は205億5百万円と4.4%減った。2020年10月期にはのれん193億78百万円を含む319億38百万円の減損損失を計上し、2025年12月には同行が持つNCPの49%を292億円で買い取っている。
件数を買い、稼ぎ方は買えなかった
1年で世界最大の駐車場網を手に入れた話として語られやすい。だが二件の中身を並べると、買ったものは資産ではなく、20年で償却する将来の収益力の見積りであった。NCPでは取得原価234億89百万円に対しのれんが422億52百万円立ち、受け入れた負債は387億20百万円に上る。1991年に上野で5〜6台から始めた会社が、既に出来上がった大型駐車場の束を、その先の稼ぎの約束ごと引き受けたとみることができる。
もっとも、この買収を失敗と呼ぶのは早い。2025年10月期の駐車場事業海外は売上高843億73百万円で、連結の2割を稼いでいる。ただしセグメントは13億98百万円の損失で、のれんの償却額14億23百万円を差し引く前でようやく釣り合う水準にとどまる。有価証券報告書がいまも課題に挙げるのは、大型かつ長期契約に偏った構成を「小型・分散・ドミナント化」へ組み替えることであり、国内で作った稼ぎ方を買った先へ移す作業は8年を経ても続いている。件数は買えても、稼ぎ方は買えなかったといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
国内で二本の柱が揃ったあと
2009年にマツダレンタカーを買って始めたカーシェアリングは、車両台数が1万台を超えたあたりで法人の利用に火がつき、2014年10月期に部門営業利益が黒字へ転じた。2016年10月期の部門営業利益は28億5,000万円に達している。連結の売上高は同期に1,944億円、営業利益は215億円で、国内には時間貸駐車場とカーシェアリングの二本が揃った[1][2]。
一方の海外は細かった。2006年3月に韓国ソウル市で合弁会社GS Park24を設け、同年4月に台湾台北市へ支店を置いた後、10年にわたり2カ国のままであった。2016年12月、パーク24はオーストラリア・シンガポール・マレーシアにそれぞれ現地法人を設け、買収を受け止める入れ物を先に用意している[3]。
買える相手が二つあった
Secure Parkingは世界11カ国で約1,500件・約120万台の駐車場を営む豪州系の事業者であった。パーク24が対象としたのは、そのうちオーストラリア・ニュージーランド・英国・シンガポール・マレーシアの5カ国で駐車場を営む13社である。既に事業のある地域では拡大の速度を上げ、無い地域では国そのものを増やす狙いが掲げられた[4]。
もう一つのNCPは1931年創業の英国最大手で、498件・148,056台を運営し、英国内のシェアは30%を占めていた。売上高は317億円、営業利益は10億1,000万円、純資産は315億円である。台数の規模に対して利益が薄い会社を、パーク24は空港や駅など交通の結節点を押さえた事業基盤とみていた[5][6]。
決断
227百万豪ドルで5カ国を買う
2016年12月7日、パーク24はSecure Parkingの5カ国13社の株式80%を取得すると公表した。投資額は約180億円で、銀行借入により調達する計画であった。企業結合日は2017年1月18日、取得原価は現金227百万豪ドル(195億28百万円)、アドバイザリー費用等が6億63百万円である。生じたのれん174億88百万円は20年間の均等償却とした[7][8]。
有価証券報告書は企業結合の理由を、地域や規模の拡大にとどまらず、世界各地で「快適なクルマ社会の実現」に向けた取り組みを実行することにあると記している。取得の結果、パーク24グループの駐車場は18,559件・1,002,588台となり、件数で世界最大、台数で100万台を超えた。日本の駐車場会社が、運営件数で世界の首位に立った[9][10]。
51%と49%に分けた英国
2017年7月14日、パーク24はNCPの純粋持株会社MEIF Ⅱ CP Holdings 2 Limitedの全株式を、日本政策投資銀行と共同で取得すると公表した。持分はパーク24が51%、同行が49%である。企業結合日は同年8月3日、パーク24の取得原価は現金158百万ポンド(234億89百万円)、アドバイザリー費用等が6億32百万円であった。総額は約3億1,200万ポンドに及んだ[11][12]。
