三菱ロジスネクストユニキャリアホールディングスの取得と三菱ロジスネクストへの改称
国内フォークリフト再編の総仕上げとして、三菱重工グループは何を束ね直したか
- 概要
- 2015年7月に発表し2016年3月に完了した、三菱重工グループによるユニキャリアホールディングス㈱の取得。三菱重工業の統括会社が65%、ニチユ三菱フォークリフトが35%の株式を約1100億円超で引き受け、2017年1月に完全子会社化したうえで、同年10月に社名を三菱ロジスネクストへ変更した。
- 背景
- 2013年の三菱重工業からの事業承継で世界3位群へ浮上したニチユ三菱フォークリフトは、地盤とする国内需要が頭打ちで、海外の顧客基盤と販売網の獲得が課題として残っていた。二ノ宮秀明社長は単独での海外拡大は難しいと語っていた。
- 内容
- 産業革新機構・日立建機・日産自動車が保有するユニキャリアホールディングスの全株式を譲り受け、2017年1月に完全子会社とした。ニチユ・三菱・ユニキャリアという国内の主要ブランドを一社に集約し、社名を三菱ロジスネクストへ改めた。
- 含意
- 国内フォークリフト再編の総仕上げにあたる買収で世界シェア3位群を固めた一方、複数ブランドと欧米の海外拠点を一体運営へまとめ直す作業が、新社名の下で本格化した。
規模を利益へ変える作業の始まり
この買収を、単なる規模拡大の一手と読むと像を結ばない。ニチユ三菱フォークリフトは2013年の事業承継ですでに世界3位群へ届いていたが、二ノ宮秀明社長が繰り返し語ったように、地盤の国内需要は頭打ちで、海外の顧客基盤なしに次の成長は描けなかった。産業革新機構・日立建機・日産という別の系譜が育てたユニキャリアを1100億円超で取り込んだ判断の芯は、規模そのものより、単独では届かない海外販売網と複数ブランドを一度に手に入れることにあったとみられる。
もっとも、束ねることと束ね直すことは同じではない。国内で競い合ってきたニチユ・三菱・ユニキャリアの三つの系譜を一社に集めた結果、同社はブランドの併存と海外拠点の重複という重い課題を抱えた。改称後に欧米の統括会社を相次いで整え、国内販売会社を再編し続けたのは、買収で膨らんだ事業をひとつの企業として動かすまでに時間を要したことの裏返しといえる。1100億円で買った規模を利益へ変える作業は、三菱ロジスネクストという新しい名の下で始まったばかりであった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
世界3位群への浮上と残された海外課題
日本輸送機(ニチユ)は2013年4月に三菱重工業からフォークリフト事業を承継し、ニチユ三菱フォークリフトへ改称した。屋内向けバッテリー式に強い同社と、海外・エンジン車を主力とする三菱重工業の組み合わせは、当事者から「パーフェクトな補完関係」と評された。事業承継によって連結売上高は2000億円規模、年間販売台数は6万台強となり、豊田自動織機や独キオンには水をあけられながらも、世界3位群の一角へ浮上した[1]。
規模の拡大とは裏腹に、ニチユが長く抱えてきた海外開拓の課題は残った。地盤とする国内需要は頭打ちで、新興国を軸に拡大するフォークリフト市場で存在感を高めるには、海外の顧客基盤と販売網が欠かせなかった。二ノ宮秀明社長は当時、将来は海外をどこまで伸ばせるかにかかっているとしながら、顧客基盤を考えると単独では難しく、三菱重工業と組んで海外販売を早期に広げたいと語っていた[2]。
再編対象となったユニキャリア
買収の相手となったユニキャリアホールディングスは、フォークリフト業界の再編のなかで生まれた会社であった。2012年8月、官民ファンドの産業革新機構の協力のもとで、日立建機系のTCMと日産自動車系の日産フォークリフトが事業を統合して発足した。2015年の買収時点で株式は産業革新機構が53.5%、日立建機が26.7%、日産自動車が20.0%を保有し、国内の主要な系譜がひとつに束ねられる前段にあった[3][4]。
決断
1100億円超での全株式取得
2015年7月31日、三菱重工業とニチユ三菱フォークリフトは、産業革新機構・日立建機・日産自動車からユニキャリアホールディングスの全株式を譲り受けると発表した。取得価格は約1100億円超で、株式の65%を三菱重工業の統括会社が、35%をニチユ三菱フォークリフトが引き受ける建て付けであった。単独では難しかった海外拡大を一度に進める再編であり、世界シェアで3位群を固める狙いがそこにあった[5]。
取得は段階を踏んで進んだ。2016年3月、三菱重工業の100%子会社である三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングスがニチユ三菱フォークリフトの親会社となり、ユニキャリアホールディングスの株式35%を取得して買収を完了した。翌2017年1月には、持分法適用関連会社だったユニキャリアの株式を親会社から追加取得して100%子会社とし、2013年の事業承継から続いた資本集約を仕上げた[6][7]。
結果
三菱ロジスネクストへの改称とグローバル体制
2017年10月、ニチユ三菱フォークリフトはユニキャリアの国内販売以外の事業を吸収分割で承継し、社名を三菱ロジスネクストへ変更した。ニチユ・三菱・ユニキャリアという国内の主要ブランドを一社に束ね、物流の次を担うという含意を新商号に込めた。統合の効果は売上高に表れ、連結売上高は2017年3月期の2710億円から、ユニキャリアを取り込んだ2018年3月期には4331億円へ拡大した[8][9]。
改称後は、拡大したブランドと海外拠点を一体で運営する体制づくりが進んだ。2018年4月に欧州統括会社の三菱ロジスネクストヨーロッパ社を再編し、米国統括会社の三菱ロジスネクストアメリカス社を設立して、欧米の販売・生産子会社を傘下に置いた。2019年以降は米州で現地企業を相次いで子会社化し、2020年4月には三菱重工業が中間持株会社を吸収合併して直接の親会社となった[10][11]。
- 週刊東洋経済 2012年12月23日号「三菱重工が自賛する もう一つの事業統合」
- レスポンス 2015年8月3日「三菱重工とニチユ三菱フォークリフト、ユニキャリアを1100億円で買収へ」
- 日本経済新聞(2016年3月31日)「三菱重工など、ユニキャリアHDの買収完了」
- 三菱ロジスネクスト 有価証券報告書【沿革】
- 三菱ロジスネクスト 有価証券報告書(連結・2016年3月期/2017年3月期/2018年3月期)