この案件で計上したのれんは422億52百万円で、取得原価234億89百万円を上回った。企業結合日に受け入れた負債は387億20百万円、うち固定負債が252億18百万円である。買った資産の帳簿価額ではなく、20年かけて償却する将来の収益力の見積りが、支払いの中身の大半を占めた。取得後のパーク24グループは8カ国・1,195,769台となった[13][14]。
結果
売上は倍に、利益は増えず
2017年10月期の連結売上高は2,329億56百万円と19.8%増えた一方、営業利益は205億5百万円と4.4%減った。駐車場事業海外の売上高は236億71百万円で前期の12倍を超えたが、営業利益はのれんの償却などにより1億15百万円にとどまる。連結の従業員数は2,448名から4,577名へ、1年で倍近くになった[15][16]。
翌2018年10月期、駐車場事業海外の売上高は682億90百万円と188.5%増えたが、のれんの償却などで8億79百万円の営業損失に転じた。同年6月、パーク24はSecure Parking各社の残る20%を追加で取得して完全子会社とし、全世界の総運営件数は21,438件・1,371,859台となっている。件数と台数は増え、利益はまだ立たなかった[17][18]。
2020年10月期の減損
2020年10月期、パーク24は319億38百万円の減損損失を計上した。うちのれんが193億78百万円で、内訳は英国のMEIF Ⅱ CP Holdings 2 Limitedが167億4百万円、豪州とニュージーランドのSecure Parking Pty Ltdが26億73百万円である。駐車場事業海外のセグメント損失は144億6百万円、連結の当期純損失は466億円となった[19][20]。
買った先の性格も、国内で磨いた型と噛み合わなかった。パーク24は駐車場事業海外の課題を、大型かつ長期契約の駐車場に偏った構成の最適化にあるとし、国内の「小型・分散・ドミナント化」をもとに各国版のタイムズパーキングを開発する方針を掲げている。2025年10月期の駐車場事業海外は売上高843億73百万円、セグメント損失13億98百万円で、のれんの償却額は14億23百万円であった[21][22]。
8年後に買い戻した49%
2025年11月4日、日本政策投資銀行は株主間契約に基づき、保有するMEIF Ⅱ CP Holdings 2 Limited株式をパーク24へ売却する権利を行使した。グループで駐車場事業海外を担うタイムズ24が49%を引き取り、2025年12月10日にNCPは完全子会社となっている。取得額は292億円で、2017年に51%へ払った234億89百万円を上回った[23][24]。
海外事業を置く場所も変えた。パーク24は2025年9月16日の取締役会で、駐車場事業海外を完全子会社のタイムズ24へ承継させる吸収分割を決め、11月1日に効力を生じさせている。財務は2020年10月期の損失から戻り、2025年10月期末の株主資本比率は29.4%となった。8年前に買った二つの事業は、いまタイムズ24の下に並んでいる[25][26]。
- パーク24「オセアニア・アジアを中心に駐車場事業を展開する『Secure Parking』をグループ化」(2016年12月7日)
- パーク24「英国最大の駐車場事業会社National Car Parksをグループ化」(2017年7月14日)
- M&A Online(2017年7月14日)「パーク24<4666>、英国の駐車場運営会社を買収」
- 日本経済新聞(2025年11月4日)「パーク24、英駐車場大手を完全子会社化 政投銀持ち分を取得」
- 週刊東洋経済 2017年6月17日号「【第1特集 勝ち抜く企業】 ニッチな市場で稼ぐ 駐車場 カーシェアリングが大成功 独走するパーク24」
- 週刊東洋経済 2018年11月10日号「【産業リポート 駐車場にシェアリングの波】 駐車場にシェアリングの波 通信大手も相次ぎ進出」
- パーク24 有価証券報告書 第33期(2017年10月期)
- パーク24 有価証券報告書 第34期(2018年10月期)
- パーク24 有価証券報告書 第36期(2020年10月期)
- パーク24 有価証券報告書 第41期(2025年10月期)